第137章 :幕間4号店の「迎賓」準備
「――店長! 聖都の護衛騎士団から緊急連絡です! アレン様からの『式典招集令』が届いた件で、法皇猊下が直々に当店へお越しになります!」
株式会社バルツァー・ラボ皇王国支店4号店。
普段は薬草の香りと穏やかな接客の声が響く静かな店内に、副店長である女聖騎士の悲鳴のような報告が突き刺さった。
レジカウンターで手際よく生薬の計算をこなしていた第一王子――もとい『店長』は、一瞬ピタリと手を止めたものの、アレンの指導で培った驚異的な冷静さでゆっくりと顔を上げた。
「落ち着きなさい、副店長。アレン様からのご招待だ、父上が動揺されるのは無理もない。……それで、招待状の内容は?」
「はっ! 宛先は法皇猊下、そして我々『店長』と『副店長』の二名! 開催地はゼノリス王国の王立学園……表向きは『定期祝賀会』とされておりますが、各国の情報によればアルカディア帝王や諸国の首脳が一堂に会する模様です!」
女聖騎士が震える手で差し出した報告書を改め、王子は深く息を吐き出した。
(ただの学園の式典なわけがない……。アレン様がわざわざ我々4号店のスタッフをご指名されたのだ。これは、我が法皇国が世界に提示してきた『医療標準化の成果』と『新たな店舗経営のモデル』を、世界の頂点たる者たちの前で実証せよという、上層部からの監査に他ならない……!)
アレンの「過敏反応を抑えるためのリハビリ」と「感情を捨てて論理で返す」教えを胸に刻んだ王子は、かつてのトラウマに震えていた面影を一切感じさせない、力強い笑みを浮かべた。
「ふっ……面白い。アレン様がせっかく用意してくださった世界規模の実践練習の場だ。逃げ出すわけにはいかないな」
「て、店長……! では、我々も出撃するのですか!?」
「当たり前だ、副店長! 4号店の看板を背負い、アレン様のもとへ向かう! すぐに不在期間中の臨時店長を手配し、店舗の運用を滞りなく回せるよう手配させなさい。それと、父上には『私も同行しますので、取り乱さずに最高級の献上品をご用意ください』とお伝えするのだ」
「ははっ! 直ちに!!」
店長(第一王子)の凛とした指示に、副店長(女聖騎士)は感涙しながら深々と敬礼を捧げた。
店の奥では、神聖騎士団長たちが「王子殿下が……あのような堂々たる君主の覇気を纏われるまでに成長されるとは……すべては神(アレン様)の導き……っ!」と陰でボロボロと大号泣しながら、式典へ同行するための特級護衛陣の編成に乗り出していた。
当のアレンが「4号店の店長と副店長も、たまには息抜きに連れ出してやるか。ついでにお父さん(法皇)も呼んでおくか」くらいの軽いサービス精神で送った招待状。
それが4号店において「世界へ向けたバルツァー・ラボの事業報告および決戦」として盛大に誤読され、最上の気合いとともに準備が進められていることなど、やはりアレンは知る由もないのだった。




