上越へ
※この第五章は、『忘れられた王国』第五章と同じ内容です。
『関東の縄文』第四章を執筆している過程で、
『忘れられた王国』の構想が完全にまとまりました。
現在は次作『もう一つの武士の誕生』の執筆に力を注いでいます。
本作を完結させるため、同章の文章をそのまま掲載いたします。
どうかご理解いただければ幸いです。
上越へ
翌朝、リーダーは那須の巫女と別れ、連れを伴って森を走った。
上田を抜ける手もあったが、森で狩りをしながら、食料を確保して、長野盆地の大きな集落の反対側にある縄文の小屋を目指した。
森で一泊して、千曲川の手前の縄文集落に着いた。
「族長、ケヤキの者だ。」
「ほぉ~、珍しいな、久しぶりだのぉ。」
「浅間山の森に那須巫女様が隠れておってなぁ、話のついでに上越を見てこようと思ってのぉ。」
「上越か、、、なるほど、保倉川というのがあって、関川の隣じゃが、そこに縄文の集まる場所があるから、そこで聞くといいぞ」
そりゃ助かると、お礼を言って、一泊させてもらった。
翌日、千曲川を渡り、大きな弥生化した集落を越え、野沢湖に向かった。
湖の畔で、焚き火をして、今日は、簡易のテントを張った。
連れの男が焚き火を炊いて、保存した肉を焼いて夕食にした。
星空が綺麗で、静かな湖の様子を見ながら、上越は、どんな所かと想像していた。
次の日は朝早くから歩き、妙高を越えて、関川を渡り、保科川の小屋を目指した。
夕方、保科川の手前の微高地に大きな小屋が3つ並んで立っていた。
大きな小屋に入ると、女の人が焚き火の前で魚を焼いていた。
「おや、知らない顔だね。」
「我らは、関東、、、浅間山の先の峠を越えた関東から来たものじゃ。浅間山の婆様から聞いて、千曲川の縄文小屋の族長に紹介してもらった。」
「関東、、、そうかい、遠くから来なさったね。ここの漁師が来るから魚でも食べるかね」
済まないと言って、二人は座り、魚をご馳走になった。
食べてる内に、漁師の頭のようなものが横に座り、その女から話を聞いて話しかけてきた。
「関東とは、遠くから来なさったな。」
「済まないお邪魔してる。浅間山の婆様が上越を見てこいと言うのでな、来てみた。」
「ほほ、近畿圏とは別の動きじゃ、明日、見せてやるよ。」
リーダーは、縄文の者の拘らない話が楽しかった。
始めて会ったのに確信を得ることができた。
関東の事も色々話、豪族化していることが、どこも同じだ。と話題は事欠かなかった。
リーダーの竹弓に話が行くと、技術の話には切りが無くなっていた。
翌日、小屋から出て関川に向かった。
広い河口に大きな舟が止まっていた。
旗がヒラヒラと漂っていて、曲線の強い舟で初めて見るようなた舟だ。
丸木舟で、川を渡り、春日山の方へ案内してもらえた。
舟から荷物が降ろされていて、春日山に向かっていた。
田んぼを過ぎて、道は真っ直ぐ春日山に向かっている。
微高地担ったところに門のような物があって、兵が二人立っていた。
案内してくれた漁師が、門の兵に挨拶する。
「済まない、保科の物だ、王様にご挨拶をしたいと思い、関東の者を連れてきた。」
兵は、少し待てと言って、櫓に入り、出て来た。
リーダーは侍女に誘いながら、連れの男と漁師と連れ立って館に入った。
風が春日山に向けて吹いていた。
空は青く、ようやく日が高くなろうとしていた。




