第八夜:……ありがとう!
やっとシンシアをツンツンから柔らかくできました……。私にはほのぼのはまだ早かったかもしれないです汗。
「こんばんは、シア。眠れないのかい?」
昨日会ったばかりなのにもう会いにきたらしい。
シンシアは驚きつつも呆れたような表情をして見せた。
「昨日会ったばかりじゃない。暇なのかしら」
「あははっ、シアに会いたくなっちゃって。シアもわたしに会いたかった?ふふふ」
呆れて言葉も出ない。誰が昨日の今日で会いにくると考えるだろうか。
「そうでもないわ。」
「あははっ、うんうん。わたしはシアに会いたかったけどね。」
「よくそんなことが言えるわね……。」
「本当のことを言っただけだよ、ふふふ。よかった。今日は泣いてないんだね。」
「いつも泣いているわけじゃないわ。……私をなんだと思っているの?」
「うーん、面白い子……?それから可愛い!」
「……もういいわ。」
「あれ、今日はリボンを付けてるんだね。蜂蜜色のリボン、素敵だね。」
「まだ眠るつもりがないから着替えていないだけよ」
「そうなのかい?ふふふ」
それから少しの間、静寂が続く。
シンシアは庭の水々しい花々を見つめ、リオはそんなシンシアを見つめてにこにことしている。
「……ふふ」
「今度はなに?」
「昨日も思ったんだけど、シアの瞳は綺麗だね。甘い蜂蜜みたいな琥珀色をしてる。昨日は泣いていたからよく見えなかったけど……やっぱり、すごく綺麗だ。」
「……そう。……私は貴方の瞳の方が綺麗に感じるわ。昔レイリアやオリアナと見た新緑のような色をしているもの。」
「ふふ、そうかな。わたしはシアの瞳が1番好きだな。」
「……はぁ。」
彼女は昨日出会った時から恥ずかしげもなく褒めてくる。まるでそれが当たり前のように。
その様子にシンシアは困惑してしまう。
レイリアとオリアナはこんな風にぐいぐいと話しかけてくることもなかったし、いつか本で読んだ恋物語のように口説いているかのような言葉を言うこともなかった。
どうしたら良いのか分からなくて、つい突き放したような冷たい反応をしてしまう。
「お嬢様、見てください!雪が溶けて若葉が芽吹く季節になってきましたよ!ふふふ」
「オリアナ、なんでにこにこ?」
「それはですね、大好きなお嬢様と一緒にこの景色を見ることができて嬉しいからですよ!」
「たのしい?」
「はい、楽しいですよ。ふふふ」
「にこにこ、ふふふ!」
「そうです!お嬢様可愛い!」
「かわいい?そっかぁ、ふーん。オリアナ、なに言われたらにこにこ?」
「ありがとう!って言ってくれたらにこにこになひますよ!」
「わかったー、ありがとう!オリアナ」
まだ言葉を上手に話すことができない幼いシンシアとオリアナの2人で過ごしたある日の事を思い出した。
その日は長かった冬の終わりを知らせるように、まだ少し積もっている雪の隙間から小さな若葉が顔を出したのを2人で見ていた。
オリアナがにこにこと楽しそうにしていたから、シンシアはもっと笑わせたくてオリアナに何が嬉しいか幼いながらに聞いてみたのである。
オリアナはありがとう!と言ってくれたら嬉しいと言った。
「……リオ、ありがとう!」
オリアナは嬉しいと言っていたからきっとリオもそうだろうと思い、あの時のように明るくにこにこと言ってみる。
「……わぁ……!……うん!どういたしまして!ねえ、もう一回言って!シアの笑顔、すごく可愛いね……!泣いている顔もいつもの顔も可愛かったけど、にこにこしてるともっともっと可愛い……!」
一瞬、何が起こったか理解できないとでも言うように瞬きをして、まるで宝物でも見つけたかのように表情を輝かせた。
リオは今までみたどの表情よりも一等瞳を輝かせ、今すぐにでも笑い出しそうなほどにこにことしてそう言ったのである。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
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