宇都宮の巫女
宇都宮の巫女
朝、那須の巫女の洞窟から離れると、山を少し登り、お湯に入れる場所で湯につかり、滝のように落ちる水で体を清めた。
山から降りて谷沿いの道を南に向かった。
これまで、巫女に会うために、巫女の世界に触れるたびに驚いていて、整理する感情を置いてきてしまった。
湖のような水辺の生活や、その先に広がる見知らぬ社会、那珂川の流れの中で狩猟という強烈な強さ。
本当に世界は広い。
つくづく感じていた。
宇都宮への道は、山と山の間をクネクネと曲がって進む。
動物も飛び出して来る。
よしおは、また弓を使って狩る。
よしおは大きな川にぶつかり、川辺を使って簡易のテントを作り、焚き火をして、一泊した。
宇都宮までは、気が楽に動けた。
山を除け、進むと開けた場所に出て、小屋が立ち並んでいた。
陽射しが眩しく感じた。
突然、子どもたちや動物の声が響いてきた。
わーっ、わーっ、フゥン、フゥン
なかに進むと大きな広場があり、老人や女たちが木の実を干したり草を編んだりしていた。
木の実の甘い香りが漂っている。
子どもたちも、元気に走り回ってる。
その後ろに大きな小屋が建っていた。
よしおは入り口の女に話しかけた。
「北川辺の大巫女様より宇都宮の巫女様に伝言を持ってきました。ケヤキ集落のよしおと申します」
挨拶とともに、ケヤキの護符と籾を見せた。
女は挨拶を聞くと、そこで待っててくれと言って、奥に入って行った。
女が戻り、なかに引き入れてくれた。
中は祭場になっており、広かった。さらに奥に盾があり、部屋があるらしい。
宇都宮の巫女は、目をつぶり、一人でいつも瞑想のように座り、頭の中で流れを見るという人であった。
よしおは、そこに案内された。
小屋の中は静かだった。
「巫女様、連れて参りました」
中から小さな返事があり促された。
よしおは挨拶をして、巫女の前に座り、北川辺の大巫女の話をした。
宇都宮の巫女は、細身で目が綺麗な髪の長い姿をしていた。
細い声で答えた。
「北川辺の大巫女様の伝言を承りました。
苦労でした。」
「いいえ、大巫女様からのご指示ですから、土浦、海の巫女、水戸、那須の巫女にも伝えてきました。私は亡くなった父が移動するもので、子供の頃、宇都宮の巫女様にはお会いしていて、いまは、移動するものとしております。」
「長らく、南のような勢力というものもなかった。世の中が動いてる覚悟をせねばならぬな、よしおにも働いてもらうことになると思う」
「どうなるのでしょうか」
「分からん。でもこのように巫女たちが情報を共有することが大事じゃ、いまは、あるという事の理解だけだか、知らなければ、それまで、知っておれば覚悟もできる。」
なるほどと思った。
巫女の皆さまがあっさりと情報を流すので、どうかと思ったりしていたが、覚悟か。
よしおは、巫女たちの賢さに恐れ入っていたのである。
宇都宮の巫女の小屋は、昼過ぎには出た。
左に見えた白い山は、男体山だったかなと思った。
山頂には雪が残っていた。
風が山から吹き下ろしていた。




