第四十夜:……抱きしめてもいい?
仲直りできました^_^
「誰がきたのかなぁ……あ!もしかして王子様?!」
レイアが玄関まで確認しに行っている一方で、クロエは突然の訪問者について考えていた。
「だから、リオは王子様ではないのよ」
クロエは初めて会った時から、ずっと王子様の存在が頭から離れないようだ。
この子、私の話ちゃんと聞いてるのかしら。
「えー!なんでー!きれーなんでしょ?ココ、気になるー」
不満気に声を漏らして、シンシアの腕にぎゅっと抱きつくクロエ。
「だから、リオは……」
「女の子なのよ」と口にしかけた時、シンシアの声を掻き消すように快活な声が玄関の方から聞こえてきた。
「シンディちゃーん!あなたの王子様がお迎えに来たわよー!ココちゃん、感動の再会よ!!!ほら、私たちも行きましょう!」
「はーいまーま!今行くー!!!……シンディ!来たよ、王子様!!!ふふっ!行こっ!」
玄関の方にいるレイアに聞こえるように元気な声で返事をしたクロエは、小さな手でぐっとシンシアの手を握り込んだかと思うと、これから起こることが楽しみで仕方ないと言うように瞳を輝かせてシンシアの手を引く。
トトトっと小さな歩幅で一生懸命小走りして手を引くクロエに手を引かれ、そろそろと玄関まで歩く。
リオ、どんな顔をしているのかしら。
何から話せばいいのか、冷静に話せるか、頭の中に考えが浮かぶ。
「だいじょーぶ!シンディにはココがいるよ!」
前を見ていて、シンシアの顔なんて見えないはずなのに、クロエはまるで彼女の不安なんてお見通しだと言うように安心させる言葉を言った。
なんの確証もない「大丈夫」と言う言葉。
何も状況は変わっていないのに、本当に大丈夫だと思ってしまう何かがあった。
「……頑張るわ」
先ほどまでとは違って、迷いの瞳できちんと前を向いて玄関まで進んで行く。
目の前の茶色い木の扉の向こうにはリオがいるのだろう。
扉の前で待っていたのだろうレイアが、リオに聞こえないように屈み込み小声で話しかけてくる。
「頑張るのよ!シンディちゃん!応援してるわ!!!」
レイアと目を合わせて、決意を込めた瞳で頷いたシンシアは浅く深呼吸をした。
落ち着くの、大丈夫。
何も怖いことなんてない、私たちはすれ違ってるだけ。
クロエもレイアもいる。
リオにきちんと気持ちを伝えなきゃ。
準備が整った様子を見たレイアは、扉を開く。
木の軋む音が聞こえて、扉の向こうにはいつもの笑顔より控えめに微笑むリオがいた。
リオは目と目があったかと思うと、背筋を伸ばして真剣な表情になって、すっと息を吸い込んでから話した。
「シア……さっきはごめん、君の気持ちを考えられてなかった。いきなりあんなこと言われたら驚いてしまうよね、本当はシアともっと一緒にいたくて、傍にいて欲しかったんだ。なのに変に恥ずかしがってそれらしい理由を言ってしまって、ごめん。……君の屋敷に至らない点があるなんて思ってない、わたしが傍にいてほしかっただけなんだ。……本当に、ごめん」
目を見て真剣な顔で話す様子に嘘などは感じられない。
「私、勝手に決められたみたいで嫌だったのよ。……それに、ソレイユ邸に私の居場所は無いような気がして、苦しかったの」
ゆっくりとレイアとクロエに話した気持ちをリオにも話して行く。
「うん、そうだよね。傷つけてしまってごめん。……そんな風に思ってたなんて思わなかったんだ、ごめん。シアのこと、泣かせたくなかったのに」
瞳が潤んでいき、だんだんと眉を下げてしまうシンシアに、リオはひどく苦しそうな顔をした。
「言われたことは悲しかったけれど、あなたがそんな風に思ってないのは分かってるわ」
「シア……?」
今度はぽたぽたと大粒の雫が降ってくる。
「……私、リオと会えなくなるのはやだ。リオ……」
瞳からは涙が流れているのに、静かに泣いたシンシアははっきりと言葉を放った。
「シア……ごめん。もういきなりあんなこと言ったりしないし、シアの気持ちちゃんと考えるから。……許してほしい」
「……うん、今日だけよ」
ぐずぐずと泣きながらなんとか聞きとれる返事を返す。
「……抱きしめてもいい?」
泣いているシンシアに、両手を広げて苦しそうな顔をしたリオが問うた。
今度は返事はできなくて、頷くしかできなかった。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
誤字脱字、表現のミスなどがあったらそっと教えてもらえると嬉しいです。




