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悪役令嬢は婚約破棄10秒前に死に戻り、本当の恋を見つけて生き残る  作者: しのギドラ


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9話 改めて交わされた約束、夕刻の怪しい影

 私は一つずつテオドア様に説明をした。


 ジェイコブとの騒動で、死に戻るようになったこと。

 死ぬことが確定する直前に戻ること。

 そして、先ほども何者かに、王宮で殺されたことを。


「信じられないですよね。このような話……」


 自分自身でさえ信じられないような、かなり無理がある能力だ。

 悪女の私がこんな夢想話をし始めたら、きっと社交界の誰もが頭がおかしくなったと思うだろう。


 だけれども、彼なら、もしかしたら信じてくれるかもしれない。

 わずかな望みをかけて、私は身を震わせながらテオドア様に視線を向ける。


「王宮で私達と会った後に殺されたのか……。すまない、君に迫る危機に気づけなかった」


「え……?」


「私がいれば、きっとシャーロット嬢を守ることができた。……怖かっただろう。今まで一人で頑張り続けていたのだな」


 テオドア様の労わるような優しい言葉に、堰き止めていた恐怖が込み上げてくる。

 涙が一筋、また一筋と頬を伝って落ちていく。


「テオドア様……信じてくださるのですね……っ」


「もちろんだ。君がこの場で嘘を言うとは思えないし、何より君の言葉の色が……いや、今は言わないでおこう」


 テオドア様は椅子から立ち上がり、私のそばまで歩み寄ってくれた。

 濡れた頬を指先でぬぐいながら、柔らかに、安心させるように微笑んでくれた。


「これからは、私が君のそばにいる。シャーロット嬢、私に君を守らせてくれ」


「テオドア様……」


「たとえ時間が戻るとしても、君を死なせたくない。一緒に、運命に立ち向かおう」


 指先から伝わる温もりが、私のがんじがらめになった心を解していく。

 もう一人じゃないという事実が、こんなにも胸を楽にしてくれるとは思わなかった。


「はい……。ありがとうございます……! あの、もし全てが終わったら、約束通り……植物園に行きましょう」


「……植物園?」


「え……、あ……っ!」


 私は慌てて自身の口を塞いだ。

 植物園に誘われたのは死に戻り前のこと。

 今の彼とは、そのような約束をしていないことを遅まきながら思い出した。


「も、申し訳ありません……! 今のは忘れてください!」


「……そうか、なるほど。今日、君を植物園に誘おうと思っていたんだ。死に戻る前、おそらく私が誘っていたのだな?」


「は、はい……」


「いや、気にしないでほしい。それは君が嘘をついていないという何よりの証拠だろう。だが……自分自身に先を越されたようで少し複雑なだけなんだ」


 テオドア様は困ったような笑みを浮かべながら、私の膝に置かれた手を取った。


「改めて、今の私が君を誘おう。全てが終わったら、私と植物園に行ってくれないだろうか?」


「はい……ぜひ!」


 握られた手を重ね合わせ、お互いの体温を交わらせた。

 この人になら、私の命運を託せる。

 一緒に立ち向かうことができる。

 宿の密やかな一室で、私はテオドア様と揺るぎない信頼を築き上げた。


「ひとまず、侯爵邸まで送ろう。君の実家まで行けば、下手人も簡単には手を出せないはずだ」


「そうですね……」


「公爵家からも護衛を付けよう。本当はずっと君のそばにいたいが、未婚の貴族同士がいるのは不埒に思われてしまうかもしれない。今しばらく我慢してくれ」


「え!? あ、そうですね……」


 秘密を共有したせいだろうか。

 何だかテオドア様との距離感が、より近くなったような気がする。

 けれど決して嫌ではなく、むしろその温もりを、私自身心地よく感じていた。


 テオドア様は宿を出てからも、私の手を離すことなく、私の歩幅に合わせて歩いてくれた。


(テオドア様の手。大きくて、触れているだけで心穏やかになる……)


 死が迫っている状況だと言うのに、彼ともっとずっとこうしていたいと思ってしまう。

 赤く染まっているであろう顔を隠すように、私は視線をうつむかせた。


 その時だった。

 テオドア様の足が、体が揺れるほど急に止まった。


「テオドア様……?」


「シャーロット嬢。私の背中へ」


 テオドア様がその背後へ、私の手を促すように引いた。

 夕刻ということもあり、商業区から貴族街へと続く道は人気が少ない。

 私は状況を理解できないながらも、テオドア様の背中を緊張感をもって見上げた。


「そこにいるのは誰だ。……隠れていても、いるのは分かっている」


「……!?」


 テオドア様が、細い路地へと続く角に視線を向けている。

 彼の声に呼応するように、夕影から背丈の高い男が現れた。

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【代表作】→「悪役令嬢は全員生存エンドを目指す」
◆累計ページビュー63,000pv超え感謝◆

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あらすじ→「全員生き残るか、一人残らず死ぬか」その二択しかない極限の乙女ゲーム。
前世の記憶を取り戻したルナリアは、自分が"全滅エンド"を招く悪役令嬢だと知る。
導き出した答えは、誰とも関わらず、孤独に生きること。
そう誓った矢先に出会ってしまったのは、攻略対象——公爵令息のグレン。
父の虐待を見抜き、どんなに突き放しても離れない彼に、距離を取ろうとするほど執着されていく。
やがて暴かれる、最初から大切な人を"殺す力"を宿していたという残酷な真実。
それでも彼は、皆の前で誓った。
「生涯をかけて君を幸せにする」と。
虐げられた令嬢×公爵令息。
作品ページはこちら→「悪役令嬢は全員生存エンドを目指す」
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