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白亜のノート ―元中学生、文明を書く―  作者: 伝説の男前
第二部 村を築く

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第46話「灯りの届く先」

 電気という現象の発見から、三ヶ月ほどが過ぎていた。湊は、十八歳から十九歳になろうとしていた。


 湊は、シラと共に、この電気という現象を、さらに深く探る日々を、送っていた。ある夜、湊は、工房で、シラと向かい合いながら、記憶の糸を、たぐり寄せていた。


「シラ、電気を流すと、光る物質が、あったはずなんだ。確か、発光ダイオードとか、呼ばれていたはずだが……」


「どんな、仕組みなんですか」


 湊は、しばらく、考え込んだ。


「それが……よく、わからないんだ。半導体っていう、すごく精密な、目に見えないくらいの加工をした、物質が使われていた気がする」


 湊は、正直に、自分の記憶の限界を、シラに、伝えた。


「今の俺たちの技術じゃ、たぶん、無理だと思う。すまない、期待させておいて」


 シラは、少し、残念そうな表情を、見せたが、すぐに、気を取り直したように、言った。


「でも、湊さんは、いつも、そう言った後に、別の方法を、見つけてきましたよね」


 湊は、その言葉に、思わず、笑った。


「そうだな。もう一つ、試せる方法が、あるかもしれない」


 湊が、思い出したのは、細い金属の線に電気を流し、その熱で光を放たせる、白熱電球に近い原理だった。


「金属の線を、電気で、熱くして、光らせるんだ。ただ、これまでの試みでは、すぐに、線が、焼き切れてしまっていた」


 湊は、イワと、タギを、呼び出した。


「線を、燃え尽きさせないためには、空気から、遮断する必要が、あると思うんだ」


 イワが、これまでのガラス技術を、応用することになった。内部を空洞にした、小さなガラスの玉を、作り上げ、この玉の中に、細い金属の線を通し、内部の空気を、できる限り、抜き取ってから、封をする。


 空気を抜き取る、という工程は、極めて、困難だった。村には、真空を作るような、精巧な道具は、まだ、なかった。イワとタギは、ガラス玉の中の空気を、燃焼によって、薄めるという、原始的な方法を、試みた。


 この試みには、ひと月ほどが、費やされた。


「湊さん、光りました……! でも、すぐに、消えてしまいます」


 最初の試みで、金属の線は、これまでよりも、わずかに長く、赤みを帯びた光を、放つ様子が、確かに、観察された。それでも、光は、ごく弱く、数十を数える間もなく、線は、焼き切れてしまった。


 湊は、この結果を、素直に、受け止めた。


「まだ、実用には、程遠い。でも、光ることは、確かに、確認できた」


 この灯りの玉の研究は、以降も、細々と、しかし、着実に、続けられていくことになった。


 電球の研究と並行して、湊は、この微弱な電気を、少しでも長く蓄えておく方法についても、思いを巡らせていた。


「シラ、この電気を、蓄えておく仕組みも、作れないだろうか」


 湊とシラは、これまでの、銅と亜鉛に近い金属、そして酸性の果実の汁を使った実験を、さらに発展させることにした。複数の土器の器を、直列に繋ぎ、金属板の組み合わせや、液体の濃度を、様々に変えながら、より安定して、より長く、電気を蓄えられる組み合わせを、根気強く、探っていった。


 この試みも、三週間ほどの時間を、要することになった。ある日、ようやく、湊とシラは、ある程度、安定して電気を蓄え、取り出せる、簡素な蓄電の仕組みを、作り上げることに、成功した。


 実際に村の夜を照らす照明としては、湊は、この電気の技術とは別に、これまで培ってきた、より確かな技術――油を用いた灯りを、街灯として整備することを、優先的に進めることにした。


「ドウ、道の要所要所に、油の灯りを置く台を、作れないだろうか」


「わかりました。夜警の者が、決まった時間に、灯していく仕組みに、しましょう」


 この街灯の整備には、ふた月ほどが、費やされることになった。この整備により、夜間の村の安全性は、大きく向上した。


 こうした、電気や灯りの研究と並行して、湊は、これまで日時計で培ってきた、時と角度の知識を、さらに体系立てて、深めていくことにも、力を注いでいた。


「ケイ、日時計の影の動きから、もっと、確かな計算の方法を、見つけられないだろうか」


 湊とケイは、実際に、様々な角度と長さの直角三角形を、地面に描き、その辺の比率を、根気強く、測定し、記録していった。


 この地道な作業を通じて、少しずつ、角度と辺の比率の間に、確かな規則性があることが、実際のデータとして、積み上げられていった。この試みには、三週間ほどが、費やされた。


 この知識は、やがて、ドウの測量技術に、大きな精度の向上を、もたらすことになった。


 湊はレポート用紙に、この一連の、地道な探求の記録を、丁寧に書き記した。


『電気で発光する精巧な物質の再現は、現在の技術では困難と判断。原始的な灯りの玉を開発、実験段階』

『化学反応による、簡素な蓄電の仕組みを確立』

『油を用いた街灯を整備し、夜間の村の安全性が向上』

『角度と辺の比率の規則性を、測量の実務に応用開始』


 夕暮れ、湊は、新しく設置された街灯に、灯りがともされていく様子を、見つめていた。一つ、また一つと、道沿いに、温かい光が、灯っていく。


 湊は、その光景に、静かな満足感を覚えながらも、心の奥には、まだ実現には遠い、あの小さな灯りの玉――ガラスの中で、儚く光を放った、あの実験の記憶を、大切にしまい込んでいた。


 湊は、十九歳になった。この世界に来てから、四年十ヶ月ほどが、過ぎていた。


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【第46話 時点 文明発展状況】

湊19歳/漂着後 4年10ヶ月

人口:79人

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01 生存・サバイバル ★★★★☆ 継続中

02 食料・農業    ★★★★☆ 継続中

03 畜産・動物    ★★★★☆ 継続中

04 漁業・水産    ★★★★☆ 継続中

05 狩猟・採集    ★★★☆☆ 継続中

06 水・衛生     ★★★★☆ 継続中

07 医療・薬学    ★★★☆☆ 継続中

08 住居・建築    ★★★★☆ 継続中

09 土木・インフラ  ★★★★☆ 街灯の整備により、夜間の安全性が向上

10 火・エネルギー  ★★★★☆ 継続中

11 鉱業・金属    ★★★★☆ 継続中

12 製造・工業    ★★★★☆ 継続中

13 科学・技術    ★★★★☆ 電球・蓄電の基礎研究が進展、三角関数の基礎を測量に応用

14 言語・文字・出版 ★★★★☆ 継続中

15 教育・研究    ★★★★☆ 角度と比率の知識が、測量教育にも波及

16 経済・商業    ★★☆☆☆ 継続中

17 政治・法律・行政 ★★★★☆ 継続中

18 外交・交通・情報 ★★★★☆ 継続中

19 軍事・防災・治安 ★★★☆☆ 継続中

20 文化・娯楽・思想 ★★★★☆ 継続中

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