那須の巫女
那須の巫女
立派な角が、オス鹿が、木の間からスゥーッと出てきた。
ヒョン、シュン
首の付け根に弓が刺さったら、一発で倒れた。
よしおは、弓の軌道が見えなかった。
昨夜は酒を飲みまくり、サダオは倒れてしまった。
緊張しまくっていたよしおだが、泊まらせてもらい、朝日が昇る時に巫女様自ら部屋に来て、那珂川の流れまで送ると言われ、サダオは置いて付いてきたのだ。
すごい力だ、細腕で背が高いが、竹弓の凄さを目の当たりにした。
従者が、鹿を片付に走る中、巫女が話しかけてきた。
「南が来ておるのだな、早めに那須にも知らせて欲しい。この先に那珂川があり、上流に向かえばつけるはずだ。頼むぞ」
「はい、昨夜はごちそうになり、ありがとうございました。俺も死んだ父が移動するものだったので、那珂川の道は分かります。ありがとうございました。」
うむと頷き、巫女はよしおを促した。
岩場を下り、那珂川の方へ向かった。
木々を抜け、しばらく行くと獣道があった。
ザーッという皮の流れの音が聞こえてきて、段々とスピードを上げて進んでいく。
ふっと獣の気配を感じた。
よしおは、かがんで気配を探った。
水戸の巫女に対抗する気持ちがあったのだろうか。
キツネが走って出てきたところを
シュ、シュ
2連発の矢で仕留めた。
何だかなという感じになって、キツネを取り、血抜きした。
那珂川が近かったので、河原の石を組んで炉にして火をつけた。
木にぶら下げたキツネを捌き、肉にして、石の上で焼いた。
塩は忘れない。
一息ついて、水を飲む。
よしおは河原の獣道を進む。
二日目の朝、ようやく森を抜け、しばらく歩くと、また森が出てきた、今度は山登りだ。
岩が出てきた。
微かな硫黄の匂いがしてきた。
と、平らな部分にたどり着き、小屋が見えてきた。
ここは昔のままだなと思った。
小屋の中に人の気配を感じて、崖のような所に出ると、そこには広場があって、洞窟の前に茅がかぶさっていた。
よしおが大きな声で声をかけた。
「ケヤキの集落のよしおと申します。北川辺の大巫女様から伝言を持ってまいりました。」
しばらくすると、侍女が応対してくれた。
「那須の巫女様にお伝えしたいのですが、お取次ぎよろしくお願いします」
侍女が、中に入り、再び戻り、よしおを誘った。
「お主、会ったことがあるなぁ。大巫女様の使いとな」
よしおは、背の低く、少し小太りの巫女を覚えていた。
「南の勢力じゃな。うむ、お主が大巫女様の使いとは、立派なことじゃ」
久々に会った若者が立派にここに来たことを喜んだ。
「何処から来た」
よしおは、土浦、海の巫女、水戸の巫女に連絡してからこちらに来たことを話した。
もう酒も飲めるだろうと、酒を勧められ、恐縮しながら、飲んでケヤキの集落にも米が来たことを話した。
外は日が暮れていた。
月の綺麗な夜で、風も止んでいた。




