大巫女との出会い
大巫女との出会い
北川辺の大巫女は、焚き火の前で座っていた。
正面に伊勢からの巫女の卵、サワが入ってきた。
大巫女は、手を合わせて、目を瞑っていた。
手を大きく前に出して両手を膝の上において、目を開けた。
「サワ、よう来たな。北川辺は、お主を迎えることに決めた。」
サワは今さら何をと、思った。
「お主は川を登る時に興味を前面に出し、ようキョロキョロと見ておった。お主の姿勢は、気持ち良い。気に入った。」
サワは、見られていた事に、驚愕した。
舟には誰も北川辺の者はいなかった筈だ。
「大巫女様、どうしてそれをお分かりになるのですか?」
大巫女は、嬉しそうに笑っている。
サワは不安になった。
「よいよい、儂は、鷹の目で見ておったのじゃ。」
簡単に答える大巫女、確かに鷹が高く空に飛んでいた。
え、とサワは聞いた。
「あの鷹の目に、、、」
伊勢の大巫女にもできるだろうか?
サワは、いきなりの事に言葉を失ったが、、、何とか続けた。
「大巫女様、関東の平原を観ました。とても感動しました。奈良にもなかった広さでした。」
やっとの事で話を続けた。
しかし大巫女は、
「まだ、我らには米の作付けが不十分だ。獣を狩る以外に生きる手段がない。米の作り方を教えておくれ」
いまは冬、米の収穫も終わり、来年からやる事を貰えた。
やっても良いのか?
サワは大巫女の素直な言葉に感服してしまっていた。
こうして、サワの北川辺での暮らしが始まった。
サワには、侍女が一人いたが、自由に動けた。
誰も彼女を疎まない。
利根川を見に行った。
美鈴川とは全然違い、荒々しく見えた。
あんなにスムーズに来れたのに、何故だ。
川を見つめてると漁師らしい男が、
「この川はこれが普通だ。大巫女様が守ってぐださってくれてる。安心せい。」
川と平原それに森、暮らしのスケールが違っていた。
サワが来てから何日かたって、大巫女の小屋の前の広場に人が集まって来ていた。
明らかに違う部族の者たちだった。
大巫女がサワを紹介すると、皆、彼女を見つめたあと、よろしくお願いしますと挨拶してくれた。
竹弓を持った大きな女性が、ツカツカとやって来て、
「権現堂の巫女じゃ、よろしく頼む。お主は米作りに堪能だと聞いた。うちの集落にも来てくれ」
すると北川辺の親父が、笑っている。
サワは既にこの親父を知っていた。
そしてケヤキの民リーダーが声をかけた。
「ケヤキの民だ。うちのケヤキも見に来てくれ」
挨拶が終わると、皆、よし、と声を出して、どこかへ行ってしまった。
大巫女が答えてくれた。
「いまからシカ狩りじゃ」
すると、老人や女の何人かが、獣の皮剥や肉をさばけるよう準備を始めた。
空には鷹が高く飛んでいった。




