第145章:世界最高峰の狭き門と、膨らむ学園資産
祝賀会から数週間が経過した。
ゼノリス王国を後にした各国の首脳陣は、それぞれの本国へと帰国の途についていた。しかし、彼らの胸中に一切の余裕はなかった。一刻の猶予もないことを、全員が骨の身にしみて理解していたからだ。
国境を越えるやいなや、各国の君主や重臣たちは直ちに緊急国家会議を招集。自国におけるエリート育成機関の設立を進めると同時に、オルフェリア王立学園――今や全土で『アレン魔法学院』と称されるようになった世界最高峰の学び舎への留学手続きを開始した。さらに、国中から優秀な若者を選抜し、入学試験の申請を取りまとめるべく、不眠不休の国家プロジェクトが動き出したのである。
かつては一国の地方都市にある名門という扱いに過ぎなかった学園が、今や世界中の覇権国家から「人類の未来を担う絶対の聖域」として認知された結果であった。
その余波は、瞬く間に数字となって現れた。
世界各国から殺到した受験生の数は数万人を超え、アレン魔法学院の入学合格倍率は、実に【一千倍】という前代未聞の狭き門となったのである。
さらに、各国から支払われる莫大な受入準備金、寄付金、そして世界中から集まった選抜生たちの授業料と試験手数料により、学園の収入は年間【五千億円】規模にまで膨れ上がることとなった。
理事長室のデスクで、提出された決算資料の最終数値を眺めていたアレンは、手元の文庫本をパタリと閉じた。
(……ふむ。合格倍率一千倍か。適正な採点基準と試験会場の収容人数を考慮すれば、これ以上の規模拡大は管理コストの増大に繋がるな。この倍率で選考精度を維持するのが最も効率的だ。――そして学園の年間収入は五千億円か。これで数年分の設備投資と研究用資材の調達資金は完全に確保されたな)
数週間前の黒歴史のダメージから立ち直ったアレンは、持ち前の合理的思考を取り戻し、冷徹かつ完璧な数値管理のもとで学園の未来図を静かに描き直すのだった。




