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悪役令嬢は婚約破棄10秒前に死に戻り、本当の恋を見つけて生き残る  作者: しのギドラ


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2話 公爵令息の屋敷に保護される

 公爵邸の厳かさえ感じる、豪華な調度品に囲まれながら、私は侍女たちに手当てをしてもらえた。

 大きな傷はなかったものの、傷が癒えるまでは少し時間がかかるだろう。


「それで……私に聞きたいこととは何なのでしょうか?」


 私は机越しのソファに座るテオドア様を、びくびくとしながら見つめる。

 ここまでしてくれた彼が敵とは思えなかったが、その思惑次第では結果は変わるかもしれない。

 湯気を立てる紅茶の存在さえ忘れさせる緊張で、私は膝の上で手を握りしめる。


「ジェイコブ王子殿下のことだ。君は彼の婚約者だったのだろう」


「一応そうです。まあ、今日殺されかけましたがね……」


「その理由を聞きたい。私たちの追っている事件に絡んでいるかもしれないんだ」


「事件、ですか?」


「ある密輸組織を追っていてね。……まずは、なぜ君は殺されそうなのか聞いてもいいだろうか?」


「はい……。実は先ほどジェイコブ王子殿下に突然呼び出されて、前から気に入らなかったと婚約破棄を告げられたのです。そして私を毒殺しようとしました。かろうじて脱出できたのですが……その後も追っ手を差し向けられて……」


 私は腕を組みながら、ジェイコブの言動と行動を思い出す。

 今思い出しても、あの冷酷で残虐な行為は、身を打ち震わせる。


「……それは奇妙だな」


「え……?」


「婚約者の暗殺など、第二王子といえど重罪に問われる。その危険を侵してまで、ただ気に入らないからと君を執拗に追いかけるだろうか?」


 あの男は、あの場では婚約破棄としか言っていなかった。

 だけれども、テオドア様の言う通り、リスクとリターンが噛み合っていないのも確かだ。


「私を殺害したのは、婚約破棄だけが目的じゃない……ということ……?」


 そういえば、私はジェイコブの足を引っ張っているとも言っていた。

 慌てたように追っ手を差し向け、即座に私を殺そうとしていた。

 まるで、私を必ず殺さなければいけないというように。


「何か、心当たりがあるのか? ……例えば、彼の周囲で怪しい人物、書類などを見た覚えがあるのではないか?」


「人物……書類……密輸。…………あ!」


 私は一ヶ月前の、ある出来事を思い出す。

 婚約者として義務となっていた月に数度の逢瀬で、私は彼の執務室へ招かれることになった。

 その時はひどく待たされて怒りを募らせながら、手持ち無沙汰になって執務室の書類を覗き込んだ。


「あの書類……外国の薬草とか、珍しい生物とかの品目が書いていたような……」


「……! その品名は覚えているか?」


「ええと、確か魔草メルヘル……黒獣アミング……。この国で禁輸とされているものだから、何だろうと不思議に思ったのでよく覚えています」


「……それは、私の追っている違法密輸組織が扱っている品物と一緒だ。やはり第二王子が絡んでいたか……」


 テオドア様は眉間に手を当てて、じっと考え込むようにうつむいた。


「つまり……ジェイコブ王子殿下が……その組織の関係者ということですか?」


「まだ、可能性の話だがな。肝心の証拠がまだ揃っていない。だが、早く尻尾を掴まなければ、違法密輸品による被害が広がってしまうだろうな」


「証拠……」


 ジェイコブが密輸に関わっていると分かれば、きっと彼は王族の地位を剥奪されるだろう。


 それはつまり、生き残る確率が上がることになる。


 私は考え込むテオドア様の助けになるため、何かヒントになることがないか必死に記憶を辿った。


「……あ!」


 悪女だった頃の浅はかな行動、それを思い出した瞬間。

 私は思わず立ち上がって、淑女とは言えない声で叫んでしまった。


「シャーロット嬢……?」


 証拠なら、ある。

 しかもそれは、私の手の中で確保がされているものだ。


「これなら、ジェイコブを追放できるかも……」


 拳を握りしめ、私は自分の最期を反芻する。


 死にゆく私を冷酷に見下ろして笑った、あの男。

 密輸に勘づいたかもしれない私を口封じしようとした、第二王子。


 理不尽に死をもたらそうとした存在に、今更ながら怒りがふつふつと湧いてきた。


「テオドア様、私に協力してくださいませんか? 何度も私を追い詰めたあの男を……自分自身の手で叩きのめしてやりたいのです!」


「こちらにとって、それは願ってもいないことだが……。いいのか? 仮にも君の婚約者なのだぞ?」


「知ったことではありません。私のためにも……ジェイコブは徹底的に追い込んでやります! それがこの国のためにもなるのなら、一挙両得というものです」


 呆気にとられたように私をソファから見上げていたテオドア様は、どこか楽しげに眼差しを和らげた。


「勝気な女性とは聞いていたが、ここまでとは。君みたいな斬新な女性は、中々いないだろうな」


「し、失礼いたしました。とても淑女とはいえない仕草をお見せしてしまい……」


「いや、いいんだ。……これから、よろしく頼む」


 テオドア様もソファから立ち上がり、白の手袋に包まれた手を差し出す。

 私は言葉の裏の意味を探ろうとせず、力強くその手を握り返した。

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【代表作】→「悪役令嬢は全員生存エンドを目指す」
◆累計ページビュー63,000pv超え感謝◆

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あらすじ→「全員生き残るか、一人残らず死ぬか」その二択しかない極限の乙女ゲーム。
前世の記憶を取り戻したルナリアは、自分が"全滅エンド"を招く悪役令嬢だと知る。
導き出した答えは、誰とも関わらず、孤独に生きること。
そう誓った矢先に出会ってしまったのは、攻略対象——公爵令息のグレン。
父の虐待を見抜き、どんなに突き放しても離れない彼に、距離を取ろうとするほど執着されていく。
やがて暴かれる、最初から大切な人を"殺す力"を宿していたという残酷な真実。
それでも彼は、皆の前で誓った。
「生涯をかけて君を幸せにする」と。
虐げられた令嬢×公爵令息。
作品ページはこちら→「悪役令嬢は全員生存エンドを目指す」
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