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とこしえの2人  作者: 雪月影
第四章

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第七十一夜:なんだって出来るよ

ついに、旅に出ますよ!

この旅編、四章はシンシアとリオの物語が動き出す大切な章になりますからね。

感慨深い気持ちで一杯です。



 「じゃあ、そろそろわたしたちは行くよ」



 朝食を食べ終わり一息ついた頃、シンシアとリオは旅に出るために立ち上がった。



 「行ってらっしゃいませ、リオ様、シンシア様。リオ様、このライが居ないからといって羽目を外してはいけませんよ? はっはっはっ」



 「リオ様、シンシア様、行ってらっしゃいませ。シンシア様、知らない人にはついて行ってはいけませんよ、特に男性には! それから、何かあったらすぐにリオ様をお呼びするのです。はぁ、このエミリー、心配でなりません。シンシア様は類い稀なる美貌をお持ちなのですから、安全にはお気をつけますようお願い致します」



 ライとエミリーの2人はソレイユ邸でする事があるそうで、旅に行くのはリオとシンシアの2人だけだ。



 ライは何の心配もなさそうに軽快に2人を送り出している一方で、エミリーはシンシアのことが心配でたまらないようだ。


 

 ソレイユ邸のメイドたちはエミリーを含め皆、シンシアを着飾るのが好きなため、旅をして顔や身体に傷を作ってほしくないのだろう。



 それはもう安全に気をつけるようにと口を酸っぱくしてシンシアに言い聞かせていた。



 今でさえ、こうして念押しに留まっているが、身支度をする時は大変だった。



 「はぁ、シンシア様が旅に行ってしまわれるなんて、私達がその間お傍で世話をする事が出来ないのが残念でなりません。もちろん、シンシア様が外の世界を知るために旅に出られるのはとても嬉しいのですよ、ですが、私もついて行きたかったです。メイドの身ながら出過ぎた真似を致しますが、私と約束をしてくれますか?……絶対に道に落ちている食べ物を食べないでくださいね。それから、シンシア様に馴れ馴れしく近づいてくる方、男性、値踏みするような視線やその他不快になるような視線を寄越した方とは極力関わらないでください。リオ様と離れて行動するときは、何かあったらすぐにリオ様のことをお呼びしてください。あぁ、それから何よりも大切にしなければいけないのは、まずは自分の身を最優先に考えて行動をすることです。シンシア様の身に何かあったら、リオ様だけでなく、私たちも心配してしまいますから」



 シンシアと同じくらい旅を楽しみにしてくれていたエミリーは、旅を楽しみにするのと同じくらい、シンシアの安全を考えてくれていたようで、身支度をしている間、こうしてずっと約束事を話していた。



 普段は穏やかなエミリーが、真面目な表情でシンシアに約束事を話したので、それはもうシンシアの身の安全に本気なことが分かる。



 エミリーは綺麗なものを着飾るのが好きなのだろうが、きっとそれだけではなく、純粋にシンシアのことが心配なのだろう。



 この数日、エミリーと話したシンシアには分かる。



 だから、彼女がどれだけ長く約束事を話そうとも、シンシアは面倒に思ったり、適当に返事をすることはしなかった。



 彼女がシンシアのことを本気で心配しているのを知っていたから。



 少し前までのシンシアだったらそんなこと思わなかったかもしれないけど、今は違う。



 リオに出会い、ソレイユ邸で過ごし、ココやレイアという友人ができた今、シンシアは人からの愛情を知った。



 今は素直に受け取ることが出来る。



 「ええ、分かったわ。きちんと安全には気をつけるし、何かあったらすぐにリオを呼ぶわね。心配をしてくれてありがとう、エミリー」



 シンシアの正面に立ち、手をそっと包み込んでいるエミリーの目をしっかりと見て頷く。



 「ふふっ、約束ですよ。初めての旅、楽しんでくださいね」



 しっかりと自分の言葉が伝わっていると理解したエミリーは、ふっと表情を和らげるとそっと送り出してくれた。



 シンシアはエミリーにもお土産を持って帰ることを決意した。



 こうして2人は、ライとエミリーにソレイユ邸の外まで見送られ、旅へと出発した。



 チェーロの街は、昨日クロエ達とお出掛けをしてある程度見終わっているので、時間をかけずさっさと通り過ぎる。



 「お、この前ココ達といたお嬢ちゃんじゃねぇか! 今日はどこに行くんだ? 気をつけて行けよー」



 クロエ達とお買い物をした時に通ったお店の売子さん達は顔を覚えてくれていたようで、皆手を振って明るく送り出してくれた。



 シンシアは相変わらずはたから見たら無表情と大差ない表情で小さく手を振って挨拶をする。



 シンシア的には微笑んでいるつもりなのだが、やはり長年の孤独のせいだろうか、思ったよりも表情が動かない。



 それでも、隣を歩くリオは太陽のように明るい美貌なので、道行く人はシンシアの無表情に近い笑みを見ても変わらなかった。



 「シア、緊張してる? ふふっ、これからはやってみたいこと全部出来るから。旅は全力で楽しまないと、ね?」



 チェーロの街もそろそろ過ぎる頃、本当に旅に行くんだと実感してきたシンシアに、リオはそう言った。



 これから、初めてのことばかりで、不便な事だってあるだろう。



 それでも、きっとリオと一緒なら大丈夫。



 「ふふっ、楽しみね! ほら、行きましょう」



 リオの手を握り、シンシアは一歩踏み出した。

 


 

最後まで読んでくれてありがとうございます。

誤字脱字、表現のミスがあったらそっと教えてくれると嬉しいです。

とこしえの2人が完結したら、次に書くお話は現実世界での芸術で繋がる女の子2人のライト文芸、百合作品を書こうと思っています。

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