分かれていく理由
シオンのブリッジに、三人がいた。
アルヴィ、ナイラ、そしてシオン。
窓の外に星が見えた。この世界の星と、別の世界から混じり込んだ星が、同じ夜空に並んでいた。どれがどちらの星なのか、今となっては誰にも分からない。
エリオが茶を置いて、静かに下がった。
「データを見せます」とシオンが言った。記録板を広げた。細かい数値が並んでいた。「層の振動が、三週間前から変わっています。内向きだったものが、外向きに——つまり、それぞれの方向に向かって、押し出されるような動きになっています」
ナイラが記録板を見た。表情は変えなかった。
「原因は」
「分かりません」とシオンは言った。「ただ——」
「自然なことだと思います」
アルヴィが言った。
二人がアルヴィを見た。アルヴィは窓の外の星を見ていた。
「混ざり合ったものは、いつか分かれる。水と油のように——ではなくて、もっと穏やかに。熱が冷めるように。眠りから醒めるように」
「防ぐことは」とナイラが聞いた。
アルヴィは少し間を置いた。
「世界の理に逆らえたことは一度もありません」
それが答えだった。
ナイラは窓の外を見た。王都の灯りが見えた。川が見えた。橋が見えた。三日後には、この景色のどこかが——消える。
「受け入れるしかない、ということですね」
「そうなります」
シオンはハーブの茶を一口飲んだ。冷めていた。
「記録だけは、残します」と静かに言った。「何が起きたか。どう分かれたか。誰がここにいたか」
アルヴィがシオンを見た。
「歴史学者の習慣ですか」
「ええ」とシオンは言った。「それと——残された人間への、礼儀だと思っています」
誰も何も言わなかった。
窓の外で、星が動いていた。シオン艦隊の灯りが、ゆっくりと弧を描いていた。
しばらくして、アルヴィが立ち上がった。
「リラさんのところへ行ってきます」
「何を話すつもりですか」とナイラが聞いた。
「まだ決めていません」とアルヴィは言った。「でも——あの子は知っておいた方がいい。知った上で、自分で決める子だから」
扉が閉まった。
ナイラとシオンだけが残った。
しばらく、二人とも何も言わなかった。
「後悔はありますか」とシオンが聞いた。珍しい聞き方だった。
ナイラは少し考えた。
「後悔という言葉が、合わない気がします」とナイラは言った。「ただ——惜しい。この世界が、惜しい」
シオンは頷いた。
「同じです」
記録帳を開いた。今夜の星の色を書き留めた。




