11.薬草採取と魔物討伐
森の手前でキャンピングカーが止まる。私たちはキャンピングカーから降り、ティナがそれをしまう。
「いやー! 森まで徒歩一時間かかるらしいのに、キャンピングカーがあれば十分くらいでついてしまったな!」
「冒険者稼業にピッタリなスキルだね」
「もう、二人とも褒めすぎですよ……。でも、ありがとうございます」
冒険者は何かと移動が多い。その移動がキャンピングカーで省略されるから、とても快適だ。これなら、冒険の前に疲れるってことがない。
「さて、薬草探しでもしますか」
森の前に立つと、鼻を動かして匂いを嗅ぎ取る。すると、濃い草の匂いが鼻を通る。
「何をしているんですか?」
「ほら、私って獣人だから、嗅覚が優れているでしょ? だから、薬草の匂いとは分からないかなーって」
「それは便利じゃのう! もし、メルの鼻で分かれば、探す手間が省けるわい!」
「まぁ……。肝心の薬草の匂いが分からないから、始めは手探りなんだけどね」
色んな匂いを感じるが、どれが薬草なのか分からない。まずは一つ目の薬草を見つけるのが肝心だ。
「んー……。こっちに独特な匂いの草がありそう」
「じゃあ、そっちの方向に行きましょう」
「メルは誘導してくれ。周辺はわらわたちが目を凝らして探しておく」
二人がいれば、薬草なんてすぐに見つかりそうだ。私は匂いをたどって森の中を歩いて行く。しばらく無言で歩いて行くと、匂いが強くなってきた。
「あっ。この周辺に独特の匂いの草があるよ」
「じゃあ、探しましょう」
「うむ」
立ち止まると、私たちは散開して薬草を探し出す。えーっと、濃い匂いは三つくらいありそう。じゃあ、この匂いはどうかな?
一つの匂いを辿って歩くと、木の陰に特徴的な草が生えていた。葉っぱの裏が赤いものだ。
「うーん。これは依頼書にあった薬草じゃないなぁ……」
見つけたのは、薬草ではない草だった。だったら、違う匂いの下にあるのかな?
そう思って立ち上がると、サリサが駆け寄ってきた。
「薬草ってこれか?」
そう言って、葉っぱの大きな草を見せてきた。
「似ているけど、違うね。ここまで葉っぱは大きくないよ」
「……そうか。だったら、次を探してくるのじゃ!」
一瞬しゅんっと落ち込むが、すぐに気を取り直して辺りに散っていった。私は鼻を動かして、再度周りの匂いをかぎ取る。
強い草の匂いがする方向に進んでいくと、そこにはティナが座り込んでいた。
「ティナ、その辺りに薬草っぽいものある?」
「あっ、ありましたよ。これが薬草じゃないですか?」
すると、ティナは摘み取った草を見せてくれた。大きさ、形、色。どれをとっても依頼書通りの形をしている。
「うん、これが薬草だよ」
「そうですよね! そうだと思いました」
「なんじゃ、なんじゃ? 見つけたのか? ほほう、それが薬草か。今回はわらわの負けじゃ!」
「ふふっ。勝負してませんよ」
これで、薬草を見つけた。後は、この薬草の匂いを辿って――と、思った時。
「キィーッ!」
甲高い声がして振り向いた。すると、そこには額に角が生えた白いウサギがいた。
「あの姿、ボードで見たことあります。たしか、ホーンラビットです!」
「出たな、魔物め! わらわが討伐してくれよう!」
サリサが前に出て、構えのポーズを取った。サリサに任せれば、低ランクの魔物は瞬殺出来る。だけど、ここは――。
「待って、サリサ。私たちに戦わせてくれない? 戦闘経験を積んでおきたい」
「むっ、そうか? だったら、わらわは見守っているのじゃ。安心せい、危険になったら手助けをする」
「うん、ありがとう。ティナ、行くよ」
「はい!」
私は剣を抜いて前に出ると、その後ろに手を構えてティナが立つ。
「キィーッ!」
敵だと気づいたのか、ホーンラビットが立ち向かってくる。初めての剣、上手くいくだろうか? いや、やるんだ!
ホーンラビットは地面を蹴ると、角を向けて飛び掛かってくる。その軌道に剣を構えると――。
キィーンッ!
角の突進を防いだ。すぐに剣を振りかぶり、ホーンラビットを飛ばす。地面に叩きつけられたホーンラビットがすぐに態勢を整えた。
「風よ!」
その時、後ろから風が吹いた。見えない風は一直線にホーンラビットに向かう。だが、その気配に気づいたホーンラビットは飛び上がる。
しかし、完全には避けきれない。足を風で切り裂かれた。これで、ホーンラビットは満足に動けない。
「くらえっ!」
地面に転がって動けないホーンラビットに向かって、剣を振る。剣先は首元を捉え、切り裂いた。
「キュッ……」
その一撃でホーンラビットは力を失い、地面の上に倒れ込んだ。黙ってみてみるが、動く気配はない。
「うむ、お見事じゃ!」
サリサの声でハッと我に返った。私たち二人で初めて倒した魔物。怖かったけど、ちゃんとやれたんだ。
「やりましたね、メル!」
「うん! ティナのお陰だよ!」
「メルが前に立ってくれたお陰ですよ」
二人で手を握って喜び合う。それだけで、喜びが何倍にもなって膨らんだ。
「うむ、中々の連係だったのじゃ。これからの成長が楽しみじゃのう!」
「そう? じゃあ、沢山戦って強くならないとね!」
「私も沢山戦います!」
「わらわがついているから、安心して戦うがいい。危険になったら、すぐに手助けしてやるからな!」
サリサがついてくれるから、安心して戦える。そのことに、安堵しているとサリサが動かなくなったホーンラビットを持ち上げる。
「たしか、こいつは売れるんだったな。わらわのアイテムボックスにいれておくからな」
そう言うと、ホーンラビットがシュンッと消えた。
「荷物がないのがとても楽ですよね」
「うん。手ぶらで動けるから、咄嗟の時とか助かるよ」
「ふふん! そうじゃろう、そうじゃろう! もっと、褒めてくれてもいいんじゃぞ! あーはっはっはっ!」
褒めるだけでこんなに喜んでくれるなんて、なんだか褒めがいがあるなぁ。周囲を見渡し、採った薬草の匂いを思い出す。この匂いを辿れば、きっと薬草が手に入る。
「じゃあ、薬草探しを続けよう」
「はい! ホーンラビットも居たら倒しましょうね」
「どんどん探して倒して、がっぽりと金を稼ぐのじゃ!」




