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ゴミスキルだと捨てられた少女たち、実は最強の生活能力スキルだったので気楽なスローライフ冒険旅を満喫する  作者: 鳥助


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46.ベリアットの特殊個体

 今日も魔物討伐をしてきて、冒険者ギルドに帰ってきた。たくさん稼げてみんなで喜んでいた時――。


「大変だ! ベリアットの特殊個体が現れた!」


 大慌てで冒険者が中に入ってきた。その肩には傷だらけの冒険者が担がれている。すぐにギルドの職員が介抱に当たる。


 すると、冒険者は落ち着いたのか、ギルド職員に話し始めた。


「べリアットの特殊個体はどんな能力でしたか?」


「土の魔法を撃って来たんだ。それだけじゃない。雄たけびで体が動かなくなったり、突進で岩に大穴が開いた」


「それは、厄介ですね……」


 どうやら、かなり手ごわい特殊個体のようだ。だけど、私たちはべリアットを知らない。


「ねぇ、お姉さん。べリアットって何?」


「牛の形をした魔物よ。いつもは角で突進して攻撃を仕掛けてくるんだけよ。それが、凄い能力を持って現れたみたい。いい? 特殊個体が討伐されるまで、冒険に出ちゃダメよ」


 お姉さんにそう言われたが……隣のサリサがニヤリと笑っているのを私は気づいた。


 ◇


「よし! 特殊個体を倒しに行くのじゃ!」


 みんなで今日は休もうと決まった後、サリサが私たちに言ってきた。まぁ、こうなるとは思っていた。


「でも、危険じゃないですか?」


「何を言っておる! わらわはレベル100越えじゃぞ! そう簡単には負けないのじゃ!」


「まぁ、サリサが強いのは分かるけれど……心配だなぁ」


「何を言っておる! 特殊個体を食べれば、強いスキルが手に入ったじゃろう? ここで、倒して強いスキルを手に入れられれば、わらわたちもあいつらも強くなる! いいことづくめじゃ!」


 腕組をして、鼻息荒く言うサリサ。確かに、今後の事を考えると、特殊個体の能力は魅力的だ。強くなったら、今後の生活の安全も確保出来る。


「サリサが大丈夫なら、戦おうか。もし、無理なら引き返すこと」


「そうこなくてはな! どれ、わらわの活躍をしかと見届けよ!」


 ◇


 特殊個体が見つかったと言われる、草原の岩場があるところに来た。本来なら歩いていれば魔物に出会うのだが、その姿が一つもない。


「やけに静かだね。それに空気が重い」


「これは、絶対にいますよ。サリサ、本当に大丈夫ですか?」


「ふふん。わらわが負けるはずがなかろう。二人は安心して離れたところから見るといい」


 サリサの自信満々な様子を見ていると、不安も薄れていく。こういう時のサリサはとても頼りになる。やっぱり、一人でも強い人がいるだけで安心感が違う。


 すると、サリサが立ち止まった。


「ほう……出てきおったぞ」


 サリサの視線の先を見ると、岩場の方からゆっくりと歩いてくる巨体が見えた。三メートルを超える体に茶色い毛、鋭い角が生えていて、眼光が強い。


 鑑定を使ってみると、【ベリアットの特殊個体】と出てきた。


「サリサ、あれが特殊個体だよ。気を付けて」


「任せておけ。どれ、少し本気を出すかのう」


 私たちが後ずさりする中、サリサだけが前に向かって進んでいく。すると、特殊個体はサリサを睨みつけた。


「ブモォォォッ!」


 その時、雄たけびを上げた。空気を震わせる強い声。その声を聞いて、私たちの体は硬直した。


「サ、サリサ! 気を付けて!」


「体が動きません!」


 心配して声をかけると、サリサの歩みが止まった。まさか、サリサも雄たけびが体がすくみ上っている?


「……ふっ、中々やりおる。じゃが、こんな事で怯むわらわではないわ!」


 サリサが力を籠めると、体が自由に動き出した。凄い……あの圧をものともしないなんて。


 次の瞬間、空気が変わった。サリサが一歩踏み出した途端、ベリアットの特殊個体の周囲に渦巻いていた魔力が、目に見えるほど濃くなる。


「来るよ!」


 私が叫んだ直後だった。


 ゴゴゴゴゴ――ッ!!


 地面が震え、無数の石が宙に浮かび上がる。拳大から人の頭ほどの大きさの岩が、空を覆い尽くすほどに生成されていく。


「なっ……あれ全部ですか!?」


 次の瞬間、それらが一斉にサリサへと降り注いだ。まるで岩の雨だ。轟音と共に落ちてくるそれは、一つ一つが致命傷になり得る威力を持っている。


 だが――。


「ふんっ!」


 ドガァッ!!


 サリサの拳が振るわれるたび、岩が粉々に砕け散る。続けざまに蹴りが放たれ、飛来する石を空中で叩き割っていく。


 バキッ! ガンッ! ドゴォッ!!


 衝突音が連続し、破片が嵐のように飛び散る中、サリサは一歩も退かない。まるで暴風の中心に立つ柱のように、微動だにせず迎え撃っていた。


「生ぬるい攻撃じゃ、わらわは倒せんぞ!」


 堂々たる挑発。その言葉を理解したかのように、特殊個体の動きが止まる。ピタリ、と。降り注いでいた岩も、ふっと消えた。


「……来る」


 背筋が粟立つ。次の瞬間、ベリアットは地面を蹄で削った。地面が砕け、土が弾け飛ぶ。そして――消えた。


「え……!?」


 目で追えない。そう思った瞬間にはもう――ズドォォォンッ!!!


 サリサの目の前に現れていた。凄まじい速度。空気が遅れて裂けるほどの突進。その鋭い角が、一直線にサリサの体を貫こうと迫る。


 だが――。

「えっ!?」


 私は思わず声を上げた。サリサが、その角を両手で真正面から受け止めていたのだ。地面がめり込み、周囲に放射状の亀裂が走る。衝撃で土砂が舞い上がり、視界が茶色に染まる。


 それでも、サリサは動かない。


「ほほう、この力……かなりのものじゃ」


 ギリギリと押し合う音が響く。巨体の魔物と、小さな少女。その構図が、あまりにも不釣り合いだった。


 だが、押されているのは特殊個体の方だった。


「じゃが、わらわを倒すには足りないのう!」


 その瞬間、サリサの足元がさらに沈み――ドンッ!!


 爆発的な力が解き放たれた。


「うそっ!?」


 ベリアットの巨体が、宙に浮いた。サリサが、持ち上げたのだ。あの三メートルを超える巨体を、まるで軽い荷物のように。


「行くぞ!」


 ブンッ!!


 次の瞬間、特殊個体は空高く放り投げられた。空気を裂きながら上昇していくその巨体を、サリサは地面を蹴って追う。


「【跳躍】!」


 ドンッ!!


 地面が爆ぜ、サリサの姿が消えた。そして一瞬後、空中。ベリアットの真上に、サリサは現れていた。


「これで、どうじゃ!」


 サリサは空中で体勢を反転させると、ベリアットの体を掴み、頭を下に固定する。そのまま一直線に、地面へ。


 そして――ズガァァァァァァァンッ!!!


 凄まじい轟音と共に、ベリアットの頭が地面へと突き刺さった。地面が陥没し、巨大なクレーターが生まれる。衝撃波が遅れて広がり、私たちは思わず身を伏せた。


 砂煙が晴れた時――そこには、動かなくなったベリアットの巨体と、その上に立つサリサの姿があった。


 悲鳴を上げる暇すらなかったのだろう。その命は、衝撃と共に断たれていた。


「ふむ……まあ、こんなものじゃな」


 サリサは軽く肩を回しながら、こちらを振り返る。その表情には、余裕しかなかった。

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