第五十八夜:再会
今日は可愛くて愉快なあの子が再登場です。
転移魔法を使わず、ソレイユ邸から徒歩で街へと向かう。
前にソレイユ邸から街に向かった時はソレイユ邸をゆっくり見る事ができなかったため、こうしてじっくりと歩いてフロントガーデンを見る事ができるのは嬉しい。
端正に切り揃えられた緑は何かしらの形に沿って形取られ、中央には噴水が鎮座している。
時折小さなバラがちらほらと見え、庭園に味を出している。
「よく揃えられてるわね」
リオと手を繋いで歩きながら、辺りを見渡す。
「ソレイユ邸の顔だから、いつも職人が腕によりをかけて整えてるよ。時々訪れる客人にも褒められるんだ。それ言ってくれて嬉しいよ」
ヒールで歩くシンシアの歩調に合わせてゆっくりと手を握り歩くリオが、同じように緑を見て微笑む。
「前に通った時はじっくり見られなかったから、こうして見られて嬉しいわ」
シンシアのいた屋敷にもフロントガーデンはあったが、ソレイユ邸のようにきっちりと植える場所を決めてあるのではなく、一面を緑が覆っていて、池や橋があり、雰囲気が異なる。
「ああ、ココとレイアに出会った日か。ふふっ、あの時は焦ったよ」
2人は街へと降りながら、以前この道を通った時とは違う穏やかな雰囲気で話す。
「そうなの?ココとレイアの家にお迎えにきてくれた時はそんな風に感じなかったけれど」
首を傾げてリオを見やる。
あの日のリオは真剣な顔でこちらを見てきて、誠実な態度で話していたから、焦りとは無縁のようだった。
「ふふっ、すぐに追いかけようとしたらライに止められたんだよ。少し1人にさせてあげなさいってね。本当は直ぐにでもそばに行って、シアに謝りたかったけれど、シアの気持ちが落ち着くまで待つ事にしたんだ」
リオは恥ずかしそうに目を伏せた。
「だから少ししてから会いにきたのね。ふふっ、もしリオが直ぐ会いにきていたら仲直りできなかったかもしれなかったわよ?」
あの日のことを思い出して笑が浮かぶ。
ココとレイアが親身になって相談に乗ってくれたから、リオのことが大切だと理解できたのだ。
もしも2人に出会わず、レイアにもう2度と会えなくなるかもしれないと言われなかったら、そのまま仲違いしていた可能性だってあった。
「ええ!それは嫌だな……そうならなくてよかったよ。止めてくれたライと、ココとレイアに感謝しないと」
リオは目を見開いて声をあげると、心底ホッとしたように肩を下ろしてみせた。
「ええ、本当に。ココとレイアに出会えて良かったと思ってるわ」
2人のおかげでリオの仲直りできて、自分の胸の痛みについて知る事ができた。
「ふふっ、2人はシアの良いお友達みたいだね。あ、今日はココとレイアとも街を歩かないかい?2人とシアが良ければだけど」
2人を思い出して笑みをこぼすシアを見て、リオは優しく微笑んでそう提案する。
「ココとレイアと?」
思いがけない提案に、きょとりと目を開いてリオを見つめる。
「うん、2人はシアのお友達だろう?お友達と一緒に街を見たらきっと良い思い出になるよ。そしたら、転移魔法の精度も上がるし、シアにとっても嬉しいだろう?」
いままで、そんなこと考えたことも無かったけれど、そうか。
友達と街を見て回るのも出来るんだ。
ストンと胸に言葉が落ちてくる。
「うん、嬉しい!」
ふふっと上機嫌な声が聞こえて、それが自分のものだと気づく。
「ありがとう、リオ。楽しみ!」
リオはにこにこと微笑むと、シンシアの髪を優しく撫でた。
「あ!シンディとリオだー!」
リオに頭を撫でられていると、遠くから聞き覚えのある声が聞こえた。
声のした方へ目を向けると、クロエがとととっと小さな身体で元気よくこちらに駆けてきている。
「ココ!」
シンシアはリオと繋いでいる手を離して、クロエに歩み寄り、身を屈める。
「シンディー!会いにきてくれたんだね!ココ、待ってたんだよー!」
一生懸命に走ってこちらに向かってきたクロエは、身を屈めるシンシアに両手を伸ばし、ぽすりと抱きつく。
「ええ、会いにきたの。待っていてくれてありがとう、ココ」
自分の半分くらいの身長のクロエを抱き返し、シンシアはクロエの背中を撫でる。
クロエはにこにこと満面の笑みで、その無邪気な笑顔にシンシアも嬉しくなる。
「シンディも会いたいって思ってたの?!ココうれしい!……わぁ!シンディ、今日も可愛い!やっぱりシンディはお姫様なんだ!」
きらきらと瞳を輝かせ、子供らしくつぶらな瞳を目一杯広げてシンシアを見つめるクロエは、心から再会を喜んでいるとわかる。
「もちろん、会いたかったわ。わたしも嬉しい。ふふっ」
次から次へと会話が止まらないクロエに、笑みをこぼす。
「ふふふっ、ココは今日も元気だね」
いつの間にかリオが隣に並んでいて、クロエに合わせて身を屈んでいた。
「あ、リオ!今日はリオと一緒なんだね!2人が仲良しでよかった!」
シンシアに気を取られ、さっぱりリオの存在を忘れていたであろうクロエが、シンシアに抱きついたまま無邪気に微笑んだ。
「うん、わたしたちは仲良しだからね。そうだ、レイアはいるかい?」
リオはそっとクロエの頭を手を伸ばすと、優しく撫でた。
「ふふっ、よかったー!まーま?いるよ!こっちこっち!」
撫でられた頭をくすぐったそうに笑うと、クロエは2人の手を取り、ぐいぐいと2人を案内し始めた。
小さなクロエに手を引っ張られる2人は、お互いに目を合わせるとくすりと笑ってクロエに着いて行くことにした。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
誤字脱字、表現のミスがあったらそっと教えてくれると嬉しいです。




