7.再びの謝罪
「重ね重ね、申し訳ない。あなたには本当に、なんと詫びていいかわからない」
ボドールへの糾弾が終わった後、私はライゼル殿下とともに自室に戻って来ていた。
彼はまた、私に謝罪してきている。ボドールとネレーナ嬢、あの二人の一件は関連したものではあるが、それでも謝意がぶり返してきたということだろう。
「ライゼル殿下、謝らないでください。私は今回の件で、あなたに責任があるとは思っていません。むしろ便宜を図っていただき、感謝しているくらいです。ボドールを糾弾する場にいられたお陰で、少しは気も晴れましたから」
「……いや、そのことについてはこちらの都合でしかない。俺はあなたを連れて行き、厨房の反応が見たかったのだ。多くの者が、あなたに対しては悪意の視線を向けていた。色々と見えてきたものが、あるといえる」
ライゼル殿下は、ゆっくりとため息をついた。
厨房において、料理人達の私を見た反応はそれぞれであった。ボドールを除いても、中には確かに気になる態度の者もいたような気がする。
それにライゼル殿下は、どのように対応するつもりなのだろうか。まさか、その全員を排除する訳もなかろうし。
「ライゼル殿下、私のことについては仕方ない面もあると思います。もちろん、ボドール男爵令息やネレーナ嬢のような行動は、看過できませんが……」
「もちろん、俺とてあの場であなたに反応した者を全て咎めようなどとは、思っていない。しかし問題は問題だ。あなたを保護したというのに、ロムセルト王国は安全であるとは言い難い」
ライゼル殿下は、苦い顔をしていた。
彼には何か、悩みがあるようだ。それは私のことだけではなく、もっと根本的なことであるような気がする。
「ロムセルト王国は、良い国であるように思いますが……」
「あなたにそう思ってもらえることを、王家として誇りに思おう。しかし、問題というものは尽きないものだ。この国の貴族は、増長している者も多い。端的に言ってしまえば、性格が悪い者も多いのだ」
「それは……」
ライゼル殿下の言葉に、私はネレーナ嬢やボドールの顔を思い出す。
二人とも、考慮できる点はあるとはいえ、それでも性格は良いものではない。私に気に入らない点があるとしても、あのような食事を出すのは陰湿だ。
あれがこの国の貴族の標準であるとでも、言うのだろうか。ライゼル殿下の口振りからすると、珍しいという訳でもないような気がする。
「……どこの国も同じようなものなのかもしれませね」
「ドルイトン王国か……あちらの貴族も、良いものではなかったか」
「良い人もいましたが、全体的にはそうだと言えます。しかし、それでもロムセルト王国は良い国だと思いますよ? あちらの国よりも、上に立っている方々が良い人達のなのですから」
私は、ライゼル殿下にゆっくりと言葉をかけた。
それは私の素直な気持ちだ。本当にライゼル殿下を始めとするこの国の王家は、きちんとしている。
いや、ドルイトン王国もかつてはそうだった。それが狂ってしまったのは、前王が病魔に侵されてから、だろうか。




