↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
掛け軸の向こうは異世界でした~祖父の薙刀道場を再建するため、俺は冒険者になる~  作者: パイカル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/13

第4話 巻物が開いた隠し部屋

 白骨たちが眠る、異様な洞窟。

 その中央には、女物の着物をまとった白骨が一体。

 そして、その周囲には、彼女を守るように座り込んだ鎧武者たち。

 普通の高校生なら、こんな場所に一秒でも長くいたいとは思わないだろう。

 ましてや、こんなところで宝探しを続けようなどとは――。

「……でもなぁ」

 蘭丸は腕を組んだ。

「ここまで来たんだよな」

 洞窟の入口まで戻るという選択肢が、頭をよぎる。

 だが、同時に現実が蘭丸の脳裏に浮かんだ。

 屋根の傷んだ道場。

 古びた畳。

 減っていく祖父の貯金。

 そして、今日の夕食をどうするかという問題。

「……帰れない」

 蘭丸は真顔になった。

「ここまで来て、手ぶらで帰るわけにはいかない」

 怖くないと言えば嘘になる。

 白骨だって怖い。

 暗い洞窟も怖い。

 何より、こんな場所に一人でいること自体が怖い。

 だが――

 貧乏はもっと怖かった。

「よし」

 蘭丸は気を取り直し、周囲を見渡した。

「何か手掛かりがあるはずだ」

 埋蔵金そのものがなくてもいい。

 宝の隠し場所を示す何か。

 古い文字。

 箱。

 扉。

 あるいは、金銀財宝を示す印。

「こういうのって、普通は石碑とか……」

 独り言を呟きながら、洞窟の壁を調べていく。

 右。

 左。

 上。

 下。

 岩を一つ一つ眺めていく。

「……何もないな」

 やがて、白骨たちの近くまで戻ってきた。

 そのときだった。

「ん?」

 壁の一部に、妙なものがあることに気づいた。

「……これ、何だ?」

 近づいてみる。

 そこだけ岩肌が不自然に平らになっていた。

 そして中央には――

 細長い穴。

「…………」

 蘭丸は、手にしていた巻物を見る。

 あらためて見ると巻物には硬い軸がある。

 もう一度、壁を見る。

 巻物を見る。

 壁を見る。

「…………まさか」

 巻物を丸めた状態で、その穴に近づけてみる。

 大きさが、妙に一致している。

「いやいや……」

 そんな偶然があるはずがない。

 そう思いながらも、蘭丸の胸は高鳴っていた。

「……入る」

 試しに巻物の先端を穴へ差し込む。

 すっ。

「…………」

 ぴったりだった。

「…………」

 蘭丸は固まった。

 そして――

「うおおおおおおっ!」

 小さく拳を握りしめる。

「ビンゴだ!」

 根拠のない確信だった。

 だが、今の蘭丸にはそんなことはどうでもよかった。

 巻物をさらに奥へ押し込む。

 すると――

 ゴゴゴゴゴ……。

「え?」

 低い音が洞窟内に響いた。

 蘭丸が振り返る。

 洞窟の壁が――

 ほんのわずかに動いた。

「…………」

 沈黙。

「…………」

 蘭丸の目が輝いた。

「……やっぱり、そういうことか」

 巻物を引き抜く。

 壁は動かない。

 もう一度差し込む。

 ゴゴゴゴ……。

 動いた。

「なるほど」

 蘭丸は納得した。

「鍵だったんだ」

 古びた巻物が、まさかの鍵。

 そんな発想ができる人間は、世の中でもそう多くない。

 だが――

「じゃあ、開けるか」

 蘭丸は両手を壁についた。

「……よいしょ!」

 力を込める。

「ぬぬぬぬ……!」

 びくともしない。

「くっ……!」

 さらに力を込める。

 薙刀の稽古で鍛えた腕に力が入る。

「うおおおおおおっ!」

 ――ゴゴゴゴゴゴッ!

 今度こそ、壁が動いた。

「おおっ!」

 人一人が通れるほどの隙間が開く。

 その向こうには――

「…………」

 蘭丸は言葉を失った。

 そこには、隠し部屋があった。

 長い年月、誰にも知られることなく閉ざされていた空間。

 空気は乾いている。

 そして、その部屋の壁際には――

 無数の武具が並べられていた。

「……甲冑」

 古びた甲冑。

 戦国時代の武将が身につけていたものと思われる。

 その隣には、

「火縄銃……?」

 古式の銃。

 さらに、

 刀。

 槍。

 そして――

「……薙刀」

 蘭丸の目が止まった。

 古びた薙刀だった。

 刀身には長い年月を経た独特の風格があり、柄も古びている。

 だが、不思議なことに保存状態は悪くない。

「こんなもの……」

 蘭丸は思わず息を呑んだ。

 己道流薙刀術を受け継いだ自分だからこそ分かる。

 ただの古い武器ではない。

 相当な年代物だ。

「……じいちゃん、これを知ってたのか?」

 蘭丸は呟(つぶや)いた。

 だが――

 部屋の中には、武具だけではなかった。

「……木箱?」

 奥には、大小さまざまな木箱が積み上げられている。

 何が入っているのかは分からない。

 だが、これまでの状況から考えれば――

「まさか……」

 蘭丸の喉(のど)が鳴った。

 金。

 銀。

 小判。

 宝石。

 夢のような想像が、またしても蘭丸の頭の中を駆け巡る。

「……あるのか?」

 その瞬間だった。

 蘭丸の視線が、部屋の奥へ向いた。

「……ん?」

 壁に、一本の掛け軸が掛けられている。

 武具や木箱とは違い、なぜか妙に綺麗な状態で残されていた。

「掛け軸……?」

 蘭丸はゆっくり近づく。

 そこに描かれていたのは――

 一人の女性だった。

 長い黒髪。

 気品のある顔立ち。

 そして、どこか悲しげな瞳。

「……誰だ?」

 蘭丸は首を傾げた。

 なぜ、この場所に掛け軸があるのか。

 なぜ、これほど丁寧(ていねい)に保存されているのか。

 そして――

 隠し部屋の外に残されていた、女物の着物をまとった白骨との関係は?

 蘭丸には、まだ何も分からなかった。

 ただ一つだけ確かなことがある。

 これは単なる埋蔵金探しではない。

 祖父が遺(のこ)した巻物。

 隠された洞窟。

 白骨となった女と鎧武者たち。

 そして、この秘密の部屋。

 すべてが一本の糸で繋がっている。

「……じいちゃん」

 蘭丸は掛け軸を見つめた。

「一体、何を隠してたんだ?」

 その問いに答える者は、もちろんいない。

 だが――

 積み上げられた木箱の一つから、

 カタン……

 と、小さな音がした。

「…………」

 蘭丸はゆっくり振り返った。

 その瞬間。

 この洞窟に眠る秘密が、静かに動き始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。