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白亜のノート ―元中学生、文明を書く―  作者: 伝説の男前
第三部 文明の礎

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第83話「積み重なる小ささ」

 三線石と光石が完成してから、四ヶ月ほどが過ぎていた。湊は、三十七歳になっていた。


 この間、村には、また、四人の新しい住人が加わっていた。人口は、二百八十九人になっていた。


 ある朝の議会で、ガルが、口を開いた。


「湊、頼みたいことがある」


「なんだ?」


「見張りの者たちに、持ち運べる連絡の道具を、作れないだろうか」


 湊は、この要望に、深く、頷いた。


 確かに、見張り台には、電話が、設置されている。だが、村の外を、実際に、見回る者たちは、何かあっても、見張り台まで、戻らなければ、連絡が、できなかった。


「放送の仕組みを、小さくして、持ち運べるようにするということか」


「そうだ。できるか?」


 湊は、しばらく、考えを、巡らせた。


「以前なら、無理だった。真空管は、大きすぎるし、電気も、たくさん、必要だ」


 湊は、そう言ってから、続けた。


「でも、今なら――三線石が、ある」


 この構想は、レンとイワに、託されることになった。


 最初の課題は、装置全体を、いかに、小さくするかだった。三線石は、確かに、真空管より、はるかに小さい。だが、それ以外の部品――電池、コイル、そして、音を出す部分は、依然として、かさばっていた。


「一つ一つの部品を、全部、小さくしていくしか、ありません」


 レンは、そう言って、根気強く、この課題に、取り組んでいった。


 この、無線機の小型化には、五ヶ月ほどの月日が、費やされることになった。


 完成した装置は、両手で、抱えられる程度の大きさだった。決して、軽くはなかったが、それでも、一人で、持ち運ぶことは、できた。


「これで、村の外からでも、連絡が、できます」


 この無線機は、まず、防衛組織の見回りの者たちに、配備されることになった。恐竜の接近を、その場から、即座に、村に、知らせられる。この効果は、極めて、大きなものだった。


 こうした通信技術の発展と並行して、村では、あの光石の研究も、着実に、進められていた。


 最初に発見された光石は、かすかな、赤みを帯びた光しか、放たなかった。だが、レンとイワは、混ぜ込む物質を、少しずつ、変えることで、異なる色の光を、生み出せることを、次第に、明らかにしていった。


「湊さん、緑が、出ました」


 ある日、レンが、そう、報告した。


 さらに、数ヶ月後。


「今度は……青です」


 湊は、この報告に、深く、驚いた。


 そして、この三つの色が、揃った時。イワが、ある発見を、もたらした。


「湊さん、面白いことに、気づきました」


「なんだ?」


「赤と、緑と、青を、同時に、光らせると……白く、見えるんです」


 湊は、この報告を、実際に、確かめてみた。確かに、三つの小さな光石が、同時に光ると、その光は、確かに、白く、見えた。


「これは……」


 この発見により、村は、ついに、実用的な照明としての、光石を、手に入れることになった。


 これまでの、あの、頼りない灯りの玉とは、比較にならない。明るく、長持ちし、そして、消費する電気も、はるかに少ない。


 この白い光石は、まず、医療所と、学び舎に、優先的に、導入されることになった。


「これで、夜でも、はっきり、見えます」


 シラは、深い、喜びを、その表情に、滲ませていた。


 こうした技術の発展の中で、レンとイワは、さらに、もう一つの、挑戦に、取り組んでいた。


「湊さん、三線石を、もっと、小さくできないでしょうか」


 ある日、レンが、そう、切り出した。


「小さく?」


「はい。それに――一つの石の中に、複数の三線石を、作れないかと」


 湊は、この構想に、深く、頷いた。


「なるほど。それができれば、装置全体が、もっと、小さくなるな」


 この挑戦には、あの光印刷の技術が、極限まで、活用されることになった。極めて、細かい模様を、正確に、砂石の表面に、写し取る。そして、その部分ごとに、性質を、変えていく。


 この研究には、実に、六ヶ月ほどの月日が、費やされた。


 完成したものは、爪の先ほどの大きさの、砂石の欠片だった。だが、その中には、複数の三線石が、確かに、組み込まれ、互いに、繋がっていた。


「これ一つで、これまで、複数の部品が、必要だった働きを、します」


 レンが、そう、説明した。


 湊は、この、小さな欠片を、じっと、見つめていた。


「レン、イワ……お前たちは、俺の想像を、超えたな」


 こうした、極めて、先端的な技術の発展と並行して、村では、より、日々の暮らしに、直結する分野でも、着実な進展が、あった。


 ミオが、率いる農政では、収穫量を、さらに向上させるための、取り組みが、続けられていた。


「湊さん、土に、力を戻す方法を、もっと、確かなものに、したいんです」


 ミオは、そう、切り出した。


 これまで、村では、輪作と、家畜の糞を用いた肥料で、土の力を、保ってきた。だが、農地が広がり、収穫量への要求が高まる中で、より、効果的な方法が、求められていた。


 湊は、この課題について、記憶を、たぐり寄せた。


「確か……植物が育つには、いくつかの、決まった成分が、必要なはずなんだ」


 湊は、そう言いながら、続けた。


「一つは、窒素。それから、リンと、カリウム、だったと思う」


 ミオと、シラは、この曖昧な手がかりをもとに、様々な物質を、試していった。


 この探索には、四ヶ月ほどが、費やされた。最終的に、彼女たちは、特定の鉱石を、粉砕したものと、動物の骨を、焼いて粉にしたもの、そして、灰を、組み合わせることで、確かに、作物の育ちが、良くなることを、見出していった。


「これが、湊さんの言っていた、成分に、当たるのかもしれません」


 ミオは、そう、推測していた。


 同時に、ミオは、作物を、害虫から守る方法についても、研究を、進めていた。


 ただし、この点について、湊は、極めて、慎重な姿勢を、取っていた。


「ミオ、虫を、殺す薬は……使い方を、間違えると、恐ろしいことになる」


 湊は、そう、繰り返し、伝えた。


「人にも、害があるということですか」


「その通りだ。それに――土や、川にも、残り続けて、長い間、悪い影響を、与えることがある」


 この助言を受け、ミオは、強い薬に頼るのではなく、虫が嫌う植物を、作物の間に、植えるという方法を、中心に、研究を、進めていくことになった。


 こうした農業の発展と並行して、村では、金属の生産体制にも、大きな変化が、起きていた。


 これまで、村の製鉄は、比較的、小規模な炉で、少量ずつ、行われてきた。だが、鉄道の建設や、建築の需要が、爆発的に、増える中で、この体制では、まったく、追いつかなくなっていた。


「湊さん、もっと、大きな炉が、必要です」


 レンは、そう、訴えた。


 この、大規模な製鉄施設――村では「鉄場てつば」と呼ばれることになる施設の建設には、ドウと、レンが、協力して、当たることになった。


 だが、この建設には、極めて、慎重な配慮が、必要とされた。かつての、レイの事故。あの教訓を、誰も、忘れては、いなかった。


「安全な手順を、最初から、徹底的に、決めておきましょう」


 レンは、そう言って、タギから受け継いだ、安全への配慮を、この新しい施設にも、確実に、組み込んでいった。


 この施設の建設には、七ヶ月ほどが、費やされた。完成した鉄場は、これまでの、十倍以上の量の、鉄と鋼を、生産できるようになった。


 こうした、大規模な工業の発展と共に、村では、より、精密な分野でも、着実な進展が、あった。


 その一つが、バネだった。


「湊さん、これを、見てください」


 ある日、レンが、細く、螺旋状に巻かれた、鋼の線を、湊に、見せた。


「これは?」


「押すと、縮んで……離すと、元に戻ります」


 湊は、実際に、それを、押してみた。確かに、確かな弾力を持って、元の形に、戻る。


「これが、あれば……色々なものに、使えるはずです」


 実際、このバネは、その後、村の様々な装置に、応用されていくことになった。時計の動力。車両の緩衝。そして、様々な機械の、細かな部品として。


 この、精密な部品の製作技術は、村の工業を、さらに、一段、高い水準へと、押し上げていくことになった。


 湊は、記録帳に、この一連の発展を、丁寧に、書き記した。


『三線石を用いた、持ち運べる無線機を開発。五ヶ月を要した。防衛組織の連絡体制が、大きく向上』

『赤・緑・青の光石を、それぞれ実現。三色を組み合わせることで、白い光を得ることに成功』

『一つの石の中に、複数の三線石を組み込む技術を確立。六ヶ月を要した』

『肥料の成分を特定し、施肥の技術を確立。害虫対策は、強い薬ではなく、植物の組み合わせによる方法を選択』

『大規模製鉄施設「鉄場」が完成。七ヶ月を要した。生産量は、従来の十倍以上』

『バネの製作技術を確立。精密機械の分野が、大きく前進』


 夕暮れ、湊は、白い光石に照らされた、医療所の中を、見つめていた。かつて、火の灯りだけが、頼りだったこの村が、今、こうして、明るく、照らされている。


 湊は、三十七歳のまま、この日を終えた。この世界に来てから、二十三年ほどが、過ぎていた。


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【第83話 時点 文明発展状況】

湊37歳/漂着後 23年

人口:289人

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01 生存・サバイバル ★★★★★ 継続中

02 食料・農業    ★★★★★ 肥料技術を確立、収穫量が大幅向上

03 畜産・動物    ★★★★★ 継続中

04 漁業・水産    ★★★★★ 継続中

05 狩猟・採集    ★★★★★ 継続中

06 水・衛生     ★★★★★ 継続中

07 医療・薬学    ★★★★★ 白色照明の導入により、夜間の医療行為が可能に

08 住居・建築    ★★★★★ 継続中

09 土木・インフラ  ★★★★★ 継続中

10 火・エネルギー  ★★★★★ 継続中

11 鉱業・金属    ★★★★★ 大規模製鉄施設「鉄場」が完成、生産量は従来の十倍

12 製造・工業    ★★★★★ 無線機、集積化された三線石、バネの製作技術を確立

13 科学・技術    ★★★★★ 半導体の集積化という、極めて高度な領域に到達

14 言語・文字・出版 ★★★★★ 継続中

15 教育・研究    ★★★★★ 白色照明により、夜間の学習が可能に

16 経済・商業    ★★★★★ 継続中

17 政治・法律・行政 ★★★★★ 継続中

18 外交・交通・情報 ★★★★★ 携帯無線により、村外での通信が可能に

19 軍事・防災・治安 ★★★★★ 見回りの連絡体制が飛躍的に向上

20 文化・娯楽・思想 ★★★★★ 継続中

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