終幕
「——その後、おっぱい王国の巨乳派と貧乳派が手を取り合い、シュヴァンツ王国を滅ばしたのは言うまでもあるまい」
ちょびヒゲを生やしたタキシード姿の男が言った。
「その先陣に立ったのは、後の世で魔女姉妹として恐れられるあの巨乳姫マンスロートと貧乳姫マレーンだった。二人の魔女姉妹は禁断魔法ルンペルシュティルツヘンを乱発し、シュヴァンツ王国を三日も待たずして焼け野原にしたのは歴史の常識だ。覚えとくように」
狼は身震いしている。
「人間の女って怖いな」
狐も身震いしている。
「あんなに好きだって人を、国ごと滅ぼすなんて」
「おそろしやおそろしや」
兎が涙目になってがたがたと震えている。
「いいかい動物さんたち」男は言った。「この話から得る君たちの教訓は、人間の女の嫉妬は恐ろしいという事実だ。だから人間の女をその気にさせて、ポイすると大変な目に遭うよ」
「うん、勉強になったよ」
狼はうなずく。
「それにしても人間っていうのは不思議だ」
「あんなにも好きだったのに、こうも簡単に憎む事が出来るなんて信じられない」
狐が言った。
兎が涙を流す。
「きっと人間っていうのは、愚かな生き物なんだよ……悲しいね」
男は自分が座っている切り株の側に置いてあったヴァイオリンの弓を拾い上げると、それを伸ばした右手人差し指の上にのせ、バランスを取り水平に保つ。
「みなさんにわかりやすく人間の心を教えてあげよう」
男は言った。
「よく小賢しい知ったかぶった人間が、愛の反対は無関心だ、などと無知をさらけ出して得意げにほざきますが、それは間違いなのです。愛の反対は今も昔もこれからも変わらず憎しみなのですよ」
男はバランスを取るヴァイオリンの弓の左端を指差す。
「ここが愛情で」
そう言うと弓の右端を指差す。
「その反対が憎しみ」
次いで弓の中心を指差す。
「無関心とは愛と憎しみを結んだ線の中間地点なのですよ」
三匹は男の説明に聞き入っている。
「ですから愛の反対は憎しみなのです」
男はそう言って弓の左端を叩くと、半回転してやってきた弓の右端をうまいぐあいにキャッチする。
「それゆえに愛が裏返ると、このように憎しみへと変わるのですよ」
そう言うと弓の中心を指差し、そこから弓の端へと指を滑らせていく。
「愛が深ければ深いほど、その距離は大きくなり増大していく。そのため愛すれば愛するほど、それが裏返った時の憎しみは大きくなるのです。おわかりいただけたでしょうか?」
三匹が感心したかのような表情で拍手を送った。
「さてみなさん」
男は立ち上がった。
「私の話はこれにて終了です。もしも、もっと面白い話を聞きたいというのならば、我がティーア劇団へ入団してください。その際にはもっと面白い話を聞かせてあげますよ。それではみなさまの入団お待ちしております。ではさようなら」




