22.先代の王の判断
先代の国王様の来訪は、私達にとっては予想していないものである。
ただ彼が、何故ここに来たのかは明白だ。それは目の前で力なく倒れている、ダルゼルト陛下が物語っている。
「……先代のドルイトン王ですね?」
「……ライゼル殿下、あなたにはなんと謝罪をしていいか。本当に申し訳ない。最早、謝罪で許されるようなことではないということは、わかっていますが」
「もちろん、これは到底許されることではありません」
国王様からの謝罪に、ライゼル殿下はゆっくりと首を横に振った。
ダルゼルト陛下が企てた私達への攻撃は、非難されるべき事柄である。ライゼル殿下としては、糾弾したい所だろう。
「しかし、ドルイトン王……今は、あなたを王と呼びます。あなたが何をしたのか、私にはわかっています。実の息子をあなたは手にかけた、ということですね?」
「こうするしか、他に方法はなかった。ダルゼルトの暴走、それを私はもっと早くに止められていれば、良かったのですが」
「その決断をしたことについては、考慮する余地があるとは考えています。無論、無罪放免という訳にはいきませんが、ことを荒立てるのはやめにしましょう。ロムセルト王国は争いは望んでいないのですから」
今回の出来事は、二国の争いを引き起こす理由になるものであった。
だがライゼル殿下は、それを良しとしない。ここに来た理由である争いを止めるということを、彼は忘れていなかった。
そのことに、私は安心する。先代の国王様も、恐らく気持ちは同じだろう。戦争が起こることは避けてくれるはずだ。
「ライゼル殿下、もちろん私としても、争いは望んでいません。しかし、私としては戦争を起こさねばならぬと考えております。そしてドルイトン王国は、ロムセルト王国に全面的に降伏いたしましょう」
「それは……どういうことでしょうか? 戦争を起こして、ドルイトン王国が降伏したという事実を作りたいということですか?」
「ええ、ドルイトン王国はロムセルト王国に従います。この国が生き残るには、それしかないのです。見ての通り、私はこんな体だ。後継者として期待していたダルゼルトはこの様だ。このままでは、この国は終わってしまいます」
前国王様は、重大な決断を下したようだった。
息子であるダルゼルトを手にかけ、ロムセルト王国の元に従う。それがこの国の人々にとって、最善であると判断したということだろう。
事実として、前国王様はもう長くない。この国の統治というものは、近い内に崩れ去っていくだろう。
それならば、ロムセルト王国に手綱を握ってもらった方が、幸いだと考えたのかもしれない。
それを受け入れるかどうかは、ライゼル殿下やロムセルト王の判断だ。最早、私が口出しできる領域ではない。
しかし、どのような判断が下されるにしても、私の望みはただ一つである。平和な未来、私はそれが欲しいのだ。




