第七十二夜:予想外
少し短めです。あと今までで1番自然な会話ができたと思っています。
連日投稿が遅くなってしまい申し訳ないです。
決して飽きたとかでは無いし、完結させるので安心して読んでください。
チェーロの街は、エテルナ王国で1番栄えているため、街の市壁を抜けた先にもまだちらほらと家々が立ち並んでいる。
まっすぐ歩いていくうちに、だんだんと周りには緑が増えてくるが、やはり大都市に繋がる道なので、人の往来が多い。
「30分くらい歩いたけど、身体の方は大丈夫かい?」
隣を歩くリオが、シンシアの足元に目を向ける。
今日の装いはヘリオドールのリボンにマーメイドドレスとヒール、それから街を抜けて人が少なくなった頃にリオが出してくれた日傘で、普段と特に変わりはない。
ソレイユ邸を出る前に、リオがドレスやヒールに動きやすくなる魔法をかけてくれたのだ。
そのおかげで30分歩いても全く靴擦れをしていないし、足の違和感もない。
シンシアは今まで外に出ることがなかったため、魔法のそんな使い道を思い浮かばなかったが、リオはさっと魔法をかけてくれた。
頼もしい限りである。
転移魔法だけは初めてみた時にやり方が分からなかったが、それ以外の大抵の魔法ならシンシアはやろうと思えばやれるので、次からは活用しようと思う。
「次からは私もやるわね」
「ふふっ、シアに魔法をかけるのはわたしの仕事だからね」
一目見て魔法を習得したシンシアが自分も魔法を使うと言うと、リオににこりと微笑んで使わせないと言われてしまった。
少し前にリオにりんごを魔法で切って見せたことだってあったのに、リオは何か疑っているのかしら。
出発前の会話を思い出してくすりと笑みを溢す。
「大丈夫も何も、貴方が魔法をかけてくれたのに。おかしな事聞かないでよね」
リオの優しさだと分かっているけれど、自分の魔法を信じていないような言動に笑ってしまう。
すごい魔法使いだって言っていたのは嘘だったのかしら?
「ふふっ、確かに!わたしがシアに魔法をかけたんだから、こんな事聞いたら良くないね。シアとの旅だから浮かれてしまったのかも」
シンシアよりも頭いくつか分身長の高いリオの顔は、日傘に遮られてしまって見ることができない。
シャランと揺れるピアスと柔らかい声から、いつものように優しく微笑んでいると予想する。
なんだかんだ、会話をする時はリオの顔を見てするのが当たり前だったために、顔が見れない今の状況は物足りなく感じる。
「ねえ、当ててあげましょうか」
日傘に遮られて表情を見ることができないとわかりながら、隣にいるリオの顔を見上げる。
「顔、見られなくて物足りないんでしょう?」
日傘を斜めにして、ちらりとリオの顔を見やる。
「私には御見通しよ」
どんな顔をしているだろうか。
くすりと笑っているのかしら、それとも堪えきれなくて吹き出す寸前かしら。
ああ、きょとんと意味の分かっていない顔も良いかもしれないわね。
唇に弧を描きながら、リオの表情を確認する。
あら、どれでも無かったわ。
リオは、口元に手を添えて固まっていた。
「はは、シアには隠せないね。うん、顔を見たいと思ってたよ」
少し唇をきゅっと引き締めたかと思うと、いつものように微笑んだリオに、シンシアは肩を落とす。
いつものようにリオが茶化してくると思っていたのに、リオはそうでも無かったから。
なんだか私だけはしゃいでるみたいじゃないの。
そう思って手に持った日傘を魔法で消すと、たたっとリオより数歩先へ小走りで進み、後ろで手を組んで歩く。
「やっぱりさっきのは何でもないわ」
リオのいる方とは逆方向に顔を向けて、つれない態度をとる。
「顔は見せてくれないのかい?」
リオとの距離は三歩ほどあるが、その距離を気にもかけずにゆったりと話しかけてくるリオに、シンシアは何も返さなかった。
私だけ顔を見たいなら、見なくても良いわ。
思っていたよりも何てことなさそうな表情をしていたから、シンシアは自分だけ物足りないと感じていたと思って。
そのことに胸がモヤモヤして、どうでも良くなってしまった。
「風にあたろうと思って」
両手を広げ、身体を通り過ぎる風を全身で感じる。
エミリーが整えてくれたハーフアップがふわふわと後ろに揺れて、首元がすっきりする。
すーっと鼻いっぱいに息を吸うと、春の葉の香りが鼻を掠め、耳からは風に揺れる草木の音が風を教えてくれる。
「風が羨ましいよ」
くすりと笑う音と、ぽつりとそう言う言葉が聞こえ、シンシアは笑い声を上げた。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
誤字脱字、表現のミスがあったらそっと教えてくれると嬉しいです。




