第六夜:何も知らない女の子
これからは1日1話〜3日に1話を目標にしていきます。完結させます。
調子がいい時はたくさん書いてその分投稿します。
「貴方、どうやってここに来たの?ここに人が来たのなんて初めてよ」
シンシアは生まれてからこの屋敷を出たことが無ければ、レイリアとオリアナ以外の人との記憶も遠い昔のことで忘れてしまった。
だから屋敷の外のことも、自分の種族が何なのかすら分かっていない。
レイリアとオリアナはシンシアが幼い頃に亡くなってしまった。シンシアは自分とニンゲンの刻む時が異なることにすら気づいていない。
むしろそれが普通なのだと思っている。
シンシアの一族は月の眷属の末裔であり、はるか昔からこの世界を見守ってきた。月の眷属の末裔の使命は、世界の全てを見届けること。この世界の始まりから終わりまで、長い時を見守ることである。
そのために月の一族の末裔は寿命が長く、ある程度の歳で外見の成長が止まる。人間の寿命と彼女の一族の寿命とでは天と地ほどの差があるのだ。
シンシアはレイリアもオリアナも自分と同じで長い時を生きた末に亡くなったと勘違いしているがそうではない。何故なら月の眷属の末裔は不老である。
シンシアがどれほど自分のことやこの世界について無知であるかは、この事から察せられるだろう。
「魔法でぱぱっと森を抜けてきたんだ。こんな森に人がいるなんて思ってなかったよ、あははっ」
「森を抜ける……?屋敷の外はそんな風になっているのね、初めて知ったわ。」
「ええっ!シア、もしかしてこの屋敷の外に出た事無いのかい?……ふっ、あははははっ!本当に君は面白いね。ふふふ」
「シアみたいに何も知らない子は初めて見たよ。ほんとに君って子は、あはは!」
「……だって、まず外に出るなんて思いつかなかったわ……。レイリアやオリアナがいた時だって出た事はなかったんだもの。そう言うものだと思ったの……!」
シンシアはそう答えながらも、瞳をキラキラと輝かせながら外の世界への興味を募らせていた。
「レイリア?オリアナ……?ここに他の人がいたの?」
誰も寄りつかないような森の屋敷、仄暗くどこか冷たく神聖な雰囲気すらあるここにはシンシア以外の人の気配は感じられない。
「レイリアとオリアナはいつも私の傍にいてくれたわ。……ずっと傍にいるって言ったのに。」
「傍にいる……か。シアはとても大切にされているんだね。少し安心したよ、君を大切にしてくれる人がいて。」
「大切……?レイリアも言ってたわ、ずっと大切に、愛してるって。貴方も同じことを言うのね。」
「あはは、うん。大切だね。シアとお話しするのは楽しいや。」
「楽しい……?」
「うん、楽しい。ねえ、これからもここに来ていいかい?シアともっとお話ししたいんだ。」
話している間、顔を綻ばせてずっとこちらの瞳を見つめてくるリオに、シンシアはどこか2人の姿を思い出してしまい、断ることができなかった。
目の前の美しい彼女の見た目は19歳程度。遠い昔のオリアナと同じかそれより少し年上くらいだ。
少しだけ、お話しするだけなら。本当に少しだけなら、居なくなっても苦しくならないかもしれない。それに今の生活にも飽きてきた。
彼女はもしかしたらいつの間にかここにこなくなるかもしれないし、あの2人の時みたいな気持ちを味わう事は無いかもしれない。
頭の中でそんな事をぐるぐる考えて、少し悩んだあと。
「……はぁ……。好きにして。」
分かりづらい肯定の言葉を口にした。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
誤字脱字、表現の間違いなどを見つけた場合はそっと教えていただけると幸いです。




