12.再びの追放
悪い予感というものは、的中するものである。ドルイトン王国の新たな聖女、ミルリアは追放されることになった。彼女もまた、ダルゼルト陛下の独断によって、追放される運びになったようだ。
私は罪過の森に訪れていた。目的はミルリアを助けるためだ。ライゼル殿下に進言した所、彼はそれを快く了承してくれたのである。
「ロムセルト王国として、この判断はそれ程おかしなものという訳でもない。現在のドルイトン王国の現状を考えれば、あちらの国の機密というものは手に入れておきたいものだからな」
「機密、ですか。まあ、確かに聖女ならば、色々と知っていますね。まだ、私はそういったことを聞かれてはいませんが……」
ライゼル殿下はこう言っているものの、彼は善意から私の提案を受け入れてくれたのだと思う。
王家としての自覚が強いライゼル殿下は、ミルリアにも同情しているはずだ。もちろん、国としての建前があってこそ、助けに行けるということなのだろうが。
「しかし、ライゼル殿下が自ら赴く必要はあるのですか? 危険だと思いますが……」
「罪過の森は現在、ロムセルト王国にとって重要な場所だ。あなたを見つけた時のことは、話しているだろう。俺達は今、この森に住まう部族と対話していると」
「ええ、それは聞きました」
「彼らを警戒させないためには、俺が赴くのが一番だ。無論、彼と今回遭遇するかはわからないものなのだが……」
罪過の森には、部族が住んでいるらしい。それは、ドルイトン王国でも昔から噂されていることであった。
ロムセルト王国は、その部族と接触して、現在対話を行っているそうだ。ライゼル殿下は、その交渉において、矢面に立っているらしい。
そのことに関しては、既にドルイトン王国にも伝わっているらしい。政治面のことだからなのか、私は聞いたことがなかったのだが。
「ドルイトン王国は、その部族には現在、我関せずを貫いているのですよね?」
「そのようだ。もっとも、彼らが住まう場所は、ロムセルト王国側の奥地だからな。ドルイトン王国からしてみれば、接触するにしてもかなりの労力を要する。それを惜しんだのだろう」
「まあ、この森は危険、ですからね……うん?」
ライゼル殿下と話していた私だったが、何か聞こえてきたような気がして、反応した。
それが人の話し声であるということは、すぐにわかった。ライゼル殿下にも聞こえたのだろう。彼も周囲の兵士達も、警戒態勢を取っている。
私達はゆっくりと、歩みを進めた。すると、話し声の主達の姿が見えてきた。
「……鬼ごっこは、もう終わりのようだな? まあ、狩りとしては上々か?」
「……っ!」
「おっと、こっちを睨みつけるなんて、まだ元気があるじゃないか」
見えてきた光景に、私は固まることになった。
ライゼル殿下も、目を丸めている。それは当然のことだろう。目の前にある光景は、信じがたいものだったからだ。
この罪過の森で、狩りが行われている。その時点で、特異な状況だ。凶悪な魔物が闊歩するここは、凡そ狩りに向いている場所ではない。
だが、今回の場合、それは些細なことであった。なぜならば、彼らが得物としているのは、人間だったからだ。
そこには、大勢の兵士を引き連れた貴族らしき男と、足を矢で射抜かれた顔や体に模様を描いている女性がいた。




