45.お小遣い
三人でベッドにゴロンと寝転がると、体の力が抜ける。
「この瞬間が堪らないのう。ずっと、寝ていてもいいぐらいじゃ」
「ずっと寝ていたら何も出来ませんよ?」
「そういう日も必要じゃと思うぞ?」
「サリサは呑気だねぇ」
だけど、そういう日もあってもいいかもしれない。今度、籠る日を作ってみよう。その為には、何か遊べるものがあればいいんだけど……。
そうだ。そろそろ、お金も溜まってきたし、お小遣いを渡しても良い頃合いかもしれない。
ネットショッピングの画面を開き、残高を確認する。そこには五十万コルトが貯まっているのが見えた。手元にもいくらかあるけれど、かなりお金が貯まってきた。
「ねぇ、前に言ったこと覚えてる? お小遣いのこと」
「覚えておるぞ。それがどうかしたのか?」
「お金が貯まってきたから、そろそろ二人にもお小遣いを渡そうかなって思って」
「えっ!? 本当ですか!?」
すると、二人は私の隣に移動してきた。ギュッと体を寄せ合うと、三人でネットショッピングを見る。
「私、車につけるアクセサリが欲しいです!」
「わらわは……何でも欲しい!」
「もう、欲しい物があるんだ。だったら、買ってもいいよ。一人、二万コルトまでね」
「そ、そんなに良いんですか!?」
「太っ腹じゃのう!」
「流石に今日一日で使わないでね。また、お金が貯まるまではお小遣いは渡せないよ」
そう言いつつも、二人の目はキラキラと輝いている。ようやく、好きなように買えると思うと嬉しいようだ。
「じゃあ、先にティナのアクセサリを見る?」
「はい!」
「えーっと……この画面だね」
「わーっ! 色々ありますね!」
車のアクセサリの欄を見せると、ティナの顔がさらに輝いた。
「吊るすのも可愛いですし、置いておくのも可愛いですし……。これは、悩みますね……」
「ダッシュボードに置くと、振動で揺れるののあるよ」
「そんなのがあるんですか!?」
「おぉ……凄いテンションが上がっておるのう……」
色んなアクセサリを見せると、ティナが興奮してきた。車に乗っているようなテンションで、サリサはちょっとだけ引いていた。まさか、ここでも暴走?
「可愛いキャラがいっぱいいて、決めきれないですね」
「別に一つじゃなくてもいいんだよ。たくさん並べて楽しむ人もいるし」
「これをたくさん並べでですか!? それ、凄くいいですね!」
「あと、香りも置いたりする人もいるよ」
「香りっていう選択肢があるんですか!? あぁ……どうしましょう……」
色々とアドバイスをしていると、ティナが頭を抱え始めた。自分の好きな物に関わると、こうもう人が変わるのか。なんだか見ていて楽しい。
「わらわのも見せてくれ!」
「何見るー?」
「ともかく、面白いものじゃ!」
「面白い物ねぇ……サリサの場合は体を使うものがいいかな」
合いそうなものを思い浮かべると、それらを検索していく。すると、ずらっと画像が表示された。
「バランスボールって言って、これに乗ってバランスを取ったりするのもあるし」
「こんな丸いものに乗るじゃと!? む、難しくないか!?」
「慣れると楽しいよ。ブレイブボードっていうのもあるよ。揺らして進む板かな」
「揺らして進むとな? なんじゃか、楽しそうなものじゃの」
「あとはねー」
サリサ向けに体を使って遊ぶものを見せていく。どれも気になるのか、目を輝かせて見ている。
「うわー! たくさんあって決められないのじゃ! どれも、楽しそうじゃのう!」
「まぁ、この世界にはない物だからね。気になるのも仕方ないって」
「お小遣いでどんなものでも買おうと思っておったが、まさか、ここで躓くことになろうとは……うむむ」
腕組をして真剣な表情で悩み始めた。お小遣いは逃げないから、じっくりと考えるといい。
そんな悩まし気な二人に私がさらに画面を見せると、また悩まし気に唸り始めた。その様子がとても面白い。
「悩め、悩めー。悩んだ末に脱線して、最初とは違うものを選べー」
「うぅ、メル……酷いです。他人事だと思って……」
「そ、そういうメルは何にするんじゃ? メルこそ、決められないのではないか?」
「私?」
そういえば、私にもお小遣いがあるんだった。すっかりそのことを忘れていた。
「メルはどんなものにするんですか?」
「メルこそ、悩めー……」
ジーッと見つめてくる二人。そんな二人を見ていて、自分の欲しい物を改めて考える。
この世界にしかないものを買えばいい。だけど、大抵のものは前世で経験済みで、そこまで購買欲はない。
私が買って嬉しい物ってなんだろう? 日常を豊かにする物? 便利で役立つ物? でも、どれもしっくりこない。
そんな時、二人の顔が目に入ってきた。二人ともジッと私を見つめていて、私の回答を待っているかのようだった。
そういえば、このお小遣いも二人が喜んでくれると嬉しいと思って始めたんだ。……そうか、私は二人に喜んでもらえるのが何よりも嬉しいんだ。
「私はお菓子にするよ。お菓子の詰め合わせかな」
「あっ、決まっていたんですね」
「なんじゃ、つまらん。でも、どうしてお菓子の詰め合わせなんじゃ?」
「お菓子の詰め合わせだったら、三人で食べられるでしょ? 二人が喜んでもらえたら嬉しいなって思ったんだ」
素直な気持ちを伝えると、二人が驚いた。
「私たちの事を考えてくださっていたんですか?」
「まー、それが私にとって嬉しいことだったから。このお小遣いを始めたのも、喜んでもらいたかったからなんだよね」
「自分の事よりもわらわたちのことを考えてくれるとは……。本当にメルはお人よしじゃな」
「そうかな? それが一番、私が嬉しいと思ったからだよ」
にっこりと笑って答えると、二人がやわらかく笑ってくれた。
「もう、そう言うところはメルの悪いところです」
「えっ? わ、悪かった? ご、ごめんね!」
「そう言う意味ではない。もう少し、自分勝手に考えても良かろうと思ったんじゃよ」
でも、それが私が嬉しいことだったからなぁ。二人の喜んでいる姿を見ると、心が満たされるというか……。
すると、二人の手が頭に伸びた。よしよしと耳まで撫でまわしてくる。
「メルは偉いですね。だから、褒めてあげます。褒め殺しです」
「今日はたくさんわしゃわしゃしてやるからのう!」
「うぅ……あんまり頭は撫でないで……」
「ふふっ。しっぽが元気よく振ってますね」
「嬉しいんじゃのう! 可愛い奴め!」
だから! 頭を撫でられると、尻尾が反応して恥ずかしいんだってば!




