一波乱…2
この仮面舞踏会は仮装も入っております。
賑やかなメロディーが廊下にまで聞こえる。
重い扉を開け、中に入ると天使、妖精、うさぎ、猫、と様々な服装をした令嬢、紳士が大勢いた。
「これはこれは、美しい悪魔ですね。私と一緒に踊っていただけますか?」
フィオナが仮装舞踏会の会場へ足を踏み入れた時、横からハスキートーンの声が聞こえた。
振り向くと50代前半の青の衣装を身につけたピエロ様。
「喜んで、ピエロ様」
フィオナは礼儀正しい礼をし、微笑んで見せた。そして会場のサイド付近へとピエロに案内されるまま行き、メロディーに合わせダンスを踊る。
「それにしても驚きましたよ。この国にこんな若く美しい女性…いや悪魔がいたとは」
と、フィオナの腰をぐいっと引きつけながらフィオナの耳元で囁く。
思ったよりキツく締め付けられることに驚くフィオナ。
「この城で部屋を借りてるんだ。どうだい?」
突如ピエロの格好をした老い紳士はフィオナの首筋を舐め上げる。
「ひっ…」
フィオナは咄嗟に紳士の手を離し逃げようとするが、紳士の手がフィオナの腰を離さない。
なんなんだ?このピエロは…気持ちが悪すぎる。
と、悪寒で体が震えるのが分かった。
「私はこの国の伯爵だ。良い誘いだろう?」
フィオナが黙っているのをいいことに老いピエロは自分の身分を語り始める。
陛下はこんな奴を伯爵の地位につかせているのか。
陛下に対して情けなくて溜息が出てしまう。
さて…どうするかな。
と、フィオナが取り敢えずこの老いピエロを黙らせようと呪文を唱えようとした時だった。
「老いて壊れた道化師にこの悪魔は似合わないよ。」
そう言った声の主は魔術で相手を宙に浮かばせた。
この声は…
「大丈夫だったか?俺の愛しい悪魔」
フィオナが声の方を振り返るとそこには白銀の片方に白と黒の羽が付いている仮面をつけ、薄く笑う…レオ、お兄様がいた。
「レ…っ、ファ、ファントム様…どうして此方に?それにあの程度、私1人で何とか出来ました。」
レオに少し睨みを効かせ、宙に浮かんでいる老いピエロに目を向け、ある人物を探すべく会場を少し見渡した。
何処かにいるはず…
いた!
「ジー!っと…危ない危ない。ドラキュラ様ーーー!!」
フィオナの声に多数の人達とドラキュラの格好をした紳士が振り向く。
「ちょっと此方に来ていただけますか?」
「…随分、不向きな格好をしてるな…悪魔」
八重歯を見せシルクハットにマントを付けたドラキュラの格好をした紳士はフィオナの格好を足の先から髪の先まで見つめる。
「私のピンクでふりっふりのドレスを着たところを想像してはどうですか?」
フィオナはそれよりかはマシだろ。という嫌味を込めた言葉をドラキュラの格好をしている…陛下にかけた。
いや、それも有りではないか?と陛下が思ったのは知る由もない。
「っと、そんな話をする為に呼んだんじゃないんでした。上をご覧下さい、ドラキュラ様。何が見えますか?」
フィオナの言葉に宙を見上げる陛下。
「何ってあれはこの国のロイザー伯爵ではないか?どうして宙に。」
「このお方、紳士にあるまじき行為をしました。意味は分かりませんが、この城で部屋を借りてる。どうだい?と言いながら私の首筋を舐めました。女性に対しての行いではないですよね」
フィオナはさっきのことを思い出し身震いがした。
フィオナの言葉に陛下とレオの周りの空気が冷たく凍りつくようになった。
「さっむ…どうしたんですかね。」
フィオナの天然発言は置いておいて、ゆらりと陛下が一歩前に出てきた。
「ロイザー伯爵…貴様は知らないだろうが、貴様が夜の誘いをした相手は我が妃だ。どういうことか、説明をしてもらおうか。」
「ひっ…そ、そんなこととはいざ知らずっ…どうかっ許しを…」
涙ながらに許しを乞うロイザー伯爵に陛下は溜息を漏らす。
「話は本当であったか、ロイザー伯爵。前からの町娘への脅迫、性的暴行。言い逃れは出来んぞ。」
老いピエロの言葉を遮り、陛下は流れる手付きで腰に収めていた剣を抜いた。
陛下の口元には薄く笑顔が張り付いている。
「ほ、本当に…いの、ちだけはっ…」
陛下の纏うオーラに空中で暴れる老いピエロ。陛下は鬱陶しいようにピエロの首に剣先を当てた。
「ロイザー・デイメス。貴様は伯爵の地位を降ろす。命は取られなかっただけでも有難いと思うのだな。」
老いピエロはそのまま床に崩れ落ちた。
~皆の仮装~
レオ…ファントム
フィオナ…悪魔
陛下…ドラキュラ
でした。
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