14.魔物の料理
私たちも急いでステータス画面を開いて、自分のスキルの欄を見る。そしたら、本当に新しいスキルが生まれていた。
「私には『危険察知』のスキルが生まれたよ」
「私は……『魔力回復(微)』がついています」
「わらわは『跳躍』じゃ」
「スキルが生まれたのもビックリだけど、それぞれで違うスキルがついている。同じ料理を食べたのに、どうして?」
考えられるのは、私が作った料理には特別な効果がついているということ。だけど、今回は違う。いつもは経験値が貰えるのに、今回はスキルが生まれてきた。
「今回、いつもと違うのは魔物を食べたからじゃないか?」
「……そうですね。いつもはネットショッピングで買った材料を使って料理してました。だけど、今回は魔物を使っています」
「じゃあ、私の『転生者の料理技術』は使う材料によっても変化するってこと?」
「おそらくそうじゃないか? でなければ、説明がつかん」
「そう考えるのが自然ですよね」
てっきり、経験値だけ貰えると思っていただけに、これは大きな収穫だ。ということは、今後は魔物を使った料理もしていけば、どんどん強化されるっていうこと?
これは、とんでもないスキルだ。自分で鍛えなくても入ってくる経験値。厳しい鍛錬の先に会得できるスキル。それが、料理して食べるだけで手に入るんだから。
「くっくっくっ。メルのスキルは凄いのじゃ! そのスキルがあれば、わらわたちはもっと強くなれるぞ!」
「子供な上に弱いから旅をするのが不安でした。ですけど、これからどんどん強くなるって思ったら、その不安もなくなります」
「というわけで、メル。これからは魔物も使った料理をするのじゃ! メルの料理で強化作戦じゃ!」
サリサにビシッと指を差される。だけど、そんなこと言われなくても分かっている。
「じゃあ、これからは魔物も使った料理をしていこう」
「メルがどんな料理をしてくれるのか、楽しみです」
「わらわは鍛えなくても強くなるのが楽しみじゃ! もう鍛錬はしたくないから、メルのスキル様様じゃ!」
二人のためにも、魔物を使った料理をどんどんしていこう。そうして強くなって、安全なスローライフ冒険旅を満喫するんだ。
◇
翌日、私たちはまた同じ森にやってきた。目的はもちろん、薬草採取と魔物討伐だ。
「さぁ、今日もがっぽりと金を稼ぐのじゃ!」
「もう、サリサはそればっかり」
「だって、そうじゃないと美味しいものが食べられなくなるのじゃ! 美味しいものを食べるためには、金を稼がねば!」
「私もメルの美味しい料理を食べるために頑張りたいです!」
二人の意識が私の料理に向いている。そんなに私の料理が美味しかったってことだよね。ふふっ、嬉しいな。
「おっ! メルの尻尾が嬉しそうに揺れているのじゃ!」
「……可愛い」
「ちょっ、あんまりみないで!」
うぅ……獣人だとこういうところに感情が露わになっちゃうから、隠しきれないよ。なんか、子供っぽくて恥ずかしい……。まぁ、子供なんだけど、心は大人なんだよ……。余計にくるというか……。
その時、気配を感じた。それも、離れたところから。なるほど、これが危険察知のスキルの効果。こんなに離れていても、分かるなんて凄い。
「二人とも待って。近くに魔物がいるみたい」
「ほう、早速か!」
「どこでしょうか?」
「あっち側から、五体くらいの気配がする。行ってみる?」
「もちろん、行くのじゃ! どんな相手であっても、安心せい! 無敵に強いわらわがいるんじゃからな!」
サリサがいれば、どんな相手だろうとも平気そうだ。私たちは魔物の気配がする方向に進んでいった。
しばらく森の中を進んでいると、耳に魔物の声が聞こえてきた。それを頼りにもっと近づいてみると、木の陰に動く影を見つけた。
「あれは、ゴブリンじゃな」
「あれがゴブリン……」
「ホーンラビットよりも大きいですね」
私たちと同じくらいの背丈のゴブリンだ。ホーンラビットに比べれば大きいから、威圧感がある。
「どうする? やるか?」
「これから冒険者をやっていくんだから、これくらい勝てなくてどうするってね」
「こ、怖いけど……やります」
「よし、決まりじゃな。安心せい、危険になったらわらわが守ってやるからの! という訳で、突撃!」
すると、サリサが飛び出していった。それに気づいたゴブリンたちがこちらを向いて、声を上げる。
こうなってしまったら、戦うしかない。私は剣を抜くと飛び出し、その後にティナが続いた。
「わらわは見守っている。だから、思う存分戦うがいい!」
「分かった!」
体に力を入れて、ゴブリンに立ち向かう。身体能力はゴブリンよりも上、だからきっと上手くいくはずだ。
一気に距離を詰めると、ゴブリンが棍棒を振るってくる。それを軽々と避け、一歩踏み出す。そして、深く剣を振るうと――。
「ギャァッ!」
「一体目!」
この体は本当に凄い。思った以上に動くし、力も強い。これなら――そう思った時、嫌な気配を感じた。すぐにその場を離れるように飛んだ。
すると、私がいたところに二体のゴブリンが棍棒を振るってきた。あ、危ない。もう少しで、食らうところだった。これも危険察知のお陰だろう。
「風よ!」
後方からティナの詠唱が聞こえた。風が吹き抜け、一体のゴブリンの体を切り裂く。よし、これで二体目!
「グギャーッ!」
「ギャーッ!」
その魔法を見て、二体のゴブリンがティナに向かっていった。あっ……と思ったら、すぐにサリサが行く道を塞ぐ。
「後衛を狙うのは良い判断じゃ。じゃが、そこにたどり着くまでに障害があることを忘れているようじゃな!」
サリサが拳を構えると、一瞬でゴブリンとの距離を詰めた。そして、拳を振りかぶると――ゴブリンの頭が吹き飛んだ。
「ふんっ!」
体を捩り、足を上げる。その先にはもう一体のゴブリンの頭があり――その頭も吹き飛ぶ。ほんの一瞬で、決着がついてしまった。
「メル、最後の一体は任せるぞ!」
「うん!」
最後の一体に視線を向けると、他が倒されて戸惑っている様子だ。これは、一気に終わらせるチャンス。
距離を詰めると、ひと思いに剣を振った。剣はゴブリンの喉を切り裂き、白目を向く。そして、力なく地面に倒れた。
「よっしゃー! 倒したのじゃ!」
「やりましたね!」
「みんなのお陰だよ!」
三人で集まって、喜びながら跳ねまわった。
「ホーンラビットよりも大きくて怖かったですが、なんとか倒せてよかったです」
「何を言う。わらわがいるから怖くないじゃろう? なんてったって、この中で一番強いからな!」
「サリサがいてくれたから、安心して動けたよ。ありがとう」
「ふっはっはっは! そうじゃろう、そうじゃろう! もっと、褒めてくれてもいいのじゃぞ!」
褒めると、本当に嬉しそうにしてくれるから褒めがいがある。だけど、すぐに普通に戻ると、今度は険しい表情でゴブリンを見た。
「じゃが、食べられる魔物じゃなかったな……」
「討伐証明を持っていけば、お金にはなるよ」
「うーーーん。出来れば、食べれる魔物が良かったんじゃが……」
「まぁ、そう簡単に食べられる魔物はみつかりませんよね」
「いや、絶対に今日は食べられる魔物を見つけるぞ! さっさと、討伐証明を手に入れて次に行くのじゃ!」
そう言うと、私たちはゴブリンの討伐証明を切り取り、森の奥へと入っていった。次は食べられる魔物だといいなー。




