16.聖女の発見
罪過の森で暮らす部族は、魔物と心を通わせることができるそうだ。
彼らはその性質上人々から恐れられ、結果としてあの森で暮らすようになったらしい。
それは私にとって、驚くべき事実であった。しかし、それについて考えている場合ではない。
私には、他にやるべきことがあった。ニルヴァンが狩りと称して矢で射抜いた女性を治療してから、私達はある場所へと来ていた。
「セスティア、あれは?」
「ミルリア嬢です。間違いありません」
「ヤードは流石だったか。罪過の森で彼らが知らないことはないと、聞いてはいたが……」
森の中で木に寄りかかっているのは、私のかつての部下であるミルリアであった。
彼女は、かなり疲弊しているようだ。それはそうだろう。その追放がロムセルト王国に知らされてくるまでに、少しの時間を有した。つまり彼女は、私よりも長くこの森にいる。
魔法使いの技量としても、ミルリアは私よりは劣っていた。故に、この罪過の森で生き抜ける期間は、私よりも短いといえる。
しかしどうやら、間に合ったようだ。私はミルリアに駆け寄り、彼女の無事を確かめる。
「ミルリア嬢? 聞こえますか? 私はセスティアです」
「……セスティア、様?」
「あなたを助けに来ました。ここまで、よく頑張りましたね?」
「うくっ……」
ミルリアは、苦悶の表情を浮かべていた。
すると兵士の一人が、水筒を彼女に渡してくれた。周囲に水源などは見当たらないし、彼女はしばらくの間、水分を口にしていなかったのだろうか。
「はあ……んくっ、セスティア様? どうして、あなたがここに? それに、その方達は……」
「ミルリア嬢、だな? 俺はライゼル。ロムセルト王国の第一王子だ」
「ロムセルト王国? そうですか。セスティア様は、そちらの国に……あ、ああ、まずいです」
ライゼル殿下の言葉に、ミルリアは動揺し始めた。
しかし、何がまずいというのだろうか。もう助かるというのに、その怯えは一体……
「ミルリア嬢、何かあったのですか? とりあえず、落ち着いてください」
「た、大変なのです、セスティア様。ドルイトン王国は、ロムセルト王国と一戦構えるつもりです……ダルゼルト陛下が、それを画策していて」
「それは……」
「なるほど、あちらはそのつもり、という訳か……」
ミルリアが何故怯えているのか、それはすぐにわかった。
ダルゼルト陛下は、愚かにも引き起こそうとしているのだ。多くの血が流れる忌むべき戦争を。
「すぐに宣戦布告が、なされると思います」
「……ライゼル殿下、どうやら私は、あなたに色々と秘密をお話ししなければならないようですね?」
「そのようだ。しかし今はとにかく、ミルリア嬢を連れて帰ろう」
「はい、ミルリア嬢、立てますか?」
「ありがとうございます、大丈夫です」
私はミルリアに肩を貸す。彼女は、なんとか歩くことができそうだ。
とりあえず、今後のことはロムセルト王国の王城に戻ってから、ということになりそうだ。それならば道中で考えておくとしよう。これから私に、何ができるのかを。




