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白亜のノート ―元中学生、文明を書く―  作者: 伝説の男前
第三部 文明の礎

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第104話「映す、映される」

 前回の会議から、ちょうど、ひと月が過ぎていた。湊は、四十五歳のままだった。


 この間、村には、八人が加わっていた。うち、五人が、この村で生まれた赤ん坊だった。人口は、四百十五人になっていた。


---


 この日の会議は、まず、前回の課題の、確認から、始まった。


 **大型船の建造――レン、ナギ**


「湊さん、船台の建設が、終わりました」


 レンは、そう、報告した。


「船台?」


「はい。あれだけの大きさの船を、作るには――まず、それを、載せる台が、必要です」


 レンは、そう、説明した。


「それに――完成した後、どうやって、海に、下ろすか。それも、考えておかなければ、なりません」


 湊は、この指摘に、深く、頷いた。


「なるほど。作ることばかり、考えていた」


「はい。ですが――そこは、ドウさんが、良い案を、出してくれました」


 ドウが、続けて、説明した。


「傾斜を、つけた台の上で、作ります。完成したら――支えを、外して、そのまま、滑らせる」


 湊は、この案に、深く、感心した。


「よく、考えたな」


---


 **有人飛行――宗**


「翼の付け根ですが、鋼で、補強してみました」


 宗は、そう、報告した。


「結果は?」


「折れなくなりました。ですが――」


 宗は、そう言って、少し、表情を、曇らせた。


「重くなりすぎて――浮かなくなりました」


 湊は、この報告に、思わず、苦笑した。


「難しいものだな」


「はい。強くすれば、重くなる。軽くすれば、弱くなる」


 宗は、そう、答えてから、続けた。


「この、釣り合いを、探るしか、ありません」


「焦るな。何年、かかってもいい」


 湊は、そう、静かに、告げた。


---


 **北方鉄道――ドウ**


「北への路線ですが、測量を、始めました」


 ドウは、そう、報告した。


「どうだ、地形は」


「思ったより、平らです。ただ――途中に、大きな川が、あります」


「橋が、必要ということか」


「はい。これまでで、最も、長い橋になります」


---


 **多国間協議の準備――ナギ**


「参加を表明した集落が、六つになりました」


 ナギは、そう、報告した。


「増えたな」


「はい。噂が、広まっているようです」


 ナギは、そう、答えてから、続けた。


「ただ――一つ、問題が」


「なんだ?」


「会合を、どこで、開くか。この村で、と、決めましたが……六つの集落から、人が来るとなると。泊まる場所が、足りません」


 湊は、この指摘に、深く、頷いた。


「なるほど。それは、考えていなかった」


 この課題は、その場で、ドウに、託されることになった。会合までに、来訪者のための、宿泊の施設を、整えることが、決定された。


---


 これらの報告が、終わった後。


 湊は、この日の、最初の議題を、提起した。


「一つ、気になっていることが、ある」


「なんでしょう」


「今、村の中の移動は――どうなっている?」


 この問いに、しばらく、沈黙が、続いた。


「多くは、歩いています」


 ロタが、そう、答えた。


「二輪車を、持っている者も、いますが……数は、限られています」


「なぜ、限られている?」


「作る数が、少ないからです」


 レンが、そう、答えた。


「今は、注文があった時に、一台ずつ、作っています」


 湊は、この報告を、深く、受け止めた。


「レン、あれを――もっと、たくさん、作れないだろうか」


「作れます。ですが――なぜ、今、それを?」


 湊は、しばらく、考えを、巡らせてから、答えた。


「村が、広くなりすぎたからだ」


 湊は、そう、答えた。


「昔は、村の端から端まで、歩いて、四半刻ほどだった。だが、今は――半刻以上、かかる」


 湊は、そう、続けた。


「特に、南の住宅地から、東の農地までとなると……相当な、時間だ」


 この指摘に、会議の場が、ざわめいた。


「確かに、そうですね」


 トウが、そう、つぶやいた。


「私も、毎日、随分と、歩いています」


「だから――誰もが、二輪車を、持てるようにしたい」


 湊は、そう、告げた。


 この構想のもと、レンの工房では、二輪車の量産に、本格的に、着手することになった。


 これまで、一台ずつ、手作業で、作られていたものが――部品ごとの、分業と、規格の統一により、大幅に、効率化されることになった。


 同時に、湊は、自走車についても、同様の方針を、示した。


「自走車も、もっと、増やそう」


「はい。ただ――」


 レンは、そう言って、少し、躊躇した。


「なんだ?」


「今の道では、これ以上、車が増えると――危ないかもしれません」


 湊は、この指摘に、深く、頷いた。


「そうだな。道も、広げなければ、ならない」


 この課題は、ドウに、託されることになった。


 村の主要な道を、これまでの、倍の幅に、広げる。そして――人が歩く場所と、車が走る場所を、はっきり、分ける。


「それに――決まりも、必要だと思います」


 ロタが、そう、提案した。


「決まり?」


「はい。どちら側を、走るか。どこで、止まるか。そうしたことを、決めておかなければ――必ず、ぶつかります」


 湊は、この提案に、深く、感心した。


「よく、気づいた。その通りだ」


 この、交通の決まりの策定も、その場で、決定された。


---


 この日の会議では、さらに、探究の舎から、二つの、重要な報告が、行われた。


 最初の報告は、イワからだった。


「湊さん、あの、液体を使った表示ですが」


 イワは、そう、切り出した。


「進んだのか?」


「はい。ようやく――見つけました」


 イワは、そう言って、小さな、透明な板を、机の上に、置いた。


 その板の中には、わずかに、濁ったような、液体が、封じられていた。


「これに、電気を、通すと――」


 イワが、そう言って、細い線を、繋ぐと――その部分だけが、確かに、暗く、変化した。


 湊は、この光景を、しばらくの間、じっと、見つめていた。


「これは……」


「不思議な液体です」


 イワは、そう、説明した。


「普通の液体のようで――でも、中の、細かい粒が、電気で、向きを、変えるようなのです」


 湊は、この報告に、深く、感心した。


「よく、見つけたな」


「探究の舎の者たちと、二年近く、探し続けました」


 イワは、そう、答えてから、続けた。


「この液体を、細かく、区切って――一つ一つに、電気を、通せば」


「表示が、できるということか」


「はい。しかも――光石より、はるかに、薄く、電気も、少なくて済みます」


 湊は、この報告の、重要性を、深く、理解していた。


「イワ、これは……大きな発見だ」


 この、新しい表示装置の開発は、その日から、本格的に、始められることになった。


---


 二つ目の報告は、レンからだった。


「湊さん、光を、電気に変える素子ですが」


 レンは、そう、切り出した。


「進んだのか?」


「はい。できました」


 レンは、そう言って、小さな、砂石の欠片を、取り出した。


「これに、光を、当てると――電気が、生まれます」


 レンは、そう言って、実演してみせた。確かに、光を当てると、繋がれた針が、振れる。


「光が、強いほど――電気も、強くなります」


 湊は、この報告に、深く、身を、乗り出した。


「レン、それを――たくさん、並べられるか」


「並べる、ですか」


「そうだ。細かく、たくさん。そして――それぞれの、電気の強さを、別々に、読み取る」


 レンは、この構想の意味を、しばらく、考えていた。


 やがて、はっとした表情を、見せた。


「まさか――写真を」


「その通りだ」


 湊は、そう、頷いた。


「板に、写すのではない。光の強さを、そのまま、数として、記録する」


 この構想に、レンは、深く、興奮した様子を、見せた。


「それは……できるかもしれません」


 レンは、そう、答えてから、続けた。


「今の光印刷なら――極めて、細かく、並べられます」


「なら、やってみてくれ」


 この、電子的な撮影装置の開発も、その日から、始められることになった。


---


 この日の会議の後、湊は、各分野の状況を、いつものように、確かめていった。


 **農業――ミオ**:干拓地の豆、順調に生育。


 **医療――シラ**:血液の第二分類、判別方法を、ほぼ確立。


 **経済――トウ**:大型船への出資、必要額の六割が、集まった。


 **教育――ケイ**:探究の舎、在籍五十五名。


 **防衛――ガル**:新しい地図に基づく、警戒体制の再編、完了。


 湊は、記録帳に、この日の出来事を、丁寧に、書き記した。


『大型船の船台が完成。傾斜を利用した進水の方法を、ドウが考案』

『有人飛行、強度と重量の釣り合いという、根本的な課題に直面』

『北方鉄道の測量を開始。これまでで最も長い橋が、必要になる』

『多国間協議の参加が、六集落に。宿泊施設の整備が、新たな課題』

『二輪車と自走車の量産に着手。道路の拡幅と、交通の決まりの策定も、同時に決定』

『イワが、電気で性質が変わる液体を発見。二年近い探索の末』

『レンが、光を電気に変える素子を完成。これを、細かく並べることで、電子的な撮影装置を、目指す』


 夕暮れ、湊は、あの、小さな液体の板を、じっと、見つめていた。


 湊は、四十五歳のまま、この日を終えた。この世界に来てから、三十一年三ヶ月ほどが、過ぎていた。


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【第104話 時点 文明発展状況】

湊45歳/漂着後 31年3ヶ月

人口:415人(うち、この期の新生児5名)

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01 生存・サバイバル ★★★★★ 継続中

02 食料・農業    ★★★★★ 干拓地の豆が順調に生育

03 畜産・動物    ★★★★★ 継続中

04 漁業・水産    ★★★★★ 継続中

05 狩猟・採集    ★★★★★ 継続中

06 水・衛生     ★★★★★ 継続中

07 医療・薬学    ★★★★★ 血液の第二分類の判別方法を、ほぼ確立

08 住居・建築    ★★★★★ 来訪者用の宿泊施設を計画中

09 土木・インフラ  ★★★★★ 道路の拡幅と、交通規則の策定に着手

10 火・エネルギー  ★★★★★ 継続中

11 鉱業・金属    ★★★★★ 継続中

12 製造・工業    ★★★★★ 二輪車・自走車の量産に着手。大型船の船台が完成

13 科学・技術    ★★★★★ 液晶物質と、光電変換素子を発見

14 言語・文字・出版 ★★★★★ 継続中

15 教育・研究    ★★★★★ 探究の舎、在籍55名。二年越しの探索が実を結ぶ

16 経済・商業    ★★★★★ 大型船への出資、六割が集まる

17 政治・法律・行政 ★★★★★ 交通の決まりの策定に着手

18 外交・交通・情報 ★★★★★ 多国間協議の参加が、六集落に拡大

19 軍事・防災・治安 ★★★★★ 新地図に基づく警戒体制の再編が完了

20 文化・娯楽・思想 ★★★★★ 継続中

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【次話への持ち越し】液晶表示装置の開発、電子撮影装置の開発、二輪車の量産、道路拡幅――これらは、次話以降で確認される

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