15.スライムのクラッシュゼリーアイス
「今日も薬草がわっさわっさと生えておったな! 大量じゃ!」
「メルの嗅覚のお陰ですね。今日も美味しい御飯が食べれそうです」
「役に立って良かったよ」
森の中を探索していると、また強い薬草の匂いがした。その場所に行ってみると、また群生していたので、一部を残して他は採取した。
とりあえず、今日のご飯は困らなくて済みそうだ。でも、一つ困ったことがあるとしたら――。
「今日の魔物はゴブリンばっかりでしたね」
「場所が悪かったのじゃ。きっと、ゴブリンしかいない場所を歩いてしまったのじゃ」
そう、今日はホーンラビットどころか、新しい食べられる魔物と出会えなかった。出来れば、新しい魔物と出会いたかったんだけど……。
私の危険察知でどうにかならないかな? スキルを発動させて、当たりの気配を探してみる。この辺には……ん? 木の上に何かいる。
「ねぇ、サリサ。この木を揺らしてみて」
「この木をか? 分かった」
お願いすると、サリサは木の前に立つ。そして、力いっぱいに叩いて見せた。すると、上から何かが落ちてきた。
「ん? これはスライムじゃないか」
「あー、スライムがいたんだ」
落ちてきたのはスライムだった。プルプルと動いて、逃げていくようだ。
「なんか、あいつは美味しそうに見えないか?」
「……分かります」
「よし、メル。あいつを倒して、今日の夕食にするのじゃ!」
スライム……料理出来るかな? 不安に思いながらも、スライムに近づいて剣でひと突き。すると、痙攣した後にデロンと溶けた。
それを持ち上げると、プルプルとした弾力とヒヤッとした冷感を感じる。それで、ハッと思いついた。
「これ、今日のデザートにしよう」
◇
「それで、メル。スライムのデザートって何を作るのじゃ?」
「ゼリーアイスを作ろうと思うよ」
「アイス、ですか?」
「冷たくて甘い食べ物だよ」
説明しながら、スライムを水で綺麗に洗う。そのスライムを鍋に入れて、火にかける。すると、スライムが溶けだした。
「じゃあ、この中にサイダーと砂糖。少しのゼラチンを入れるよ」
「サイダーという奴、いっぱい泡がついていたぞ!」
「どんな感じなんでしょう……楽しみです」
スライムにサイダーと砂糖で味付けをして、サイダーを入れて緩くなりそうだからゼラチンを追加で入れる。そうやって、材料が溶けあうとバットに入れる。粗熱を取ると、冷蔵庫に入れて固まらせる。
「これがゼリーの部分ね。次はアイスの部分。ボウルに卵黄と砂糖を入れて、混ぜ合わせる。鍋に牛乳を入れて少し温めると、この牛乳をボウルに入れて混ぜる」
卵黄、砂糖、牛乳を均等になるまで混ぜ合わせる。
「じゃあ、これをまた鍋に戻して、とろみが出るまで火にかける。とろみが出たら、氷水のボウルに重ねて入れて冷やす。その間に生クリームを泡立てていくよ」
ボウルに生クリームを入れると、泡だて器で泡立てた。
「最後に最初に混ぜた材料と生クリームを混ぜ合わせる。これを、冷凍庫で冷やして固めると――」
「アイスが出来るんじゃな!」
「そうだよ。これは食事が終わって、お風呂も入り終わった後に食べよう」
「えっ!? そ、そんなに待つんですか!?」
「まぁ、アイスが固まるのは時間がかかるからねー」
時間がかかるのは仕方がない。私は分かっているから我慢出来るけど――。
「ぐぬぬっ、すぐ食べれないのは辛い! ど、どうにかならんのか!?」
「どうにもならないね」
「そ、そんな! 待つ時間が地獄のようです。あんな美味しそうな物を見せられて、我慢しろというのは地獄です!」
「地獄が長いほど、天国は心地いいよ」
二人が身悶えしている。相変わらず、反応が面白い。なんだか少し、優越感に浸れて楽しくなっちゃう。
さて、二人が身悶えしている内に、私は夕食作りにいそしみますか。
◇
「ふー。お風呂気持ち良かったね」
「それはそうじゃが、もういいんじゃな!? あのデザートを食べてもいいんじゃな!?」
「もう、待ちきれません!」
「もう、二人ともお風呂にいた時もそればっかり」
お風呂を出ると、二人が私の背を押してキッチンに向かわせた。お風呂に入っている時も、デザートの事は頭から離れなくて身悶えしていた。まぁ、可愛かったから眼福だった訳だが。
こんなに待たせちゃったから、ちゃんと美味しいデザートに仕上げなくっちゃ。そう思って、私はゼリーとアイスを冷蔵庫から取り出した。
ボウルにゼリーとアイスを入れると、軽く混ぜ合わせる。それを、冷やしておいたガラスの器に盛り、最後にミントの葉を乗せると――。
「はい、お待たせ。スライムのクラッシュゼリーアイスだよ」
「なんか、長ったらしい名前じゃな……。じゃが、そんなことよりも見た目が鮮やかで美味しそうじゃのう!」
「白と青のコントラストが綺麗ですね。なんだか、食べるのが勿体なく感じます」
「だったら、わらわが食べてやろうか?」
「も、もう! あげませんからね!」
「ははっ。さっ、食べようか」
「「「いただきます!」」」
スプーンですくって、口に入れる。すると、アイスの濃厚な牛乳の味が口に広がる。そして、サイダーの爽やかな刺激が舌に残る。
「なんじゃ、この食べ物は! 白いものは溶けるし甘いし、青いものは軽く刺激があるぞ!」
「新しい食感! なのに、美味しいです!」
「うん、どっちも良い感じに合わさっている。アイスの味も溶け具合も最高だし、ゼリーの刺激も美味しい」
これは、いいデザートが出来たんじゃない? その食感が面白くて、味が美味しくて、どんどん食べ進めてしまう。
「メルはなんという料理技術を持っているのじゃ。こんな凄いもの、食べたことがないぞ!」
「貴族だった私でも、こんなに美味しいものを食べたのは初めてです。メルって凄いですね!」
「美味しく食べてくれてありがとう」
褒められるのは悪い気がしないけれど、やっぱり照れる。嬉しい気持ちでどんどん食べ進めると、器はあっという間に空になった。
「う、美味かった……。そうじゃ! 何か、スキルはついたかの?」
すると、サリサが早速ステータス画面を開く。私たちも開いてみると――。
「「「『状態:つるもち肌』?」」」
スキルじゃなくて、今度は状態!? ……本当につるもち肌になっているのかな?
恐る恐る自分のほっぺを触ってみると、肌がつるっとしていて、もちっとしている。
「……凄い。肌の感触が違う」
「こ、これは……気持ちがいいのう」
「まさか、お手入れいらずの肌にですか!?」
お手入れいらずの綺麗な肌を手に入れたってこと!? それはそれで役に立つ。それにしても、こんなに気持ちよくなるなんて……。
夢中で自分の頬を捏ねていると、サリサが近づいてきた。そして、私の腕を触ってくる。
「おぉ、本当じゃ! 全然違うぞ!」
「いや、なんで私で試すの?」
「本当です! こんなに気持ちいいとは思いませんでした!」
「だから! なんで二人は私を触るの!?」
「そりゃあ、この中で一番肌が悪かったのはメルだったからのう」
「体の肉付きとか、肌の触り心地とか、あまり良くなかったですから」
くっ……! 奴隷のようにこき使われていた日々の負債がここに!
「メルの肌がここまで良くなるとは思わなかった。うむ、これはいい変化じゃぞ!」
「これで、触り心地が良くなりますね」
「今度はもふもふしながら、もちもちするのじゃ!」
「メルに触るのが病みつきになりそうです」
そういって、二人は無遠慮に私を触る。耳や頭、ほっぺや手。それに触られると気持ちよくなっちゃうから、しっぽが自然と揺れてしまう。
それを見て、二人はニコニコと笑みを深める。この、思い通りにされている感じ、凄く恥ずかしい!




