大巫女の誤解
大巫女の誤解
伊勢の大巫女は、北川辺のサワから連絡が来なくなった。
どうしたのだと感じた。
順調と言っていたのに、その後が続かない。
北川辺の大巫女の底力を、ジワジワと感じていた。
近畿圏の理は、縄文の理の書き換えにしかならない。
それは大巫女である己がよく知っている。
近畿圏の理は通じないのだろうか。
サワに対する信頼が消えていくのが見えてきた。
どうするべきなのだろうか。
北川辺に直接ではなく、違うところから、攻めるしかないと思った。
そこで、ケヤキの巫女なら若いはずと思い、また卵を預けてみることにした。
屋敷のなかの卵たちをみわわして、これならと感じた巫女の卵を見つけた。
「お主は、いくつじゃ。」
「はい、大巫女様、16です。」
「うむ、お前が良い。三殿台に行って、族長にケヤキの巫女のところに修行に行きたいと、我の言葉を聞かせろ。良いな」
彼女は《ミカ》、巫女の卵として教育を受けていた。
近畿圏の理の理解力も、サワより上だと思えた。
サワに比べてまだ若いが、自分への心酔が深いと思い期待できると感じていた。
しかし、彼女は結果的にケヤキの巫女の所に行った後、ケヤキの巫女に感化されたのか、こちらも連絡が途切れてしまった。
《ミカ》は、ケヤキの暮らしに対し、自然が人の下にあることを単純に理解したのだった。
北川辺でもケヤキでも、縄文の理に感化されるとが、裏切りになることを巫女たちが、理解しているのだと感じた。
大巫女は、近畿圏への侵入は、かなり難しい事を悟った。
近畿圏の理だけでは通用しない。
関東の巫女たちの暮らしの動きには、弥生化だけでは近畿圏の影響力は及ばなようだ。
このことに気が付くしかなかった。
北川辺やケヤキ、権現堂では、共闘の狩りを順調にこなし、平地に米の作付けも収穫が安定してきた。
伊勢からの巫女の卵が何人か来たが、巫女たちに諭され連絡を途絶えさせていた。
北川辺や権現堂、ケヤキでは、巫女の卵からの教えで、水田の開発や焼き物の窯の工夫、鉄という道具のあることを理解していた。
しかし、北川辺では、族長の差配が、集落の暮らしを支えるようになっていた。
大巫女は、暮らしの細かい思いに頓着をしなかった。
三殿台からの交流で荷物のやりとりは、族長の仕事となり、皆をまとめる事となった。
ある時、三殿台の族長は、伊勢の大巫女に、巫女の卵達が、北川辺の大巫女に近畿圏の話をしても通じないことをハッキリと理解して、北川辺の族長の所に近畿圏の姫を嫁がせる事も手段ではないかと話を入れた。
伊勢の大巫女は、関東への巫女の卵では効果がないことを理解していたので、その案を受け取り、近畿圏との話し合いが始まった。
この時、関東へ入る為の道は、信濃からでは、わずかに入るだけで、三浦半島からの侵入が一番と考えられていた。
相談がまとまり、伊勢の大巫女によって、三殿台へ北川辺の族長相手に、近畿圏の姫を送ることを伝えた。
北川辺の族長は、喜んで、迎え入れることを承諾した。
北川辺からは、毛皮や石が大量にもたらされるようになり、三殿台から伊勢に連絡も行って、近畿圏の姫が向かうことになった。




