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白亜のノート ―元中学生、文明を書く―  作者: 伝説の男前
第二部 村を築く

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第60話「青銅の使者」

 宗が生まれてから、四ヶ月ほどが過ぎていた。湊は、二十五歳になっていた。


 ある朝、河口拠点――この頃には、村の交易の窓口として、小さな集落が、形を成しつつあった――から、急を告げる伝令が、駆け込んできた。


「湊さん、海の彼方から、大きな船団が、こちらに向かってきています!」


 湊は、すぐに、ガルと共に、河口へと向かった。


 河口に到着した湊が目にしたのは、これまで村やヤズの集団が持っていたどんな舟とも、比較にならない規模の船だった。何本もの帆を張り、船体は、木材だけでなく、金属らしき部材で、補強されている。


「あれが……アガルか」


 湊は、緊張を押し隠しながら、船団を、見つめた。


 船団から降り立ったのは、統制の取れた動きを見せる、一団だった。彼らの先頭には、ひときわ豪華な装飾を身にまとった、壮年の男が、立っていた。


 湊は、前へと進み出た。ガルが、無言のまま、湊の隣に立ち、警戒を怠らない構えを、見せていた。


 男は、湊たちを見回すと、意外なことに、村の共通語に近い言葉で、口を開いた。


「私は、アガルの使者である」


 湊は、その言葉に、驚きを隠せなかった。この使者は、すでに、湊たちの村の存在と、その言葉について、事前に情報を得ているようだった。


「お前が、この地に、これほどの発展をもたらしたという者か」


 男の問いに、湊は、慎重に、答えた。


「私は、佐倉湊と申します。この村を、率いております」


 使者は、湊の全身を、興味深そうに、眺めた。


「思ったより、若いな」


 湊は、その言葉に、少し、緊張しながらも、姿勢を崩さなかった。


「歳は、若いかもしれません。ですが、この村の者たちと共に、十年かけて、少しずつ、築いてきました」


 使者は、やがて、自らの目的を、語り始めた。アガルという国は、青銅の技術を核に、すでに広い領域を治める、確かな勢力として、成立しているという。


「我らは、周辺の集団との交易や、時には、より強い形での統合を通じて、その版図を、広げてきた」


 湊は、この言葉の裏に潜む、複雑な意図を、感じ取っていた。


「そして、今回の来訪は……」


「貴殿らの村の存在を、確認し、今後の関係性を、見極めるためである」


 湊は、この言葉に、深く頷いた。友好的な交易関係を築く可能性もあれば、あるいは、アガルという大きな勢力圏に、この村を組み込もうとする意図が、隠されている可能性も、否定できなかった。


 湊は、使者を、村へと招き入れることにした。もちろん、警戒を完全に解いたわけではない。ガルをはじめ、村の若者たちが、それとなく、周囲を固めながら、一行を、村の中心部へと、案内していった。


 使者は、村の中を歩きながら、次第に、その表情に、驚きの色を、浮かべ始めた。


「これは……石畳の道か」


「はい。雨の日でも、歩きやすいように」


「あの建物の窓は、何だ。光を通しているように見えるが」


「ガラス、と呼んでいます。砂を高温で溶かして、作ったものです」


 使者は、湊の説明を、食い入るように、聞いていた。そして、公衆浴場、井戸のポンプ、そして、街灯を目にするたびに、その驚きは、深まっていくようだった。


 議事堂で、湊は、使者に、村で作られた貨幣――輪を、見せた。


「これは……随分と、精巧なものだな。重さも、揃っている」


「はい。一枚一枚、確かめながら、作っています」


 使者は、しばらくの間、黙って、その輪を、手のひらで、転がしていた。それから、湊のほうを、見た。


「率直に、言おう。我らは、この村を、これまで、小さな未開の集落だと、考えていた」


「そうでしたか」


「だが、実際に来てみて……予想と、大きく違うことが、わかった」


 使者の言葉には、明確な敵意も、明確な友好の意も、感じられなかった。それでも、湊は、この人物が、村を、これまでとは違う目で、見始めていることを、感じ取っていた。


「王に、このことを、報告しよう」


 そう言い残すと、使者は、一団を率いて、船へと戻っていった。


 湊は、その船影が完全に見えなくなるまで、河口に、立ち尽くしていた。


 その夜、湊は、長老会議を招集した。


「アガルは、俺たちのことを、これまでとは、違う目で、見始めている。これは、良いことにも、悪いことにも、なり得る」


 ガルが、率直に、口を開いた。


「向こうが、こちらを、脅威と感じたら……面倒なことに、なるかもしれない」


「その可能性は、ある。だからこそ、これから、慎重に、対応していく必要がある」


 湊はレポート用紙に、この日の出来事を、書き記した。


『アガルより、正式な使者が来訪。村の技術水準に、明らかな驚きを示した』

『友好とも敵対とも判断できない、慎重な接触。今後の関係構築が、村の未来を左右する重大な局面になる』


 湊は、二十五歳のまま、この日を終えた。この世界に来てから、十年十ヶ月ほどが、過ぎていた。


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【第60話 時点 文明発展状況】

湊25歳/漂着後 10年10ヶ月

人口:128人

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01 生存・サバイバル ★★★★☆ 継続中

02 食料・農業    ★★★★☆ 継続中

03 畜産・動物    ★★★★☆ 継続中

04 漁業・水産    ★★★★☆ 継続中

05 狩猟・採集    ★★★☆☆ 継続中

06 水・衛生     ★★★★★ 継続中

07 医療・薬学    ★★★★☆ 継続中

08 住居・建築    ★★★★☆ 継続中

09 土木・インフラ  ★★★★☆ 継続中

10 火・エネルギー  ★★★☆☆ 継続中

11 鉱業・金属    ★★★★★ アガルの青銅技術に触れる

12 製造・工業    ★★★★★ 継続中

13 科学・技術    ★★★★★ 継続中

14 言語・文字・出版 ★★★★★ 継続中

15 教育・研究    ★★★★☆ 継続中

16 経済・商業    ★★★★★ 貨幣の精度が、対外的にも高く評価される

17 政治・法律・行政 ★★★★☆ 継続中

18 外交・交通・情報 ★★★★★ 大国アガルとの初接触。本格的な外交の必要性が浮上

19 軍事・防災・治安 ★★★★☆ 大国の存在を前に、防衛体制の見直しが急務に

20 文化・娯楽・思想 ★★★★★ 継続中

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