↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/18

第十四章 記録の地

二度目の許可は申請しなかった。


五日目の夜、忍んで行った。


行ったのは四人。僕、林新年、マティルド、ルナ。


マティルドは遮光灯を二つ、縄一卷、銅の定規を一つ。


林新年は紙と筆と、空白の記録表を一式。


ルナは母の帳面。


僕は希捷莉卡がくれた北境星位を一卷。


真夜中に土手を越えた。


草は変わらず整っている。一時間ほど進むと、あの灰白色の地面がまた現れた。


今度は音を頼りに進んだ。


---


音の源は、一つの穴だった。


自然のものではない。縁は円く、切り口は平ら。直径四尺ほど。中は暗い。


熱い風が外へ吹いている。


暖かい。


灯を中へ向けた。


穴の壁は土ではない。暗い色の、滑らかな、規則的な文様のあるもの。文様は装飾では

ない。繰り返しだ。同じ形が、一度、また一度、また一度。間隔が完全に同じ。


僕はその文様を長いこと見ていた。


そして地面に座った。


「陳臨?」


答えられなかった。


僕はそれを見知っていた。


この世界のものではない。


前世のものだ。


前世で大学院にいた時、データセンターの案件を手伝った。古い機械室を一度見に行っ

た。あの架空地板、あの列に並んだラック、あの異常が一目で分かるようにわざと規則

的に並べた配置。


目の前にあるのは機械室ではない。


だが同じ考え方だ。


誰かが「物を保管する」ということを、建物にした。


---


「陳臨」


林新年の手が肩に置かれた。


「顔が白い」


「大丈夫です」


「震えてる」


自分の手を見た。


そうだ。震えている。


怖いんじゃない。信じられないんだ。


なぜならこの世界の「神隕処」が、前世で僕が見た機械室と、設計の考え方で同じもの

だというなら――


この世界で「神」という字は、使い方を間違えている。


---


僕たちは穴のそばに一時間ほどいた。


僕は、馬鹿げているがやらねばならないことをした。


穴を測った。


直径、四尺一寸。


数字を書き留めた。


次に文様。


間隔、約二指。


これも書き留めた。


次に温度。


手を穴の中に入れ、六十数えて引っ込めた。中の風は暖かく、熱くはないが、確かに熱

い。


これも書き留めた。


それから四つ目のことをした。


懐から希捷莉卡の北境星位を取り出し、地面に広げた。


ルナが覗き込んだ。


「これは?」


「彼女がくれた」と僕は言った。「着いたら空と照合しろと」


顔を上げた。


北境の星空は、僕の知っているものと違う。長く探して、ようやくあの星を見つけた。

学院の星図で希捷莉卡が直した星だ。


彼女は図の上で、その位置を少し東へ動かした。


そしてここでは、その位置は間違っている。


彼女が間違っているんじゃない。源橋の空と、ここの空は、そもそも違う。


僕は地面に座って長く計算した。


計算し終えて、手を止めた。


「どうした?」とマティルド。


「彼女が直したのは、あの星じゃない」と僕は言った。


「じゃあ何を?」


「観測点を直したんだ」と僕は言った。「源橋から見れば、彼女の修正は正しい。ここ

から見ても、彼女は正しい。だが――観測点をこの二つの間のどこかに置くと、どちらも

合わない」


ルナがゆっくり言った。「つまり――」


「つまり」と僕は言った。「空は動いていない。地が動いた。」


---


僕たちが離れたのは明け方だった。


あの石は持って帰らなかった。


あのガラスも持って帰らなかった。


持って帰ったのは一つだけ。


穴の壁から落ちていた破片。


爪の先ほどの大きさで、暗い色。文様が一本。


包んで、懐に入れた。


帰り道、空が明け始めた。


土手を越えると、第七哨所の旗竿が遠くに見えた。


林新年が急に言った。


「さっき、穴の前での君の様子」


「はい」


「あれを知っていた」


僕は答えなかった。


「陳臨」と彼は言った。「見たことのないものを、なぜ知っている」


僕は彼を見た。


転生してから今まで、この質問を正しくした人間は、初めてだった。


口を開いた。


そして前のほうでマティルドが僕たちを呼ぶのが聞こえた。


走った。


土手の下に、五人の人間が立っていた。


内城の服を着ている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。