11.心配なこと
「ライゼル殿下には、本当に感謝しています。あの時保護してもらわなければ、きっと私は罪過の森で魔物の餌になっていたことでしょう」
「急にどうした?」
「いえ、こうして良くしてもらって、改めて気付いたというか、感謝をお伝えしておくべきだと思いまして……」
私からのお礼の言葉に、ライゼル殿下は少し驚いているようだった。
それは本当に急であったからだろう。ただ、改めて過去のことを振り返ってみると、感謝の気持ちというものが湧き出てきた。
ネレーナ嬢とボドールの件も合わせて、ライゼル殿下には助けられてばかりである。
「感謝など不要だ。俺は当然のことをしたまでなのだからな。むしろこれに関しては、ドルイトン王国の措置がおかしいといえる。あなたを追放するなど、あり得ないことだ」
「……それは、そうとしか言いようがないことだとは思います。ダルゼルト陛下は、あまりにも横暴です」
「国は違えど、同じ王家の人間として、信じられないものだ。あなたにも申し訳ない」
「いえ、それこそ、ライゼル殿下が謝るようなことではありません」
ライゼル殿下は、どこまでも責任感が強い人であった。ただ、ダルゼルト陛下の行いにまで申し訳なさを覚える必要はない。
ダルゼルト殿下の問題は、本人の問題である。彼はなんとも、愚かな王だ。彼の父親である先代は、良き王として知られていたというのに。
「……ダルゼルト陛下は、また同じことをするかもしれません」
「その可能性は、あると言えるだろうな。最早ドルイトン王国に正常な判断を期待する方が、間違っているのだろうな」
「ええ、彼は最早、自分に逆らう者を排除することを躊躇わないでしょう」
「愚かなことだ。そもそも、あなたという人材が失われた時点で、ドルイトン王国は大きな打撃を受けていることだろうに」
「そうですね。その辺りに関しては、色々と問題が起きていてもおかしくはないと思います」
私が追放されてから、ドルイトン王国は新たな聖女が就任することになった。
それはかつて、私の部下であったミルリアである。彼女は優秀な魔法使いだ。聖女の業務も、こなせない訳ではないはずだ。
ただそれは、通常通りに引き継げた場合の話である。彼女は、先代から受け継ぐべき知恵を持っていない。それがどのように、影響していることだろうか。
「ライゼル殿下は、ドルイトン王国の情勢に関しては、目を光らせているものなのでしょうか?」
「もちろん、隣国のことは常に気を払っている。何かあれば、あなたに伝えよう」
「ありがとうございます……甘えてしまって申し訳ないのですが、聖女の情報については気にしていただけませんか? かなり気になっていることなのです」
「わかった。部下にそう伝えておこう」
ライゼル殿下は、私の言葉に頷いてくれた。
これでとりあえず、ミルリアに何かあった時に動くことができるだろうか。仮に彼女も追放されるようならば、助けに行きたい所だ。
もちろん、ライゼル殿下がそれを認めてくれるなら、という前提はあるのだが。




