上越の王
※この第五章は、『忘れられた王国』第五章と同じ内容です。
『関東の縄文』第四章を執筆している過程で、
『忘れられた王国』の構想が完全にまとまりました。
現在は次作『もう一つの武士の誕生』の執筆に力を注いでいます。
本作を完結させるため、同章の文章をそのまま掲載いたします。
どうかご理解いただければ幸いです。
上越の王
中に入ると、大きな部屋に通された。
リーダーは、仕切られた建物を見るのが初めてで、壁がスルッと動くことに驚いて、扉を何度も見直していた。
漁師の頭がリーダーを誘い、中の机の奥に座る王に膝つき、挨拶した。
「王様、保科の猟師です。今日は浅間山の先の峠を超えた関東から来たものをご紹介します。」
「関東とな、、、浅間山の先にまだ土地があるのか?そりゃ珍しいのぉ。そこはどういうところなのか?」
「まず、王様に旅の途中で仕留めたキツネの皮を2つ送ります。」
リーダーは、毛皮を侍女に渡し、話を始めた。
「関東とは、平原が広がる大きな大地で、縄文の理の中で、豪族化した者の集まる場所でございます。」
「何と、平野が広がる?佐久平よりも広いというのか?」
「はい、佐久平なら3つは入りましょう。利根川という川が真ん中に走り、その先には千葉がございます。そして、そちらにも海が広がっております。」
「何と、海があるのか、、、」
リーダーは関川の河口の広さから、その先が海であることを想像して、千葉の海の話がよいと感じ話した。
話しながら、考えてみると凄いぞとも思った。
海と海か、、、
そこで交易の話も聞いてみた。
「近畿圏の方々が交易をされてるようですが、同じなのでしょうか?」
王は、拘りのない話し方で、いや、朝鮮半島という所の北側との繋がりで、多分、近畿圏とは違うと思うと、教えてくれた。
すると、リーダーは質問を続けた。
「敦賀は、ここから4日は掛かるな、何泊かしないと届かない。だが朝鮮半島ではなく、中国からの舟があると思う。」
リーダーは朝鮮半島も中国も初めて聞く国だった。海の向こうに国があることに驚いていた。
話は、関東の話に戻り、竹弓や馬が草原を駆け回ってる話になり、話は尽きなかった。
王様は、お礼と言って、朝鮮半島からの物品を見せてくれた。
ガラス、銅製品、祭器に使うもの織物など、珍しい物を見せてくれた。
夕方は、春日山の奥の巫女の小屋を訪れ、挨拶をして、北川辺に大巫女がいることを伝え、去ることになった。
漁師は、春日山を海側に行って、この先を4、5日ぐらいかければ敦賀に行けることを教えてくれ、リーダーと連れは、別れた。
初めて見る日本海の海は、ザブーン、ザブーンと波があって、荒れているように見えた。
しばらくは海沿いを下ることにした。
風は強い。
嵐のような風だった。
しかし、森を背景に、少し海から離れると楽に歩けた。
初めての森は、リーダーたちを静かに迎えていた。




