17.隣国との対話
ミルリアからもたらされたドルイトン王国の状況に、ロムセルト王国はすぐに対応することを決めた。
当然のことながら、二国間での戦争など起こって良いはずもない。故にそれを止めるために対話の場が、設けられることになったのだ。
私は、そこに同席することになった。
ミルリアから聞いたドルイトン王国の現状などには、思う所があった。そのため私は、再びダルゼルト陛下と対峙することを決めたのだ。
「……あの日に捨て置いた女が、まさか生きているとは。それ所か、ロムセルト王国に保護されていたなど、まったく持って許せることではない」
「そのことについては、謝罪いたしましょう、ダルゼルト陛下。しかし、正直な所、彼女にあの森で死なれたら困るというのです。罪過の森に住まう部族を刺激しかねない。特に彼女は、彼らの住まう場所近くにいた」
「言い訳は結構だ。このことについては、責めさせてもらう」
対話の場にロムセルト王国を代表して立ったのは、ライゼル殿下であった。
彼はダルゼルト陛下とは、これまで何度か交流している。そういった関係性から、代表として選ばれたということだろう。
しかしダルゼルト陛下の態度は、古くからの友人に対するものではなかった。
彼はなんとも冷たく、ライゼル殿下を見つめている。
「しかし、セスティア? お前はどういう顔で、僕の前に姿を現したのだ? 君のせいで、この国は滅茶苦茶になっているというのに」
「私のせいで?」
「何故、聖女の仕事の引き継ぎができていなかったのだ? そのしわ寄せにより、この国は困っている。新たな聖女も、それを覆す程の有能さはなかった」
ダルゼルト陛下は、私に話を振ってきた。
しかし、その内容というものは、実に身勝手なものである。彼は自分が何をしたのか、覚えていないのだろうか。
「何故、聖女の仕事の引き継ぎができていなかったのか、などと、強引に追放した私に聞かれても困ります」
「ふん、お前も言い訳を述べるつもりか? そういった御託は、もう聞き飽きたのだ。やはり力だ! それしかないといえる」
ダルゼルト陛下は、私の言葉に対して目を血走らせていた。
その形相からは、何か焦りのようなものが読み取れる。それは当然のことだ。聖女の引き継ぎができていなかったことで、ドルイトン王国は疲弊しているのだから。
聖女の仕事というものは、多岐にわたる。それらの仕事の中には、聖女しか知れないような事柄もある。
例えば、国を守る結界などはそうだ。その魔法を構築する術式というものは、聖女だけが知る。外部に情報が漏れないように、詳しいことは聖女にしかわからない。
現在その結界は、崩落しようとしている。まだ少しくらいは持つだろうが、時間の問題だ。
誰かがまだ、張り直さなければならないのだが、それが可能な者が今ドルイトン王国にはいない。誰も結界のことが、わからないのだ。
だからこそ、引き継ぎの必要があったのだ。少しだけでもその時間があれば、ミルリアも充分に役目を担えたはずなのに。
優秀な彼女でも、情報なしに聖女は務まらなかった。ドルイトン王国は、現在危機的な状況にあるといえる。




