ケヤキの巫女
ケヤキの巫女
男体山を背に木に向かう。
微高地が続く道を歩いた。
いわゆる関東平野に出るまでは、小高い山の間を歩く事になる。
よしおは、谷間の間で、小動物の動きを感じ、草むらに隠れ待ち伏せをした。
シュッ、シュッ
2連発で発射するのにも慣れてきたようだ。
思川の川辺の石を並べて、血抜きしたキツネを捌き、食べて、一休みだ。
思川を渡ると、小山はなくなり、平地だが木の茂った森の中を進む。
また小さな山が出て、谷間を抜けると平野に入る。
今度は利根川の前に、柱を三本立て、簡易なテントを作った。
今日は焚き火を焚いて、残りの肉を食べ、テントの中で睡眠を取った。
翌朝、利根川を渡りしばらくすると、行田の森が見えてきた。
ケヤキを見つけ、何となくホッとした。
キャ、キャ、コッチ、コッチ
すでに日は高く、子どもたちがケヤキの小屋の前で、老人たちに囲まれて、遊んでいた。
ケヤキの小屋に入る。
「ゆかり、戻った。」
小屋の中で焚き火の前で目を閉じて祈りをしていたゆかりは、驚いた。
「よしお、驚いたわ。大巫女は、どうなったの?」
よしおはゆかりの前に座り、ゆっくりと話始めた。
大巫女から、関東の巫女への伝言を頼まれ、凡そ2週間かけて、土浦から水戸、那須、宇都宮に行って、北川辺に行く前にゆかりにも知らせようと思い寄ったのだと伝えた。
「ご苦労さまでした。でも北川辺の大巫女様に頼まれたのだから仕方がないわね。」
よしおは大巫女から借りた護符を見せた。
「あら、これケヤキの皮ね。」
「お前の母が大巫女に渡したものらしい。おかげでケヤキの集落のものとして、鼻が高かったぞ」
不安は南からの勢力なのね。利根川の先に植えた米は、大分と育ってるらしい。
備えなきゃ、と言われたがどうするべきか分からなかった。
「巫女様方は、皆さまそうかと答えるだけだった。でも関東の巫女のつながりが深きことに感心した。」
ゆかりは、母が大巫女と繋がっていた事やよしおの報告の繋がりを聞いて、巫女として見なければと思い至った。
「よしお、私はケヤキの巫女として進むは、これからもよろしくね」
よしおは、巫女として既に認められてる。
頑張れと伝えた。
この後、よしおは、栗林の小屋を経て、北川辺の大巫女に旅の報告をして、定期的に来てほしいと頼まれた。
よしおは、利根川の下流を見つめ、南の勢力の事を思った。
米や大きな船、かなりの能力を持っていて、知らずに過ごせば、飲み込まれてしまうのだと感じた。
だから、大巫女は、関東の巫女にも知らせ、覚悟を促したんだと。
確信した。
毎日は、おおきく変わらない。
でも、南の勢力への不安はなかった。
毎日の暮らしこそが大事だと思った。
利根川に、大きな風が下流に向けて吹いていた。
見上げると空が青かった。




