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第九章 該当冊子なし

林新年の祖父の箱は、一度だけ開けた。


それから彼は、もう開けなかった。


その数日、彼はいつもどおり研究室に来た。いつもどおり机の後ろに座った。僕たちが

顔を上げれば、いつもどおり手を止めた。


だが、いくつか違っていた。


本をめくる速度が遅くなった。一頁めくってから、次にめくるまでが長い。筆記をしな

くなった。あの小さな手帳を、三日間見なかった。


四日目、嬴倩が何でもない調子で言った。「林新年、その章、頁数が合わない」


彼は顔を上げ、一秒固まった。


「何?」


「第四巻第一章。昨日、校したでしょ」


「……ああ」


彼は下を向いて見た。


その頁を長いこと見ていた。何を見ているか、僕には分かった。彼はその頁を見ていた

が、その頁の字を見てはいなかった。


その晩、五人のうち一人が初めて欠けた。


---


先に結果を言う。


アリス・ティマウスが、去年の手袋の女だった。


マティルドが指導教官から聞き出した。


聞き方は直接的だった。彼女は書斎で教官を追い詰め、こう聞いた。「去年、理城へ行

ったのは、あの冊子を調べるためでしょう」


アリスは否定しなかった。


「そう」


「何が分かったの」


「持出簿にはエイドラー・デリルスと書いてあった」とアリスは言った。「内城観測司

」


マティルドの話では、その時の教官は平坦だった。他人の名前を読むみたいに。


「それから?」


「それから、あの冊子を見た」


「なかった?」


「あった」とアリスは言った。「私は移管票を見た」


「移管票に何て?」


「冊数:一。状態:移管済」とアリスは机の上の筆を直した。「三頁ある。一頁目は表

紙。三頁目は裏表紙。二頁目は白紙」


マティルドは固まった。


「つまり――」


「あの冊子は、源橋を離れた時から、白紙の冊子だった」とアリスは言った。「七四二

年の一年、最初から最後まで、誰も一行も書いていない」


---


その晩、僕たちは長いこと照合した。


僕は紙に三つの可能性を書いた。


第一:誰かが一年分の記録を書いて、消した。

――ありえない。消せば痕跡が残る。紙、墨、圧痕、どれかは残る。しかも三百六十行分

の消し跡が、まったく残らないはずがない。


第二:誰かが書いた紙を抜き、白紙と入れ替えた。

――ありうる。だが入れ替えには解体が要る。解体すれば半ミリ短くなる。アニスの帳面

では、七四二年の冬に解体したのは『北境駐防名録』で、観測記録ではない。


第三:その年、誰も書いていなかった。

――残ったのはこれだ。


字を書く行為は毎日起きる。手順だからだ。当直は署名し、観測は記録され、日は過ぎ

る。


誰かが、源で、筆を止めない限り。


「源で止めたなら」と嬴倩が言った。「それは誰かが記録を変えたんじゃない。誰かが

記録を出さなかったんだ」


「違いは?」


「ある」と彼女は言った。「記録を変えた人間は、見つかるのを恐れる。記録を出さな

い人間は、恐れない。出さなければ、外の人間は、そんな記録があったこと自体を知ら

ないから」


僕は座ったまま動かなかった。


――知らないものは、疑われない。


この一文は教科書に入れるべきだ。


僕は三つの可能性をノートに書き、三番目の下に線を引いた。


「第二十一条:七四二年冬の記録は存在しない。改竄ではなく、生成されていない。標

本数:三(三つの並行検証経路)。結論:成立。」


書いてから、その下に一行足した。


「生成されなかったのなら、誰が生成させなかったのか。」


---


答えは、もう五日間、僕たちの手の中にあった。


あの地図だ。


あの丸だ。


あの四文字だ。


――記録するな


解散の後、僕は林新年を訪ねた。


彼は一人で研究室にいた。机の上に箱の蓋が開いていて、中のものは一つも動かされて

いない。


僕が入ると、彼は蓋を閉めた。


「今日、来なかったな」


「分かってる」


「祖父の字だ」


彼は僕を見た。


「僕たちが話したことは、聞こえてた」


「聞こえてた」


僕は向かいに座った。


「だから一つ聞く」と僕は言った。「もしあの年、誰かが書かせなかったのなら――」


「やめろ」


「聞く」


「やめろと言った」


僕は彼を見た。


彼がこうなるのは珍しい。彼はいつも、一番平坦に話す人間だった。


それでも僕は言った。


他に言葉が思いつかなかったから。


「もし君の祖父が書かせなかったのなら」と僕は言った。「僕たちが調べているのは、

君の祖父じゃない。僕たちが調べているのは――」


「犯人だ」


彼はその二文字を、とても小さな声で言い終えた。


部屋が静かになった。


何を言えばいいか、分からなかった。


本当に分からなかった。僕は十歳で、前世では実験室で死んで、人にどう話しかけるか

を習っていない。


だから僕は、一番慣れていることをした。


「データの上では」と僕は言った。「君の祖父の空白と、第四哨所の空白は同じ一件事

だ。だからもっと正確に――」


「データ」


彼が遮った。


彼は立った。


「それは僕の祖父だ」


「分かってる」


「それでデータと言うのか」


僕は口を開いた。


彼は僕を見ていた。目に怒りはなかった。ただ立って、僕を見ていた。急に見知らぬ人

間を見るみたいに。


「陳臨」と彼は言った。「君は、何でも計算できるんだな」


彼は箱を抱えた。


「計算しないものもある」


彼は出て行った。


扉は叩きつけられなかった。とても静かに閉められた。


---


僕は研究室に長く座っていた。


ノートを開いて、何か書こうとした。


一時間座って、一字も書けなかった。


---


希捷莉卡が家に呼び戻されたのは、翌日だった。


出る前に一度研究室へ来た。一刻もいなかった。


彼女は言った。公示期間は三十日。今日で九日目。


彼女は言った。父は礼服を見に戻れと言った。


彼女は言った。私は着ない。


それから行った。


出る前に紙を一枚くれた。あの屋根の穴の方位図だ。彼女は、自分が計算している限り

、この話は終わっていないと思っているらしい。


---


三日後、アニスが来た。


綴じた冊子を納めた帰りで、手は糊だらけだ。


「あんたのガラスの爺さん」と彼女は言った。「伝言を預かった」


「何を?」


「言ってたよ」と彼女は少し考えた。「ガラスを聞きに来た奴がいる、って」


僕は顔を上げた。


「どんな人?」


「とても若いって」とアニスは言った。「話し方が王都なまり」


彼女は糊をズボンで拭った。


「それから、そいつが聞いたことは、あんたと一言一句同じだったって」

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