第138章 :幕間 神聖騎士団の緊急招集(校正版)
レムリア法皇国の聖都地下――通常は国家存亡の危機にしか使用されない「絶対招集の間」に、重厚な甲冑の金属音が打楽器のように鳴り響いていた。
集結したのは、法皇国が誇る最精鋭「神聖騎士団」の全連隊長、ならびに特務騎士たち。
普段は冷徹な鉄の意志を持つ精鋭たちが、その日は一様に蒼白な面持ちで、中央の壇上に立つ騎士団長を見つめていた。
「——静粛に!」
騎士団長の一声が、張り詰めた地下空間の空気を一瞬で叩き切る。
「全軍に緊急通達である! たったいま、ゼノリス王国の王立学園より……我らが『絶対なる神』アレン様からの直筆招集令が届いた!」
ざわつ……と、地下の間全体が物理的に揺れた。
「アレン様からの……直接の招集令……!?」
「ついに……ついに地上に新たなる神域を打ち立てるおつもりか!」
「いや、世界の歪みを一掃するための最終審判の合図では……!」
動揺と狂信が混ざり合った騎士たちの声に対し、騎士団長は固い拳を握りしめ、厳かに首を振った。
「落ち着け! 表向きの名称は『学園の定期祝賀会』……しかし、騙されるな! 既にアルカディア魔法帝国の帝王、さらには諸国の覇権を握る首脳陣が一堂に会する情報が入っている! つまりこれは、世界規模の秩序再編……我らがアレン様が仕掛けられた『天地開辟のサロン』である!」
騎士団長の熱弁に、居並ぶ精鋭たちはゴクリと唾を呑み込んだ。
「我らが課された使命は二つ! 一つ、法皇猊下、ならびに4号店店長(第一王子殿下)と副店長(女聖騎士)の絶対防衛! そして二つ——世界の王どもに対し、我らアレン様の下僕としての圧倒的威容を見せつけることだ!」
騎士団長は腰の神聖剣を掲げ、雷鳴のような声で全軍に命じた。
「全特級騎士団、直ちに遠征装備を固めよ! 留守中の聖都警備は最低限の自動化ラインに任せ、全精鋭を以てゼノリス王国へ進軍する! アレン様が用意された至高の舞台に、一ミリの欠陥も残すな!!」
「「「ははーーっ!! お命のままに!!」」」
一千を超える精鋭たちの激越な勝鬨が、地下大聖堂を狂乱の渦へと巻き込んでいく。
遠く離れたゼノリス王国の理事長室で、「そういえば法皇国のあの厳めしい騎士団の人たちにも、警備の手伝い程度に声かけておけば良かったかな」と一瞬頭をよぎりつつも「まあ、あの二人(店長と副店長)が来れば十分か」と読書に戻っていたアレン。
まさか自分の気まぐれな招待状一枚によって、一国の最精鋭軍団が国境を越えて大移動を開始しようとしているとは、夢にも思っていないのだった。




