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「何故、聖女の仕事の引き継ぎができていなかったのか」などと、強引に追放した私に聞かれても困ります。  作者: 木山楽斗


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20.剣の応酬

「何をやっている? これだけの人数がいて、仕留められないというのか!」


 私達が兵士を倒す度に、ニルヴァン様の怒号が飛んだ。

 しかし彼が連れて来た兵士達の士気は、著しく落ちている。仲間達が地に伏せたことで、戦意が段々と消失してきているのだろう。


 そういうことならば、こちらとしてもありがたい。疲弊せずにこの場を切り抜けられるならば、それが一番だ。


「ニルヴァン! 何をやっている! さっさとこいつらを片付けないか!」

「わ、わかっているとも。くそっ、こうなったらこの僕が直々に……」


 ダルゼルト陛下の言葉に焦ったのか、ニルヴァンは自ら剣を取った。

 彼は視線を泳がせた後に、ライゼル殿下に目を止めた。狙いを彼に定めたのだろう。


「ライゼル! 罪過の森ではよくもやってくれたな? お陰で僕は大恥をかいた! あの怪物の中は思い出すだけでも……吐き気が、くそっ! 報いを受けるがいい!」

「やめておけ。今の俺には、何の理由もない」

「こちらには理由があるんだよ!」


 ニルヴァンは、ライゼル殿下に食ってかかっていった。

 しかしそれは、大きな間違いである。先程から彼は、兵士達をなぎ倒している。その剣の技術は、とても高いものであった。


「仕方あるまい……」

「ごたごたと――うっ?」

「今のお前を切らない理由は……ない。ヤードに代わって、ユンファンの行いへの報いを与えるとしよう」

「ぐあああっ! うっ……くそっ」


 ライゼル殿下の剣が振るわれ、その場にニルヴァンが呻きを上げて倒れた。

 このようなことをしでかした以上、彼の公爵令息であることの庇護は通用しなかった。実力が遥かに上回るライゼル殿下に向かっていけば、この結果は明らかであった。


「ニ、ニルヴァン? おい、答えろ! ニルヴァン!」

「ニルヴァン様が……」

「お、俺達はどうすれば……」


 ニルヴァンが倒れたことによって、ダルゼルト陛下は焦ったように声をあげた。

 自分でけしかけておいて、動揺するとは、どういう了見だろうか。ともあれ、その動揺というものは伝播していた。ニルヴァンが連れていた兵士達も、先程にも増して動揺している。


 これならこの場から、抜け出すこともできそうだ。

 私はライゼル殿下と見つめ合い、頷く。早急にこの場を離れて、身を隠して逃げなければ。


「くそっ! 何をしている? そいつらを早く仕留めろ! ニルヴァンの仇を討つんだ! 早くしろ……何故、誰も従わない?」


 ニルヴァンが倒れたことで、情勢は一気に変わっていた。

 ダルゼルト陛下は、明らかに焦っていた。慌てふためく彼に、私は少しだけ視線を向けていた。この場において、トップである彼の動きも重要なものであったからだ。


「……うん?」


 そこで私は、違和感を抱くことになった。ダルゼルト陛下の周りにも護衛はいるのだが、その内の一人が奇妙な位置にいる。

 彼が椅子に腰かけている後ろに、人影があった。この場において、ダルゼルト陛下を守るなら前に立つべきだというのに。


「お前達の命など、惜しむ必要があるものか! この場でこいつらを逃がすというならば、全員打ち首だぞ? 早くしないか、早く――うぐっ?」


 次の瞬間、私の視線の先では驚くべきことが起こった。

 ダルゼルト陛下の体を、剣が貫いていたのだ。それは彼の後ろにいた人影が、無防備な王に刃を突き立てたに他ならない。

 その場にいる誰もが、固まることになった。この混乱の最中に、ダルゼルト陛下が刺された事実は、また状況を一気に変えたのである。

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