↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
拝啓、元私のお姉ちゃんへ。〜何故か姉が犬だけど気にせず学園ライフを謳歌したい〜  作者: 叶 梨鈴
日常編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/36

1-30 「夏祭り 〜氷華編〜」

「またねお姉ちゃん」


「またね。楽しんでね〜」


 私は静紅に手を振り、あちこちにある提灯と屋台に胸を弾ませながら、軽い足取りで待ち合わせ場所へ向かった。


 大きい鳥居の前に着き、諒を探す。約束の15分前だから、まだ来ていないみたいだ。


 諒から貰った、お揃いのネックレス。浴衣とは合わないかな、と思ったんだけど、どうしても付けたかったから、浴衣の下に忍ばせた。


 ――諒とデート。楽しみすぎる! 焼きそばとかりんご飴とか食べたいなぁ。


 着いたよ、と諒にメッセージを送ると、すぐに返事が返ってきた。後4〜5分で着くらしい。あー、やばい。楽しみ。



 ――なんだけど、今私の犬耳に良からぬことが聞こえてきた。下ネタ系。あー、今回もか。だるいな。


「ねぇねぇお姉さん、今1人? ちょっと俺達と回んない?」


「めっちゃ美人〜、絶対悪い思いはさせないからさ〜」


 案の定、大学生くらいの男2人がニヤニヤしながら話しかけてきた。


 はいはいナンパね。無視無視。


「ちょっと無視しないでよ」


 持っていたスマホを掴まれ、危うく蹴りを入れるとこだった。流石に浴衣ではしたない真似はできない。


「ちょっと、私彼氏が――」


 我慢できずに声を発して、ハッと気づいた。この匂いは。


「――すみません。俺の彼女なんですけど。諦めてください」


 振り向くと、そこにはブチ切れ諒。きゃー、かっこいい! え、なに、浴衣!? 浴衣だー!!


「んだよ彼氏持ちかよ……」


 怖気付いてそそくさと去っていくナンパ男2人を勝ち誇りながら眺め、内心ドッキドキで諒と腕を組んだ。


「ありがとう! かっこよかったよ!」


「お待たせ氷華、大丈夫だった? ……てかめっちゃ可愛いなその浴衣」


 は?? イケメンがよ!! 好き!!


「諒も似合ってるよ!」


 涼しげな無地の青が、諒にぴったりだ。


「ありがとう。私服か迷ったんだけどな。さ、行こうか」


 諒は私と組んでいた腕を解いて、手を繋いできた。勿論恋人繋ぎ。


 あーっそうですよね! こっちの方がいいわ!


 ――あ、わーきゃー心の中で騒ぎまくってたせいで、屋台が目に入ってなかった。せっかくだし、色々やりたいな。


「あ! りんご飴食べたい! あと焼きそば! あ待って綿あめとイカ焼きも! あ、大判焼きある!」


「ちょっといっぺんには多いかな氷華」


 歩き回るうちに、すぐに食べ物で手が塞がってきた。あー早く食べたい。


 多いなんて言った諒もそれなりに買いまくり、手を繋げなくなってきたから、一旦この食べ物達を消費することになった。


「あ、あそこにピクニックみたいに座れる場所があるみたいよ。私レジャーシート持ってきたから」


「流石、用意周到だな」


 ふふん、こんなの事前にリサーチ済み。ちなみにゴミ箱も少ないらしいから、ビニール袋も持ってきておいた。静紅にも渡しといたし。


 良い感じのスペースがあったから、諒と一緒に手際よくレジャーシートを敷いて、並んで座る。


 まずはりんご飴に噛み付いた。ボリボリ、とクセになる音が響く。美味しい。帰ったらりんご飴ASMR聴こ。


「おいしい?」


「うん、すごく!」


 幸せな気分で甘いりんご飴を食べていると、諒が愛おしげな目で見つめてきた。

 う、顔がいいのと食べずらいのと照れくさいのとでなんか爆発しそう。いいですか爆発しても。これが本当のリア充爆発。上手いこと言っちゃった。



「やっぱり氷華は可愛いな」


「や、やだもう、諒もすごくかっこいいよ! 諒も食べなっ」


 めちゃくちゃ照れてるのを紛らわすために、勢いよくイカ焼きにかぶりついた。あ、おいしい。


 諒は焼きそばを食べ始めた。あー、食べてるのもかっこいいな。……というか私って、諒以外に彼氏いたことなかったから気付けなかったけど、だいぶ恋愛脳だよな。ま、いっか。しょうがない、好きなんだから。


「そういえばさっきチラッと静紅ちゃん見かけたよ。氷華と来てたんだな。誰といたかは屋台に隠れて分かんなかったけど、手繋いでたと思う」


「まじ? えー、水萌ちゃんかな」


 あっもしかしたら蓮月く――……


 ――ううん、やめよ。なんか悲しい気分になるし。……大丈夫かな、蓮月くん――じゃなくて、今はこっちに集中しよ。


 まぁそれはそれで、静紅も楽しんでるといいな。


「あ、そうだ。諒、19時から花火あるらしいから、どっかで見ない?」


「そうだな。ここでもいいけど、屋台回りつつ穴場探そう」



 なんてことない会話をしながらぼちぼち食べ終えて、また歩くことになった。


「あ、諒見て射的だって」


「お、いいな。やろうか」


 ふふん、私の運動神経の見せ所ね。


 銃と弾を受け取って、2人並んで構える。


 狙うは、1番でかいあのぬいぐるみ――あやっぱ高級牛肉にしよ。お腹空いた。


 標準を合わせて、引き金を引く。3発撃って2回命中したけど倒れない。あと2発か。


「……えっ、諒すごっ」


 隣を見ると、諒は既にいくつかのお菓子を撃ち落としていた。積み重なってたところを撃って倒したのか。流石だわ。


「氷華、真ん中じゃなくて上部を狙うと落とせやすいよ」


 すると射的を終えた諒が、私の腕と腰に手を回して支えてきた。ヒュー、と周りからからかいが聞こえてくる。


 うわー!! うわー!! 私の心臓がー!!


 震える手で銃を持ち直し、諒のアドバイス通りに上部を狙って、引き金を引いた。お、動いた。


 何とか震えを完全に沈め、最後の弾を詰めて引き金を引くと――倒れた!!


「やったー! ありがと諒!」


「その高級肉ってのが氷華らしいな」


 何故か苦笑しながら言われて首を傾げた。変かな。


「……諒ってやっぱりかっこいい」


「照れるな。氷華のほうが可愛いよ」


 牛肉が入った袋を片手に、私達は再び並んで歩き始めた。諒の横顔を見つめる。



 ――ああ、好きだなぁ。ずっと、一緒にいたい。



「氷華」


 少し人気のないところに出ると、諒が立ち止まった。


「どうしたの――」


 振り返った瞬間、突然諒が私の右手を両手で包み込んできた。いきなりのことに本当に爆破寸前になる。



「俺、やっぱり氷華のことすごく好きだって再認識した。変なこと言うけど、この先、別れないでずっと一緒にいてくれませんか」



 まさかの2回目の告白に、私の顔は更に真っ赤になってしまった。しかも、さっき私が考えたこと。



「……も、勿論! その……私も、諒とずっと一緒にいたいなって思ってたの。……その、これからも、その――」


 ぎゅっ、と諒が私を優しく抱きしめてきた。その温もりに、泣きそうになる。


 私は今まで、こんな優しくて暖かい感情を受けたこと、あったかな。


「――ずっと、一緒にいようね」


 囁いて、我ながらすごく恥ずかしくなった。人気が少ないとはいえ通行人はいるよね。


 慌てて諒と離れて、お互い照れたように笑う。



 ああ、こんな時間が、ずっと続いたら――――――って、えっ!?


 私はあるものを見て固まった。


「どうした氷華――は?」


 諒が振り返って、私と同じく固まった。


「え、え? あれって……」


「うん……」


 待って、あそこの隅っこにいるのって、まさか……!?

 



 次回 「夏祭り 〜静紅編〜」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
最新話まで、拝読いたしました。 作品検索の時点でボーイズラブを見てしまったのは私の失敗です。 作者様が意図的に配置したであろうご馳走を先食いしてしまいました。作中で暗喩と気がついたなら悶え死んだかもし…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。