表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「何故、聖女の仕事の引き継ぎができていなかったのか」などと、強引に追放した私に聞かれても困ります。  作者: 木山楽斗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2/24

2.王太子の判断

「あ、あなたは……」


 ライゼル殿下が現れたことで、メイドの表情は一気に変わった。

 それは、当然のことである。彼女からしてみれば、相手は雇い主にして、従うべき王族の一人だ。私に向けていた怒りの形相が崩れても仕方ない。


「……ニルヴァン子爵家のネレーナ嬢だな? セスティアから既に話は聞いている。その立ち振る舞いについて、少し話を聞かせてもらろうか」

「そ、それは……」


 ライゼル殿下は、ネレーナと呼ばれたメイドに近づいていった。

 彼女は、彼が一歩踏み出す度に、後退している。その顔からは、恐怖が読み取れた。

 しかし、同情する気持ちは湧いてこない。そのような表情をするならば、そもそも私に対して嫌がらせなんて、しなければ良かったのだ。


「このパンとスープは、どういうものだ? 俺の客人に、このようなものを出したのか?」

「これは、違います。料理人が用意したもので……」

「だとしても、お前はこれを確認して、ここに運んできたはずだ。それは何故だ? 一目見て、異常は感じられなかったか? 確認を怠ったというならば、それもまた落ち度だといえる」


 ネレーナ嬢の言葉に、ライゼル殿下はゆっくりと首を横に振った。

 それに彼女は、唇を噛み締める。反論の余地がない、と思ったのだろう。その表情は暗い。


「そもそも、この俺が何も聞かされずに、ここに来たと思っているのか? それならば、愚かという他あるまい。言ったはずだ、セスティア嬢から話は聞いていると。度重なる嫌がらせ、それがついに度を越し始めたと彼女は言っていた」

「それは……」


 ライゼル殿下には、既に事情は伝えている。彼はその現場を抑えに、ここに来たのだ。

 ネレーナ嬢も、それがわかったのだろう。彼女はゆっくりと、私の方を向いた。


「……ど、どうかお許しください」

「……」


 ネレーナ嬢は、私に対して頭を下げてきた。

 ここに来て彼女は、私に取り入ることを選んだようである。その素早い転身は、ある意味で見事なものだ。

 しかし、もう遅い。私は既に、ライゼル殿下に話を通している。ことは最早、私の一存でどうにかなることではないのだ。


「残念だがネレーナ嬢、いくら懇願してももう無駄だ。お前は、俺の顔に泥を塗ったのだ。セスティアに無礼な振る舞いをしたということは、そういうことだ。それがわからなかったのか?」

「ま、待ってください。私はただ……」

「なんだというのだ? セスティアが他国で罪を問われ追放されたから、無礼な振る舞いをしてもいいと言いたいのか? 残念ながら、そのようなことは関係がないことだ。俺が彼女を客人として迎え入れた時点で、彼女は賓客になったのだ」


 ライゼル殿下に追い詰められて、ネレーナ嬢はその場で尻餅をついた。

 それを見ながら私は、ため息をつく。できることなら、このような結果は避けたかったからだ。


 ネレーナ嬢がどこかで踏みとどまってくれていれば、そう思わずにはいられない。

 これによって、彼女は責任を問われることになる。それ所か、ニルヴァン子爵家すら危ないだろう。

 とはいえ、私も私で生きていかなければならない。害する意思がある者が身近にいる状況を許容できる程、私はお人好しではなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ