三殿台の巫女
三殿台の巫女
三殿台の族長は、水が引き、水田の開発が可能になり、集落の形の中で巫女がいないことに危機感を覚えていた。
ここに住むようになって、狩猟や採取の生活で何とか暮らしてきたが、米が出来る事で、どの様になるのか、経験の無い事態であった。
若手の足に自信のある者に、近畿圏への使いを頼むことにしたした。
巫女の派遣を頼むことであった。
近畿圏では、早速、伊勢の大巫女に頼むことにした。
伊勢の大巫女は、近畿圏の棟梁との血縁関係があり、巫女の教育が終わっている、ひとりの巫女を海を渡る大仕事に指名した。
彼女は、幼少の頃から伊勢に連れてこられ、基礎的な歴史の話を小さい頃から記憶し、年齢が上がると、水田の仕組みや漁業の仕組みを学び、風や地脈からの変化を知り普通の人には理解しない未来を予想できるようになっていた。
巫女は、侍女を三人連れて、舟に乗り込んだ。
海は、穏やかだったが、外海に入るとかなり揺れた。
しかし順当に航海できた。
浜松、下田で二泊して、三浦半島を抜けてようやく、三殿台に着いた。
舟は伊勢で作った最新型で、三殿台の人々を驚かせていた。
三殿台の海辺には、丸木舟が立ち並ぶ。
巫女たちは、そこに降り立ち、徒歩で微高地に向かった。
水田が見えた。微高地が見えてくると小屋が立ち並び、広場があり、新たに造り直されていた神殿があった。
ここは、族長がいた場所だが、族長は、場所を譲り、そこに神殿を建てた。
神殿は、柱を8本立て、壁を作り、入り口に布が掛けてあった。
巫女は、小屋に入る前、立ち止まり《この土地は眠っているようだ》と思った。
巫女は小屋に入り、焚き火を作り、祈りの用意をしているとき族長が入ってきた。
「巫女様、族長です。ようやく水田ができるようになり、稲穂も成長しています。今後もご指導をよろしくお願い致します。」
巫女は目の前の焚き火の炎を見つめていた。おおきく目をつむり、土地の流れを見るために立ち上がった。
族長が後に続き、巫女が広場の前で立ち止まる。
海風が吹いてきた。
族長が横に立ち、巫女を見つめた。
「この風が良いですね。」
《大丈夫だ、この土地に風の加護が及んでいる》
すると、水田の方に歩き出した。
歩きながら、稲穂を見て確認して、水利の仕組みを見直して、
《夏が来たら、慰霊祭を行おう。この土地への感謝が足りない。》
巫女は、独り言のように話して小屋に戻った。
族長は、新たな巫女の力を信じられた。
そして、族長は、その他の狩猟や採取の様子、北川辺や千葉方面の交易の話をした。
北川辺の集落は、規模としてはかなり大きく、交易は続き、人的交流が進んだ。
北川辺は、獣の皮が活発になり大きな輸出品として、行田のケヤキの民からの石も大きな力になっていた。
北川辺や行田では、竹弓の訓練が日常的になり、竹弓にも大いに力になっていた。
夏になり、三殿台の広場では、大きな櫓が建てられ、大きな焚き火を灯して、慰霊祭が行われた。
巫女は、まずは、焚き火の前に座り込み、祈り、立ち上がり手をパッと広げると、青白い炎が上がった。
青い空が広がり、大きな雲が白く、風が吹いていた。
櫓の焚き火の周りに三殿台の住民が集まり、円を描いて踊っていた。
ドンドンドン、タタタ
踊りの音が空に響いていた。




