第十章 フリエル
外城の西にある陶家の窯には、二年以上通った。
あの道は目を閉じても歩ける。三度曲がり、熱い汁を売る屋台を過ぎ、酸の匂いがすれ
ば染坊、焦げた匂いがすれば窯だ。
その日、三度目の角を曲がると、窯の入口に誰か立っていた。
後ろ姿が小さい。
濃緑の旅用の外套で、生地はいい。裾に泥がついている。外套の下から覗くスカートの
端は、内城の仕立てだった。足元に小さめの革の鞄。角が白く擦れている。
彼女は腰をかがめて、窯口を見ていた。
火ではない。
窯口の煉瓦だ。
煉瓦の目地を数えている。
――この人は、物を見る人だ。
僕は歩いていった。
足音を聞いて、彼女は腰を伸ばし、振り返った。
最初に目に入ったのは、目だ。とても黒く、静かで、人を見る時に逸らさない。
次に目に入ったのは、年齢だった。
十六か、十七。
胸の内で、何かが沈んだ。
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窯のそばに立った時には、頭の中ではもう計算が始まっていた。
L.F. の手紙は七三八年から。今年は七五二年。十四年前。
十四年前から通信し、内容は観測方法、データ処理、文献引用。学生の水準ではない。
書いた人間は、十四年前で少なくとも二十歳。
なら今年は、少なくとも三十四。
目の前の人間は、十六か十七。
もう一度計算した。
――童顔なだけかもしれない。
――L.F. は別人で、彼女は手紙を持っているだけかもしれない。
――そもそも L.F. を知らず、たまたまガラスを聞きに来ただけかもしれない。
三つを胸の中に並べた。
それから、僕たちの組の決まりを使った。
一、データは共有する。誰も結論だけを渡さない。
二、標本が足りない時は、結論を保留する。
三、すべてのデータに出所を書く。
今の標本数は、ゼロだ。
だから僕は何も言わない。
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「学院の人ね」と彼女が先に言った。
王都の訛りだ。語尾が上がって、言い終えてからもう一度持ち上げる。
「なぜ分かるんです?」
「袖に墨がついてる」と彼女は言った。「左の袖口にあって、右にない。字を書く人間
は左手に墨がつかない。君は左利き」
僕は自分の袖を見た。
彼女の言うとおりだ。
「それに、さっき計算してた」
「何を?」
「私が何歳か」
僕は答えなかった。
「恥ずかしがらなくていい」と彼女は言った。「私は一日に何十回も、人が何歳か計算
する。誰に、どの口調で話すかを決めるために」
彼女は手を出した。
「ルナ・フリエル」
僕は握った。手は冷たく、掌に薄い胼胝がある。筆のものではない。弓のものだ。
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陶師匠が窯から出てきた時、誰かを怒鳴っていた。
弟子の一人だ。二言怒鳴って、僕たちを見て止まった。
「知り合いか」
「知りません」とルナ。
「知りません」と僕。
陶師匠は僕たちを一目見た。
「なら知り合いだ」と彼は窯に薪を入れた。「知り合いじゃなければ、俺の入口に二人
で並ばない」
薪を入れ終え、腰を伸ばした。
「小僧」と彼は僕に言った。「彼女は三日前に来た。聞いたことは、お前と同じだ」
「何を?」
「あのガラスが作れるか、と」
「何と?」
「作れない、と」と陶師匠は言った。「何度聞かれても、何度も言った。それから、見
たことはあるかと聞かれた」
「何と?」
「ある、と」と陶師匠は平坦に言った。「四十七年前、禁区の縁で、と」
僕はルナを見た。
彼女は驚いていなかった。
ただ静かに聞いていた。すでに持っている記録を照合するみたいに。
その瞬間、三つのことが確定した。
一、彼女は禁区を知っている。
二、彼女は四十七年前を知っている。
三、彼女は、陶師匠が全部話すとは知らなかった。
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僕たちは窯の外の石に座った。
彼女が鞄からものを出す時、中が見えた。衣服ではない。紙だ。鞄一つ分の紙が、麻紐
で束ねてある。
一束を抜き、石の上に置き、紐を解いた。
「先に読んで」
僕は手に取った。
手紙の束だ。
紙は薄く、角に折り目があり、どの一枚も右下が少し欠けている。長く握られていた跡
だ。
一行読んで、手が止まった。
その一行を、僕は知っている。
父さんの字だ。
僕はその石の上で、一字ずつ読んだ。
七四二年の秋の一通だ。父さんは、新しい観測を一組やったと書いている。データ点は
前の組より密だと。そして二組を並べて見たら、曲線は直線ではなく、上へ反った一片
だと書いている。結論は出せない、標本がまだ少ないから、と。
最後にこう書いてある。
「この組は取っておく。結論は出さない。来年の春にしよう。」
来年の春、彼はもう語らなかった。
僕は顔を上げた。
「十七通」とルナは言った。「七三八年から七四二年。君の両親が、私の母に宛てて書
いた」
「君の母に」
「そう」
「では、第二巻の写しは――」
「私の母が、君の両親に宛てて書いたもの」と彼女は言った。「君の母がそれを写し取
って、文献レビューに組み込んだ。自分に使えたから」
彼女は少し間を置いた。
「両側の手紙は、ずっと一対だった」と彼女は言った。「君の家に十七通の写し。私の
家に十七通の原本」
「一通多くなく、一通少なくなく」
僕は手の中の束を見下ろした。
十七通。
七三八から七四二。
そして、一つ分かった。手のひらに汗が出るようなことが。
この二つは、独立した二つの物体だ。
一つは、両親が写した十七通。一つは、両親が書いた十七通の原本。
並べれば、日付、内容、応答関係を照合できる。
互いを検算する。
あの三つのデータ点みたいに。
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「検証します」
そう言った時、自分の声に何かが混ざっているのが分かった。
ルナは僕を一目見た。
「どうやって」
「ここで待っていてください」と僕は立った。「取りに戻ります。一刻で」
「行かない」
「走ります」
僕は走った。
学院へ戻り、二階へ上がり、布の包みから第二巻を抜き、自分のノートから何枚か紙を
破り、また走って戻った。
往復で一度も止まらなかった。
戻った時、彼女はまだあの石の上にいた。外套を解き、膝に掛けている。
僕は第二巻を石の上に広げ、彼女の十七通をその横に置いた。
そして照合を始めた。
一通目、七三八年四月。原本にはこうある。「先月君が聞いたあの組、僕も計算し直し
た。君が正しい。器械の問題じゃない」
第二巻の十七頁を開く。母さんが写した一通。「先月君が聞いたあの組、僕も計算し直
した。君が正しい。器械の問題じゃない」
一字も違わない。
二通目。
八通目。
十五通目。
一通ずつ照合した。すべて合った。日付の順、問いと答え、引用された段落、訂正の跡
まで同じだ。――原本で一字が消されている。写しでもその一字が写され、その横に小さ
な丸が描かれている。
写しと原本が、十年を隔て、二人を隔て、死んだ村一つを隔てて。
合っている。
筆を置いた時、手が震えていた。
「合います」と僕は言った。
「合うわ」と彼女は言った。
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「では聞きます」と僕は言った。
「どうぞ」
「L.F. は誰ですか」
ルナはすぐには答えなかった。
十七通をまとめ、紐を掛け直した。
「先に言って」と彼女は言った。「君はどう考えた」
「三つ考えました」
「言って」
「一つ目、君が L.F. 本人。年齢が合わない。二つ目、手紙を持っているだけで、書い
た人間と関係がない。三つ目、L.F. を知っているが、本人ではない」
ルナは聞き終えて、うなずいた。
「年齢の計算が間違ってる」と彼女は言った。
「どこが?」
「十四年前、母は三十一だった」と彼女は言った。「今年なら四十五のはず」
「はず?」
「五年前に死んだ」
窯の火が鳴った。
「だから」と彼女は言った。「L.F. は私じゃない」
彼女は束ねた手紙を膝に置いた。
「L.F. は私の母」と彼女は言った。「今は、私」
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「待ってください」
僕は言った。
「L.F. は、一人じゃないでしょう」
ルナは目を上げた。
今度は本当に僕を見た。照合ではなく、見た。
「王都観星台、四十七年前の巻の裏表紙に」と僕は言った。「同じ L.F. の印がある」
「あの巻を見たの?」
「友人の祖父が残したものです」と僕は言った。「印がある。手書きと印で、文字の間
隔が同じ」
僕は彼女を見た。
「四十七年前と十四年前が同一人物? なら今年、九十以上のはずです」
ルナはしばらく黙っていた。
それから笑った。
彼女が笑ったのは、これが初めてだった。ひどく不器用な笑い方で、長く使っていない
筋肉みたいだった。
「思ったより強いのね」と彼女は言った。
「その言葉は聞いたことがあります」
「誰に?」
「金髪の子に」と僕は言った。「その子も、ひどい言い方をした」
ルナは手紙を脇に置いた。
「L.F. は家印」と彼女は言った。
「フリエル家は、曾祖父の代から、王都観測台の記録を預かっている。記録を預かる者
は裏表紙に印を押す。だから四十七年前の巻は、曾祖父が押した。十四年前の手紙は、
母が書いた」
「印は同じ」
「そう」
「では、他人はどうやって区別するんです?」
「区別できない」と彼女は言った。「だから家印を使う」
彼女は膝の上の束を見下ろした。
「フリエル家は、母で三代目」と彼女は言った。「私は四代目」
「三代目は五人いた」
「今は?」
彼女は顔を上げた。
「今は、私だけ」
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僕たちは窯のそばで日が暮れるまで座っていた。
なぜ来たのか、と聞いた。
「母が五年前に死んだ」と彼女は言った。「死ぬ前に、ほとんどのものを焼いた。残っ
たのは、この一箱の手紙だけ」
「なぜ焼いた?」
「怖かったから」とルナは言った。「死ぬ前の一年、ずっと何かを焼いていた。手紙、
帳面、自分の観測ノート。残したのは、この十七通だけ」
「なぜこの十七通は残した?」
「焼けなかったから」とルナは言った。「この十七通は、他人が書いたものだから。他
人の手紙は、焼けなかった」
彼女は少し間を置いた。
「死ぬ日、私は枕元にいた。彼女は一言言った」
「何を?」
「『北へ行くな』」
僕は彼女を見た。
「君の母さんのあの手紙と同じですね」
「違う」とルナは言った。「母のあの手紙は、君の両親に宛てたもの。あの一言は、私
に言ったの」
窯の火が白になった。
陶師匠が窯口から顔を上げ、弟子を呼んだ。
「これから、どうするんです?」
「源橋に行って、これを学院に渡すつもりだった」とルナは言った。「でも着いてから
、変えた」
「なぜ?」
「掲示板の課題申報を見たから」と彼女は言った。「君の両親の稿を使った申報があっ
た」
「なぜ、君の両親のだと分かるんです?」
「引用されたその一条は」とルナは言った。「偽物だから」
僕は座ったまま動かなかった。
「なぜ、偽物と言えるんです?」
「その手紙を書いた人間は」と彼女は言った。「七四二年の秋、その組のデータを一通
、母に送っているから」
彼女は懐から最後の紙を出した。
薄い紙。何度も折られている。
僕は開いた。
父さんの字だ。
「第一四八号 魔力減衰速度 〇・〇四七」




