表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説の先にある世界  作者: 藤咲玲


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
155/198

第144章:神の監視カメラと、崩壊する黒の管理者

 大空を染め上げる「魔法花火」の余韻に包まれ、各国の要人たちが感涙の誓いを交わし合っている、まさにその時。


 アレンの背後に、ぬっと影が忍び寄った。


「ねえねえ、アレン」


 耳元で囁かれたのは、専属派遣社員(女神)であるエルエルの、どこか意地悪でニヤニヤとした声だった。


「へー、良いところあるじゃん。ちゃんと真面目に締めること考えるんだ? てっきり、今が一番目立つ状況だからさ~」


 エルエルはすっと身を引くと、大講堂の物陰でノリノリで「ポーズ」を決め始めた。


 右手で顔の右半分を覆うように指を「ブイの字」に開き、腰を落として漆黒羽織の裾をオーバーにヒラヒラと翻す。


「『クックック……静まれ、俺の右腕……! 今夜は右目が疼きやがるぜ……!』――みたいな感じで、ポーズ決めまくるのかと思ったよー!」


「………………っ!?」


 その瞬間。


 アレンの脳内で、これまで構築してきたあらゆる論理回路と術法展開の組み立てが、すさまじい処理落ち(クラッシュ)を起こした。


 視覚情報が完全に狂い、血の気が引いて全身の毛穴という毛穴が凍りつく。

そう――それは、彼が誰一人いないはずの自室や、無人の迷宮の奥で「ロールプレイの自己演出テンプレ」として密かに動作検証(ポーズ練習)していた、絶対非公開の超最高機密ログ(黒歴史)そのものだったからである。


「あ……がっ……」


 膝から力が抜け、あの「黒曜龍」すら科学的に粉砕した最強の術者が、その場にガクッと膝をつき、床に両手をついて崩れ去った。


(……見られていた……!? 神界の監視モニターで……あの黒歴史の練習風景を……最初から……全部……!?)


 今までどんな勘違いや暴走が起きても「俺の計算通りだ」と冷徹にスルーし続けてきたアレンの精神()が、根本から折れ曲がる乾いた音が響いた。


「ア、アレン様……!? どうされたのですか!?」

「店長! アレン様が突然、床に崩れ落ちられました!」


 遠くで駆け寄ってくる第一王子(店長)と女聖騎士(副店長)の心配そうな声すら、今の彼には聞こえない。


 アレンは真っ白な顔のまま、床を見つめて掠れた声で呟いた。


「……エルエル」


「なーに? 漆黒の管理者様?」


「……時間、戻しちゃダメかな? 【時空制御】で、この十数秒の存在記述ごと、なかったことに……」


「神様、怒ると思うよ?」


 エルエルは心底楽しそうにケラケラと笑いながら、人差し指をチチチと横に振った。


「時間軸の巻き戻しなんてやったら、神界サーバーの履歴ログに『黒歴史の隠蔽目的』って永久保存されちゃうよ? ルカちゃんだって激怒して手動パッチ当てるの拒否するよ~?」


「………………」


 絶望的な詰み(チェックメイト)。


 大空では、アレンの放った美しい花火が最後の輝きを放ち、各国の王たちが「おお、神が我らに涙しておられる……!」とまたしても感動の嵐を巻き起こしている。


 その真下で、(世界の法則)書き換え(改ざん)し続ける男は、前世からの黒歴史のダメージに身を悶えさせながら、二度と立ち上がれないかのように深く項垂れ続けるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ