1-21 「波乱、再び」
キーンコーンカーンコーン――
授業終わりのチャイムが鳴って10分休憩の時間になり、しずくは思い切り伸びをした。
新学年になって早2ヶ月。クラスメイト達の中で、もう自然とグループができている。
そんなグループでは、みんな同性同士で仲良くしていた。
しずく達を除いては。
「おーい静紅、水萌! こっち!」
隣の席同士であるしずくとみいなはニコッと顔を見合わせて、宙と蓮月、それから古田のいる教室の隅っこに向かう。
男子3、女子2という、周りからすれば不思議な構成のグループ。
でもしずくからすれば、ここがいちばん安心できるんだ。
「今日の昼休憩、古田も一緒にお昼食べるよね?」
「お前らがいいなら」
「えー古田も来んの?」
「星宮ずっと酷くね?」
昨日遊んでから古田とは距離が縮まっている。しずくとだけじゃなくて、宙とみいなとも。やっぱり格闘ゲームパワーはすごい。⋯⋯まぁ、蓮月はもう少し時間かかりそうだけど。
3人と話していると、ふと蓮月が何も発言していないことに気づいた。見ると、蓮月は俯いている。⋯⋯嫌な予感がする。
さりげなく辺りを見渡してみると⋯⋯やっぱりそうだ。やけに静かで、視線がこっちに集まっている。
古田もそれに気づいたらしく、急に黙った。みいなと宙は気付かずに話し続けている。
そして、こんな声が聞こえてきた。
「⋯⋯なぁ、霧夜ってさ、この前桐生さんのこと恐喝してたよな。何で一緒にいんの?」
あ⋯⋯と思わず声が出る。
陰口だ。
「てか立花達とも仲悪かったよね、あいつ散々あの3人の悪口言ってなかった?」
「え? 仲直りしたの? あいつが? もしかして桐生さんが美人だから一緒にいるんじゃね?」
「ありえね〜、ダサくねあいつ」
「なんであの人達と一緒にいるわけ?」
「桐生さん言いなりにされてるとか?」
「なんで霧夜あの4人と絡んでんの?」
男子や女子が、口々に言い始めた。
みいなと宙が困ったように顔を見合わせる。蓮月は俯いたままだ。
そして古田はというと、何も言わずにただ下を向いていた。
こんなことを言われるのは無理もない。だって、今まで悪さをしていた人が、急に大人しくなって、そのうえついこの間まで喧嘩してた人達と仲良く喋っているから。
どうすればいいんだろう。せっかく反省したのに、古田が可哀想だ。
――友達を、助けたい。
「皆、ちょっと場所変えよ?」
小さくそう言って、4人に目配せした。
廊下に出ようと、しずく達は教室の後ろをこそこそ通る。
そして教室のドアを出る瞬間、思わずあっと声が出そうになった。
杉本と西田⋯⋯転校初日に古田としずくを脅してきて、そして古田と縁を切った、あの取り巻き2人と、目が合ったのだ。
しかも、しずく達を睨んでいた。
慌てて目を逸らして、何も気付いてないフリをする。
廊下に出ると、蓮月が、ふぅと息をついた。
古田は何も言わずに、下を向いているままだ。
「あの、古田、気にしなくていいよ」
何とか励まそうと、古田の肩に手を置いて言った。古田が少しだけしずくと目を合わせて、すぐそっぽを向く。
「まぁ古田にも非はあるけどな」
宙のいつものからかいに、古田は何も言わない。その反応に宙は口角を下げて、気まずそうに腕を組んだ。
「⋯⋯やっぱ、俺いいや。昼休憩、4人で飯食ってこいよ。⋯⋯⋯⋯あと、無理に俺と仲良くしようとすんな」
少しの気まずい沈黙の後、古田がそうぽつりと呟いた。
「急にどうしたんよ、あんた全然ガラじゃないやん」
みいなが困ったように笑って言った。
「そうだよ。せっかくなんだから一緒に過ごそうよ」
そう言っても、古田は何も言わずに振り返って歩き始めた。
慌てて古田の腕を掴んで引き止める。
「待ってよ! 仲直りしたじゃん!」
「⋯⋯⋯⋯ごめん」
そう言う古田の声は震えていた。
しずくの手をはらって、再び古田は歩き出す。
「ねぇ、古田――」
「桐生、今は放っておこう」
蓮月に止められ、呆然と古田が歩いて行くのを見送った。
「⋯⋯あんなん気にしなくていいのにね」
みいながため息をついてそう言った。
「まぁ、そのうちまた話しかけてくるだろ、多分」
宙の言葉に頷いたけど、何もしなければ、古田はきっと戻ってこない。
どう、しよう。
しずく達が立ち尽くしていると、クラスメイト達が教室から出てきた。しずく達を見ると、気まずそうに目を逸らして、教室の中に戻って行く。
「⋯⋯⋯⋯しずっち、そろそろ戻ろ? 宙の言う通り、また何事もなく接してくるって」
みいなに促され、しずく達はクラスメイト達の視線を受けながら教室に戻り、席に座った。
⋯⋯どうしてこうなっちゃったんだろう。
古田、大丈夫かな。ちゃんと、戻ってくるかな。
またヒソヒソと声が聞こえてくる。
しずくは耳を塞いで、ぎゅっと目を瞑った。
「⋯⋯⋯⋯しずっち」
みいなが頭を撫でてくれる。
お姉ちゃんなら、この状況をどうしただろう。きっと、スマートに解決するんだろうな。
みいなの手の温もりを感じながら、机に突っ伏した。
静紅達と一緒にいることにより、陰口を言われた霧夜。
霧夜は、静紅達に自分と仲良くしなくていいと言い捨てた。
古田とまた話せるのか。静紅達はどういう対応をするのか?
次回 「友達だから」




