1.メイドの振る舞い
隣国であるドルイトン王国を追放されて、ロムセルト王国に保護された私の立場は、それ程良いものであるとは言えなかった。
王太子であるライゼル殿下を始めとする王家の方々からは良くしてもらっているが、その厚遇を快く思っていない者は多いのだ。
罪人として追放された立場であるため、何故王家が私を丁重に扱っているのかが、わからないのだろう。私が平民の出であることも関係しているかもしれない。
とにかく私の扱いというものは、悪かった。例えば、私の身の回りの世話を担当することになったメイドなどから。
「……こちらは一体?」
「……セスティア様の朝食でございます」
「……そうですか」
私の目の前には、カビが生えたパンと濁った色のスープがあった。
それが今日の私の朝食であるらしい。もちろん、これは嫌がらせの一環であった。メイドは私を担当する料理人とともに、色々と画策しているらしい。
「これは、食べられるものではないように思えますが……」
「それなら、食べなければ良いのではありませんか? 大体、あなたがこうして毎日朝食を食べられるなんて、不条理ではありませんか」
「不条理……?」
「あなたのような隣国の罪人を養うために、一体どれだけの平民が働いているのか、あなたにはわからないのでしょうね? そういった人達からしてみれば、あなたが満足に朝食を食べられるなんて、不条理もいい所でしょう」
メイドは、不満そうな顔をしていた。
彼女が言いたいことは、わからないという訳ではない。私とて、こうして毎日食べられることにはありがたく思っている。
しかしだからといって、この嫌がらせを受け入れるつもりはない。それとこれとは、別の問題だ。
「……あなたは、一体誰の代弁をしていらっしゃるのですか?」
「なんですって?」
「あなたは確か、貴族の家の出身でしたね? そのあなたが、平民のことを知ったように語るなんて、私からしてみれば、おかしなものです」
貴族の出であるメイドに、平民のことをいいように語られたくはなかった。
今の彼女はただ、私を貶めたいだけだ。そのために平民の気持ちを勝手に語るなんて、許せるものではなかった。
高慢な王家や貴族というものは、いつもそうであった。私が今こうしてここにいるのも、結局の所彼らの利権や私腹を肥やしたいという願望に寄るものなのだから。
「……こちらが下手に出ているから、いい気になっているのかしら? あなたのような下賤な民に、そのようなことは言われたくはないわ!」
「下賤、ですか……」
「国を追放された罪人は、そう言うに相応しいものでしょう? そうでないというならば、何故あなたはここにいるのかしら?」
メイドは形相を歪めて、私のことを睨みつけてきた。
彼女は本当に、私のことを忌み嫌っているらしい。それはよくわかった。
ただ、一つ履き違えていることがある。彼女が何を思っていようとも、私はこの国の王家に招かれて、ここにいるということだ。
それが何を意味しているのか、わからなかったのだろうか。私はゆっくりと、ため息をつく。
「……そこまでにしてもらおうか」
「……え?」
そこで、私の部屋の戸が開いた。そして、ある人が部屋の中に入ってくる。
その人とは、私を保護した張本人――この国の第一王子であるライゼル殿下だ。
最後までお読みいただきありがとうございます。
よろしかったら、下にある☆☆☆☆☆から応援をお願い致します。
ブックマークもしていただけるととても嬉しいです。
よろしくお願いします。




