表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「何故、聖女の仕事の引き継ぎができていなかったのか」などと、強引に追放した私に聞かれても困ります。  作者: 木山楽斗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
14/24

14.奇妙な安全

 何が起こったのか、私の理解は遅れていた。

 しかし、目の前にいる巨体を見て、体はほとんど自動的に構えを取っていた。

 そこにいるのは、巨大なワニの魔物だ。その魔物は一瞬にして、ニルヴァンを呑み込んだ。彼は、微かに唸り声が聞こえるだけだ。


「グウゥ……」

「ぁ……ぁ……」

「ニ、ニルヴァン様が……」

「お、おい、魔物だぞ? 早く応戦の準備をしろ。ニルヴァン様を助け出すのだ!」


 ニルヴァンが消えたことに、彼が引き連れていた兵士達が焦り出していた。

 ただ、誰も手は出せはしない。巨大な魔物に、怯え切っているようだ。


 どうやらあの兵士達は、そこまでの手練れという訳ではなさそうだ。相手が凶悪な魔物だからといって、ここでそれでは一流の兵士とは言えない。


「ライゼル殿下……」

「セスティア、大丈夫だ。あの魔物は俺達には、危害を食わえない。いやそれ所か、あの愚かな男さえも、見逃すつもりのようだ」

「え?」


 臨戦態勢を取っていた私は、ライゼル殿下の言葉に驚くことになった。

 彼は至って、冷静である。この状況でそれは、はっきりと言っておかしい。多少なりとも、動揺があるはずだ。


 しかし周囲を見てみると、こちら側の兵士達も、臨戦態勢を取っていない。まるで今が安全であるかのように、武器を下ろしている。

 いや、そうではない。これは、武器を下ろさざるを得ないと考えるべきだろう。まるであの魔物にそれを向けることが、無礼であるかのように。


「……グプッ」

「な、なんだ? 何か吐き出したぞ?」

「あれは……ニルヴァン様だ! 受け止めろ!」


 少しの沈黙の後、ワニの魔物は口から勢い良く何かを吐き出した。

 それは幸か不幸か、人の形を保っているニルヴァンであった。魔物の唾液でどろどろになった彼は、気を失っているようだ。ただ、生きてはいるように感じられる。

 そのニルヴァンを、あちら側の兵士達は数人で受け止めた。彼らの表情からも、生きていることは伝わってきた。


「お、おい、どうするんだ? 撤退か?」

「ああ、その方がいいだろう。あんなのとやり合って、勝てる訳がない」

「ニルヴァン様を治療しなければならない。ここは撤退するべきだ」


 兵士達は、あまりにも統率が取れていない足並みで、その場から離れて行った。

 ニルヴァンが引き連れている兵士など、高が知れているということだろうか。ともあれ、彼らが去っていくならば、ある程度は安心できる。


 それはもちろん、ライゼル殿下を信じるならば、だが。

 ただ、今となっては信じられはする。あの魔物がニルヴァンをあのまま食らわなかった時点で、色々とおかしいものなのだから。


「……ヤード、いるのだろう?」

「……流石はライゼル殿下、だ。俺のことがわかったのか?」

「あなたの相棒の顔くらいは、俺も覚えているとも」

「そうか……」


 ライゼル殿下の呼びかけで、一人の男性が現れた。

 女性と同じく、顔や体に模様を描いたその人は、ライゼル殿下とは知り合いのようだ。

 そして信じられないことだが、あそこにいるあの魔物は、彼の相棒であるらしい。まさかヤードと呼ばれた男性は、魔物と心を通わせているとでもいうのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ