表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「何故、聖女の仕事の引き継ぎができていなかったのか」などと、強引に追放した私に聞かれても困ります。  作者: 木山楽斗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/16

6.欠けた意識

「カビの生えたパンと濁ったスープ、そのどちらも論外だといえる。凡そ、王城で振る舞われる類のものではない。だが、ことはそれだけで終わるものではない。お前はこの厨房を汚したのだ。その罪は重いと思え。お前は謀反を働いたのだ」

「そ、そんな……」


 ライゼル殿下は、ボドールに対して冷たい視線を向けていた。

 恐らく、この若い料理人からすれば、本の出来心からの行動だったのだろう。私に対する嫌がらせ、それだけのことだったはずだ。

 だが彼は、王城の要ともいえる厨房で問題を起こした。その大きさを、ボドールはここに来て理解し始めているらしい。


「ま、待ってください。確かに俺は、その女にカビの生えたパンとスープを出そうとしました。でもそれが、謀反になるなんて……」

「その女、か? セスティア嬢に対して、お前が何を思っているのかは知らないが、彼女は俺の客人だ。この王城に真似ている方だ。それに対して無礼な振る舞いをすることが、軽いことだと思っていたことが、そもそもの間違いだといえるな?」

「うっ……」


 ボドールはまた、気軽に言葉を発していた。いや彼には、気軽という意思さえなかったかもしれない。

 しかしライゼル殿下は、そこを容赦なくつついた。その視線は冷たい。容赦や情けなどというものが、読み取れないくらいに。


「そしてお前には、この王城の厨房に立つという意思も欠けていた。料理長からの紹介ということもあって、父上はお前のことを受け入れた訳ではあるが、それは失敗だったといえる。まさか、これ程までに意識の欠片もない者とは」

「……申し訳ありません、ライゼル殿下」

「料理長、あなたにも当然責任を取ってもらう。しかしボドール男爵令息、まずはお前だ。その首には刃がかかっていると、思ってもらおうか?」

「や、刃……」


 ライゼル殿下からの宣告に、ボドールの表情が大きく変わった。

 彼は恐怖している。それは当然だ。この国の王太子から、死罪を仄めかされたのだ。怖くないはずもない。

 同時に彼は、混乱しているようだった。自らの行いがここまで糾弾されることに、まだ納得していないのだろうか。


「ど、どうして、俺がそんな目に……ただ俺は、その女がこの王城から出て行けばいいと思って。だって、おかしいじゃないですか。他国で罪人として追放された者が、王家の賓客になるなんて、意味がわからない」

「それがどうした? お前に王家の考えというものを一々説明しなければならいのか? 履き違えてもらっては困る。お前のここでの役割は、与えられた指示に従うことだ」

「そ、それは…」

「ここでのお前は、料理人として客人に料理を振る舞う。その役割に徹するべきだったな? もっとも、お前は料理人などとは言えないが……」


 彼もネレーナ嬢と同じく、私のことが気に食わないようだった。

 それで嫌がらせを実行した、そういうことだったのだろう。だがそれはなんとも、愚かなことだと言えた。

 ボドールはこれから罰を受けることになる。それは彼が想像しているよりも、何倍も何十倍も重たいものだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ