9.かつてのこと②
「税というものは、この国において一人当たりで取り立てられるものです。ダルゼルト陛下の政策では、人が減り、結果として未来に取り立てられるはずの税が減るのではありませんか」
「……」
「それでは、何も意味はないことです。せめて今のままでなければ……」
「ふんっ……」
私の言葉に、ダルゼルト陛下は鼻を鳴らした。
彼は、明らかに不機嫌そうであった。それは一応、私の説明を理解したからだと、考えて良いだろう。
これなら、彼も考えを変えてくれるかもしれない。そう思って、私は少し安心していた。
「先程から、御託を並べて、益々お前のことが気にらないぞ、セスティア。お前のような女を聖女として置いておいたことは、間違いだったといえる。やはり、追放しなければな」
「それはもう、構いません。ただ、私を追放するにしても、時間をいただけませんか? 後継となる方に、伝えておきたいことがあるのです」
私にはもう一つ、気掛かりなことがあった。
それは聖女の引き継ぎに関することだ。聖女という地位には、色々とある。私も、先代の聖女から教えてもらったものだ。
聖女の代替わりに際して、引き継ぎというものは重要であった。それが果たせなければ、問題が生じる可能性は高くなる。
「……時間稼ぎのつもりか?」
「え? いや、そういう訳ではありません。本当に重要なことなのです。私には伝えておかなければならないことがあって……三十分で構いません。文書を書き留めますから、どうかお待ちください」
「はっ! やはり、何かを企んでいるようだな?」
私からの懇願に対して、ダルゼルト陛下は笑みを浮かべた。
それを見て私は、気付いた。自らが判断を誤ったということに。
ダルゼルト陛下は、先の進言によって、気が立っているようだった。
最早、私の言葉を聞くつもりはない。彼の表情からは、そんな拒絶の意思が感じられた。
それは私にとって、困ったことであった。税の取り立てを厳しくすることも、聖女の引き継ぎをすることも、私にとっては需要なことだったから。
「これ以上お前に、口を開かせるつもりはない。さあ、こいつを連れて行くのだ。即刻国外に追放しろ。罪過の森にな」
「ま、待ってください、ダルゼルト殿下……」
「待つつもりなどはない。お前のような悪逆は、すぐに罰を受けるのだ。精々、優しい魔物の餌になることを願うのだな? 苦しめられたくはあるまい」
ダルゼルト殿下は、高笑いしていた。
それを聞きながら私は、兵士達に連行されることになった。
その足でそのまま、私は追放されたのである。罪過の森――凶悪な魔物の生息地であるその場所に、私は放り出されたのだ。




